自分で家を建てる という選択肢を除くと、だいたい次のような選択肢があります。
大手メーカーと建てる
メリット
- 「名の通った大手メーカーだから」という安心
- あんまり手間を掛けずに家が建てられる
- 営業マンの礼儀作法がきっちりしてる
- 早い(デメリットにもなり得る?)
デメリット
- 高い
- 意外に自由度が少ない
- 施工するのは大手じゃなく下請けだよ
メリット1.僕は「大手で名前が通ってるから安心」 とは全く思ってないですが、そう思う人は多いみたいです。会社が設計部、工務部、営業部等分業制になっており、それぞれ専門家がやりますから、更新の激しい建築基準等もちゃんとアップデートされ守られているだろう とは思いますが。 実施工は下請けです・・
メリット2.最大のメリットだと思います。任せておけば、必要な時期に営業さんが来てくれ、いくつかの選択肢で方向を示せば、最低限の手間で家が建っちゃいます。
メリット3.住宅展示場を見に行けば、丁寧なおもてなしをしてもらえます。「お客様は神様です」教育がしっかりされていますので、嫌な思いをすることはないでしょう。 「チヤホヤ」されるのはそれなりに気分のいいことですし、「金払う俺に業者がペコペコするのが当然」という人もいますしね・・・
メリット4.工事に着工すると、完成まですごく早いです。多くの部材は工場で造ってくるようです。
一方で、とあるメーカーは「厳しい工期設定され、絶対厳守」 といううわさも聞きました。日当制だと発注元はここシビアになりますわなあ。きちんと設定してあればよいのですが、きちんとしてないと・・・ それに基本的に施工を急がせて品質に良いことは何一つないですからね。施主はそのあたりわからないですし、下請けに口出しもできないです。
デメリット1. メリット3.の裏返しです。あなたの住宅契約費用には、間接的に住宅展示場の建設費・維持費、広告費、社員の教育費等が載ってます。
デメリット2.完全な自由設計なら別ですが、たいていは基本設計(パターン)をもとに施主の希望を受け少し修正して建築することが多いです。メーカーだけに、「標準部材」を大量生産してるので、その範囲でできる設計が望ましいから。(コスト縮減につながり、悪い面ばかりじゃない)
デメリット3.実際の工事は、メーカーと契約した下請の工務店が行います。 下請けがあたりならいいんですが、施主に選択権はありません。もし外れてると、メーカーと下請けとどっちが責任取るんだよ・・・と内ゲバ状態になっちゃう危険性あり。
地域の工務店と建てる
メリット
- 安いよ
- 地域を良く知ってる。ある意味安心かも
- 伝言ゲームが少ない
- 間取りの自由度は高い
デメリット
- どうやって見つける?
- 普通、「お客様は神様」というふりはしてくれないよ
- あんまり提案能力や知識はないかも(相談相手・・・)
- 倒産しちゃったら?
