南海トラフ巨大地震の被害推定 学会提言・・・もう一歩がんばろう!

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「国難」被害1410兆円 南海トラフ巨大地震の推計 土木学会が報告書

西日本を中心に大きな被害が想定されている南海トラフ巨大地震が起きた場合、道路など公共インフラの損害で長期的に1410兆円の被害が生じるとの推計を7日、土木学会が公表した。学会は「国難」レベルの災害になるとして、対策の強化や都市機能の分散を進めるべきだとしている。

東日本大震災と、それに続く復興の7年間を見続けてきた我々にも、もし南海トラフで巨大地震が起こると甚大な被害が生じるんだろうな と言うことは分かっています。が、それが定量的な被害推計って形で出るのは、大事なことだと思います。

この新聞記事は「土木学会の提言では15年以内に有効な対策を進めれば、南海トラフ巨大地震では509兆円の損害を防ぐことができる」と結ばれています。

新聞を読んだ読者は「じゃあ早くその対策をやれよ!」と反応すると思うんですが、まずはその内容をよく読んでみましょう。 なかなか突っ込みどころ満載なんで。

(詳細は新聞記事には書かれていません。土木学会の概要報告書を読みましょう)

代表例として、南海トラフ地震について、僕が主旨だと思ったところを抜粋しました。引用はすべて上記の概要報告書です。

対策そしてその効果の推定も堤防、道路等公的インフラストラクチャーの整備、増強に限定している。

・様々な公共インフラ対策で、南海トラフ地震の経済被害(間接被害)を3分の1から6割程度、軽減できることが示された。

・巨大災害発生時までに各対策が「間に合う」ためにも、それぞれの災害発生確率を踏まえて、「15 年程度で完了」することが必要であることが示された。(南海トラフ地震 の経済被害は1,240兆円 。公共インフラ対策として道路,港湾/漁港,海岸堤防,建築物耐震強化に38兆円以上の対策を行うと、南海トラフ地震の経済被害を509兆円減らすことができると推定。)

検討したのが「土木学会」だから当然なんだけど、そしてインフラの耐震の重要性は分かるけど、

「減災対策として検討したのは堤防、道路等公的インフラストラクチャーの整備、増強に限定。結論としてそこに15年で38兆円の資金投入して対策すべき」 って、有効な提言なんだろうか? これだけでは、我田引水(土木業界に金をよこせ!) と言ってるようにしか聞こえないんで、残念!と思うわけです・・・。

15年で38兆円の投入が必要とするなら、年間2.5兆円の資金投入が必要になる。じゃあまず、その投入余力はどこから持って来よう?

問題)下の予算は2018年度の日本国の当初予算です。2.5兆円/年の投資は、国だけでなく地方自治体の投資も含むので、国の負担を1兆円/年とします。下の当初予算からこの1兆円をどこから捻出するか答えなさい。また、下の参考資料も活用しなさい。

左:収入 右:支出   出典:財務省パンフ
我が国の人口の長期的推移 国土交通省資料

収入の部:人口激減、高齢化が進む中で、税収が増えるのは期待できん。消費税をあげれば増えるけど、それは基本社会保障費に回るんだよね。公債金って実質借金だし・・・

支出の部:少子高齢化が進む中で、社会保障費や文教費は削れんだろ、地方切り捨てもできんし、防衛費も増える一方だしな。その他の内訳はよく分からんが、これから国債費も増えるだろうし、なかなか1兆円なんて・・・。

難問ですね!あのですね、予算編成時に「首相枠」ってのがあるんですね。時の政権が「政治主導」や「首相の意向」として費用を分配する枠です。(正確には予算の特別枠)それが、頑張ってたかだか1兆円なんです。それを巡って各省庁はそれに向けたいろんな政策を競い、いろんな省庁に配分されるんです。だから「南海トラフ巨大地震対策費」として特定の目的に1兆円を生み出すって、もう日本の予算枠ではたぶん無理なんだと思います。それくらい、予算編成の自由度って低いってことだと思う。

まあこれは妄想ですから、なんとか1兆円「南海トラフ巨大地震対策費」ができて、各地方自治体にも同様に頑張ってもらい、2.5兆円/年の「南海トラフ巨大地震対策費」ができたとします。で、それを全額「公的インフラストラクチャーの整備、増強」に限定させる必要性はあるのかな?

土木学会による提言の一番の問題点はここだと思うんです。

インフラの整備、増強以外にも有効な手段はあるんじゃないでしょうか?例えば・・・危険個所に立つ老人福祉施設を安全な場所に移転させる。拠点病院の機能をより災害に適したものに改善する。インフラ整備ではなく、危険個所に暮らす人々に直接資金を渡して、より安全な場所の空き家を利用し住んでもらう※とか。

まあ、これらの例がどれほど有効なのか知りませんけど、ともかく土木学会は、インフラの整備・増強案と、それ以外の代替案との比較検討をしていないので、インフラの整備、増強を優先すべき必然性が分からないんですね。

ところで、土木には「土木計画学」という分野があります。土木計画学とは「空間、社会基盤施設およびそれらにかかわる土木事業において発生する問題内容を発見整理し、これに関係する社会基盤施設などを対象に、事業の主体者(意思決定者)が計画の目的を検討し、目的達成に必要な多くの手段(代替案)の中から、合理的かつシステマティックな選択行為を遂行する一連の行為と、その支援手続きおよびそれらにより得られる成案である(wiki)}と定義されています。

目的達成に必要な多くの手段(代替案)の中から、合理的かつシステマティックな選択行為を遂行する土木計画委員会?の知見を使わずして、世間にインフラ整備の必要性を訴えるのって、無理じゃね?

ただ土木学会はオオカミ少年だな と誤解され続けるだけじゃないかな?それは学会も、世間の人もみんな不幸だと思うんです。

まあ土木の分野外との比較は「土木学会の仕事じゃない」と言うなら百歩譲るとしても (僕は、それだと「目標達成」できるとは思えないけどね)

「国難」とまで言う「南海トラフ巨大地震対策」は、例えば「整備新幹線の整備」や「ダムや高速道路の新設」に優先する喫緊の課題だから、それらを一時中止して地震対策に舵を切るべき と言う比較検討と提言は、学会内部でも十分できたんじゃないかな。そのうえで、「学会はここまで決意しましたから、他からの資金融通をお願いします」と来るべきでは。

参考:古い資料だけど、建設業ハンドブック2015によると、2013年度の建設投資52兆円のうち、新設工事が37兆円。維持工事が15兆円。 これは民間投資を含んでいるけど、政府(国+地方自治体)投資についても、ほぼこの比率だと考えれば、新設工事をやめて「維持工事」と「南海トラフ巨大地震対策」に特化すれば、かなりの対策は進むんじゃないだろうか・・・

※そもそも、これから急速に人口が減少する社会で、総合的に見てインフラの整備、増強って持続可能なんかね? もちろん、人口密集地で必要な箇所はあるとしても。

 

 

 

 

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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