最近のお米は、どれを食べてもそこそこおいしくて、食べるお米を買う「消費者」の立場からすると、銘柄はあんまり気にしないんじゃないでしょうか? 少なくとも僕はそうでした。
が、ここ数年、お米を作る「生産者」の端くれの立場に立ってみて、少し違う風に見えてきました。 まあ比較できたのは「コシヒカリ」と「あいちのかおり」2銘柄だけですが。
JAの水稲標準暦によると、この2銘柄の田植えと稲刈りの時期は次のようになります。
- コシヒカリ 田植え5月01日 稲刈り8月27日
- あいちのかおり 田植え5月25日 稲刈り9月30日
「標準」でも1か月くらい作業の時期がずれるわけです。この時期のずれが何を意味するのか。いくつか例を挙げてみましょう。
コシヒカリ
- 田植えにゴールデンウイークの休みが利用できる
- 稲刈りは、8月末から9月初旬の酷暑に行うことになる
- 一方、台風が多数上陸するであろう時期の前に、稲刈りを済ませられる。
- ゆえに?成長したコシヒカリの稲穂は、背が高い(=強風に会うと倒れやすい)
あいちのかおり
- 稲刈りは、酷暑を避け9月末から10月初めに行えばよい
- 一方で、台風時期を乗り越える必要があり、比較的降雨の多い時期に天気予報と相談のうえ、稲刈りを実施する必要がある。(実施日が直前まで予定しずらい)
- ゆえに?コシヒカリの稲穂より背が低い
てな感じ。 例えば兼業農家として米を作るなら、ゴールデンウィークの休みに田植えができる銘柄は重宝しますね。酷暑の時期の稲刈りも機械化が進んでいれば、特に冷房完備の大型コンバインを使って行うなら、それほど支障にはなりません。まあ大型コンバインは高価なので、あたりの水田をまとめて管理する「オペレータさん」規模でないと保有できないでしょうけど。
逆に手刈りで稲刈りをするなら、「酷暑の時期の稲刈り」は本当に酷です。てか最近の異常気象下では、冗談なしに熱中症のリスク大です。日中はほとんど風が吹かないうえに、成長した稲穂に遮られ、全く風通しの無い場所での作業になりますんで。
→テレビでどこかの千枚田で、オーナー(一般人)の方が手刈りをしているシーンを見たのですが、普段農作業してない人が、こんな時期にそんな危険なことして大丈夫? って思いました。
そういう意味では、あいちのかおり みたいな晩生品種を選んで手刈りの稲刈り時期は遅らす と言うのは一つの選択肢です。まあ天気が安定しない時期に入るので、「いつ稲刈りを実施するか」は、良く変わる天気予報とにらめっこして悩むことにはなりますけど。
てなことで、生産者は地域の気象特性と作業性、そのうえで消費者に受ける米の味などを総合的に判断し、どの銘柄のコメを作るかを判断をする必要があること。また全国各地に様々な銘柄のコメの品種がある理由ってのがよくわかりました(地域によって気象特性が異なるから)。 消費者の米の好みってのも、時代によって変わってくるものでしょうし・・・