(マニアックな話です。興味のある方だけご覧ください)
数日前のニュース記事でこんなのありました。
【12月17日 AFP】(更新)中国で2隻目となる空母「山東(Shandong)」が17日、就役した。台湾や米国、さらに領有権を争う南シナ海(South China Sea)周辺諸国との緊張関係を抱える中、同国軍にとっては大きな戦力増強となる。
中国で2隻目の空母「山東」が就役 国産としては初
この写真見て思ったこと。
そういや、アメリカを除く各国の航空母艦は、飛行機の発艦方式として、前部飛行甲板に傾斜をつけるやり方だな。(正確には「スキージャンプ」方式) どうして アメリカの空母みたいなカタパルト方式じゃないんだろ?
スキージャンプ方式の離陸とは、(上の写真を見て想像してください)飛行機が自分の搭載エンジンを使って空母の飛行甲板を滑走、先端のジャンプ台の坂を駆け上がり、最後に離艦します。水平な飛行甲板を滑走するだけでは、離陸に必要な揚力を得ることができないのです。
一方、カタパルト式(射出機を使った)の離陸の場合、 飛行機のエンジンも使いますけど、飛行機が離艦できる速度まで空母の甲板に設置された射出機が押し出してくれるのです。 人間が紙飛行機を飛ばすイメージです(滑走しないで済む)。 実際には、下の写真を見てもらうと分かりますが、滑走はするけど距離は極めて短くてすみます。こんな短距離で飛べるんだね。
仮に両方式で同じ飛行機を飛ばすことを考えると、常識的に考えてカタパルト方式の方が戦闘には有利ですね。
スキージャンプ台方式だと飛行機単独のエンジンを使って、坂を上って加速する必要があり、飛行機を軽くしないといけません。 →逆に言えば、カタパルト方式の飛行機は、より燃料やミサイルを多く積むことができ、航続距離や攻撃力が増すわけ。
また滑走距離が短いということは、飛行甲板を有効に使うことができる と言うことを意味します。その分たくさんの飛行機を積めたり、離陸と着陸を同時並行でやれたりします。→作戦の幅が広がる。
じゃあ、すべての空母が、カタパルトを装備すればいいじゃん。でも実際にはカタパルトを装備する空母は限られます。 なんでだろ?
答えは・・・wikiに書いてありました。
現代の航空母艦では、第二次世界大戦後にイギリス海軍で考案されアメリカ海軍において実用化された蒸気カタパルトが主流である。・・・蒸気カタパルトは、油圧式より高速で作動し、はるかに重い航空機も運用でき、強力な加速が一度に加わる火薬式よりも航空機への負担が少ないという利点があるが、配管が複雑になるという欠点がある。推進用機関のボイラーが蒸気式カタパルトの装備を前提としていなかったエセックス級では、改装で蒸気式カタパルトを装備した際にカタパルトを連続使用すると蒸気の不足により速力が低下した。現代の原子力空母は十分な蒸気発生量があるため、カタパルト使用による速力低下は一切無い。
wiki カタパルト
要約すると
- 構造が複雑(すなわち大容量で重く、整備が大変)
- 蒸気を大量に使うので、十分な熱源が必要
で結局、アメリカの「巨大原子力空母」クラスでないと載せるのは現実的ではない ってことかと思います。※現在アメリカ以外にカタパルトを装備した航空母艦は、フランスの原子力空母1隻のみ。
だから今、各国では次世代カタパルトである「電磁式カタパルト」の開発に躍起になっているそうです。これは大電力が必要だけど、蒸気カタパルトよりは簡単な構造なんだってさ。アメリカでは最新鋭空母に搭載されていますが、トランプ君が「以降の空母に採用しない」って言ったとか。まだ開発途上ってことね。
そういや、日本のヘリ空母「いずも」にF35Bを搭載できるよう改造するそうだけど、スキージャンプ台を付けるのかなあ。ちょっとカッコ悪いから、平らな甲板のままの方がいいけどな(笑)。
てか、空母と艦載機を装備するより、長距離ミサイルを大量に(数うちゃ当たる方式で)開発したほうが安上がりじゃないの? →あ、それが北朝鮮の戦略か。
1月28日追記 すごくよくまとまった記事がありましたので、参考まで。
30tの艦載機が2秒で300km/h!空母の蒸気カタパルト脅威の加速どう実現?米仏のみ運用
空母から艦載機を飛ばす際に使用される「カタパルト」は広く知られるでしょうが、現行の「蒸気式」を開発、かつ運用している国となると、実はアメリカだけに限られます。旧日本海軍も取り組んだ各種カタパルトの歴史をたどります。
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