- 工期は長いよ
メリット1.展示用の家は持ってないし、営業は社長がやってたり、そもそもいない(大工さんだけ)ということも。間接費用が小さいので。払った分だけあなたの家にダイレクト還元されます。
メリット2.日本は狭いとはいえ、それでも微地形や気候が違い、それぞれの地域によって住宅も特徴があります。地元であればその地域の住宅建築に精通してます。また、その地域で仕事を受けていますので、もし手を抜いて悪い口コミが広がると仕事できなくなります(特に田舎は口コミ社会ですし)。僕なんかは「大手だから安心」思考より、こちらの方が安心できるメカニズムだと思います。
メリット3. 「伝言ゲーム」って何人かの口を経ると、当初の指示が誤って伝わる現象です。仕事でもそういう経験はありますよね。それが住宅建設など、口頭連絡を三次元空間に拡張するところでは・・・。
施主「こうしたい」→営業さん→工務部(監督)→下請大工さん できて施主「うが~」
頻繁にあり得る話だと思います。僕は施工もいちいち口出しするつもりだったので(ウルサイ客)、社長=営業=筆頭大工の最小単元の会社にお願いしました。現場その場で話ができるのは、伝言ゲームを最小にでき、良かったです。(隣の家に住んでたってのも大きいけど)
メリット4.まあたいていは在来工法の家でしょう。在来の家にも定石がありますが、自由度は比較的高いと思います。あ、でも木造専門の工務店で軽量鉄骨造とかは無理筋だよ・・・
デメリット1.最大の関門。うちは新聞取ってて、週末は住宅関係のチラシの数がすごいんですが、その中から自分と感性が近い住宅を造っている会社の家を見に行って、それで決めました。 うーん、新聞取ってないとどうするのかなあ、ネットの口コミかなぁ・・・。まあいずれにせよ見に行くのが一番良いです。
デメリット2.大工さんとか職人さんは、ぶっきらぼうな人が多いです。無口な人も多いですし。「お客はパートナー」とは思っていても「お客様は神様です」とは思ってないだろうし。うちは自分が「モトさん!」父は「大将!」って呼ばれてましたが、そう言われるとあんまり気分の良くない人もいるんじゃないかなあ・・・。僕はそういうの全く気にならないのですが、より丁寧な接客が好きな方は、メーカーのほうがいいと思います。
デメリット3. 感性が近い家を建てるところを選べばあんまり問題はないと思うけど、設計力とか提案力はあんまり強くないす。 迷ったら相談もできるけど、メーカーの分業制と違い、大工さん一人の知識(しかも大工知識もカバーしなきゃいけない)ので限りがあるますよ。まあ迷ったらその都度施主が勉強すりゃあ、維持も含めてトータルでそれが一番なんだけど、時間は取られるよね。
特に杭とか構造補強は大工さんの弱いところ(建築士だって微妙かも)。僕は土木が専門だったので住宅の基礎に関する専門書を買ってきて勉強したけど、ここはセカンドオピニオンが欲しかった。
デメリット4.うーん、零細企業だと心配ですよねえ。今の住宅は10年間の瑕疵担保保険が義務ですし・・・ それでも社長が若くて、他に何件受注しているかを確認しました。
デメリット5.在来工法の家は、現地での施工部分も多いです。さらによその家も受注してると人手が足りず、施工は長くかかりましたよ・・・まあ間違いなく丁寧に施工してありましたが。
建築家+工務店で建てる
僕は自分が建築家を演じてるつもりだったので考慮しませんでしたが、セカンドオピニオンが欲しい専門家の知恵を借りたい って思ったら、これは良い手かも と思いました。普通は平面で書かれた設計図を見て、それが空間としてどうなるか なんて想像できないですしね。まあ当然設計費が別途かかるわけですけど。
ちなみにメーカーや工務店ではお抱えもしくは提携している設計士が、役所に提出する(建築確認)最小限の図面を書いてくれます。 僕の家だと10枚くらい。 きちんと建築家を頼むと、これが60〜90枚くらいになるそうです。
つまり施工者と別に建築家を頼むと、設計の段階で細部まで詰めておくわけ。工務店の場合だと「その段階になったら決める」ことも多いです(メーカーは中間のどこか)。だから後者だと、最初に決めた請負額が、最終的に増額することが多いんですよ。・・・いい家にしたいから、どうせ2000万円出すなら、10万増額ばかしでよい部材が入れば、それ使いたいですよね・・・以下繰り返し・・・
建築家をどう探すのか は経験がないので分かりません。それでも「感性の合う建築家」を見つけることが大事ではないかと。「ビフォーアフター」や「完成ドリームハウス」を定期的にみてますと「住みそうな家だな」とか「住みにくそうな家だな」って好みがやっぱりありますもん。 特にビフォーアフターは何度か登場する匠もいたので、「自分が頼むならこの匠(建築家)に頼みたい」って出てきますね。そういう感じで探せばいいんじゃないかと。
更に詳しく、だれと家を建てるか等、「ゼロからの施主学」を勉強したい場合は、渡辺武信「住まいのつくり方」―建築家といかに出会い、いかに建てるか 中公新書 が参考になると思います。この本も絶版になってしまったのか・・・

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。