GoToトラブル・・計画経済的政策で、旅行制御を目指すから・・・ 

Gotoトラベルの運営の失敗は、市場経済の国で、計画経済的な政策を無理やり実行してしまったことに尽きるんじゃないですか?

まあ、日本は表向き市場経済と言いつつ、実態かなり計画経済の運用をしているとは思うけれど。ただそれで押し通すなら、人民に行き先を指定した割引制度にしないと無理だったんじゃない?

GoTo運営に中小から不満 地域ごとの予算枠撤回
 観光振興策「Go To トラベル」をめぐり、国から事業を委託された団体の事務局が出した通知に中小の旅行業者が反発している。全国13地域に分けて見積もった旅行の「予算枠」を守るよう求めたものだが、枠があることを知らなかった業者も多いうえ、「実際にどこに旅行するかは、お客が選ぶのに」との不満が噴出。通知の事実上の撤回に追い込まれた。

朝日新聞デジタル

旅行者はこんな枠があるなんて知らないから、自分の行きたい旅行先に行きますわなあ。旅行先には当然人気不人気がありますし、「補助があるなら旅行へ行こう!」って人もいるから、旅行母体が増えるしあらかじめ正確に見積もる、なんてそもそも無理。 

だから、何の誘導もなしに(※)人々を自由に旅行に行かせておいて、見積もった地域予算枠を守れ って、少なくとも市場経済の官僚(とその手下)が言うこと自体狂っとる。 

※市場主義なら例えば、「リアルタイムで各地域の人気不人気に応じ、割引率を変更(人気の高い旅行地の場合は割引率を下げ、人気のない旅行地は適度に割引率を上げる)し、人々がそれを見ながら旅行先を選べる」ようにすれば、地域別旅行需要を変化させ、地域予算枠を守ることも可能でしょう。しかし、IT後進国である日本で、こんなシステムの開発と運用は不可能(笑)。

計画経済の親玉(倒産済)旧ソ連のようなシステムを使えば理論的には可能かな。ズバリ、行き先を先に申告あるいは指定して割引をしてあげるシステム。ただ、これうまく行くかどうか、先に人民中国に相談してから政策立案すればよかったね。多分「そんな制御無理!」と反対されて実現できなかっただろうから(笑)。

 ソ連のすべての労働者は毎年28日間の休暇を取っており、誰もが海に行きたいと思っていた。ところが、ソ連のリゾート地やサナトリウムが1年間に受け入れられる数は、約85万人にすぎなかった。だが、ソ連の人口は1億2000万人以上だったから、南方の日差しを満喫できたのは10%以下ということになる。
 休暇バウチャーは、労働組合事務所を通じて配られた。自腹を切って家族連れで海に行くと、2〜3ヶ月分の給料がかかった。これはちょっと高すぎる…。(休暇パウチャーを使えば安いけどそれを使って:モト補足)良いリゾート施設に行くには、2〜3年も待たなければならないことがあった・・・ 国はバウチャーの費用の70%を補填した。安価な郊外のサナトリウムでの休暇を申し込むこともできたが、その条件は平均的なものだった。

ソ連国民が夢見たモノ:アパート、車、海外旅行、そして単なる日用品はいかに獲得されたか

問題は、これだとお目当ての旅行先にいつ行けるか分からないから、旅行に行く気が失せること。いや、近くの温泉なら行けるだろうけど、テンションとともに消費意欲も下がるよねえ。今回の政策は消費喚起が目的なんだから・・・

てか、観光庁は我々に「旅行してお金を使ってください」と言っておきながら、消費する個々の旅行者(つまり消費者)の目線に全く立っておらず、全国の津々浦々のホテル・観光業者(生産者)だけを見て制度設計したことがありありで興ざめ。

キツイ言い方だけど、これまで海外からのインバウンド旅行者を入れてようやく保ってきた旅行者数を、国内需要だけで賄おうって言うんだから、予算配分は「公平」を旨とするんじゃなくて、「競争」的に配分させるのが筋じゃないの? 

それでも公平を重視するなら、このキャンペーンのお金を全国に平等に配布してあげたらいいやん。  (これだと消費者支払い分は観光に落ちませんけど、キャンペーン終わったら消費者は旅行を手控え、ますます人気の観光地に集中するだろうから、損得はどっちもどっちかと)

なお、最初に紹介した記事は次のように続きます。

問題となったのは、事務局が9月下旬に出した通知。個別の旅行業者に対して「東北」や「九州」といった地域ごとに認めた予算枠を守るよう求めた。 この予算枠は各業者が7月以降に出した申請に基づいて事務局が事業者ごとに割り振った。ただ、多くの業者は前年の実績などに基づいて申請しただけで「(地域の内訳は)総額を決めるためだけの数字で、予算の枠だと思っていなかった業者が多かった」(業界団体の地方支部幹部)という。

前掲

「地域別予算枠は、各業者から申請に基づいて事務局が事業者ごとに割り振った」そうです。この事務局って、「Go toトラベル事務局」だと思うけど・・・

 GoToトラベル事務局を構成するのは、全国旅行業協会(ANTA)などを除けば、業界最大手のJTBを筆頭に、近畿日本ツーリストを傘下に置くKNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズという大手旅行代理店4社。この4社から各都道府県のGoToトラベル事務局に社員が出向する形を取っている。

内部資料入手「GoToトラベル事務局」大手出向社員に日当4万円

ここで事務局を構成するとして名前の挙がった4社は、じゃらん、楽天トラベルやヤフートラベルが上限引き下げや回数制限を打ち出した際に「条件改悪無し」だったんですよね〜。他にHISとかExpeidiaとかも条件改悪してないので、疑って申し訳ないんですけど、素直に「各社からの申請に基づいて配分」してないんじゃね?とも感じちゃうな。あるいは想定以上にネットにお客様が流れ大手旅行会社は使ってもらえなかった(人気がなかった)ってことだろう(笑)。ま、コロナ化だし想定できなかったとは思えないけど。・・・ま、この辺は「大人の事情」すかね。

 Go To トラベルを巡っては、東京発着旅行が追加された10月以降に予約が急増、大手各社は予算枠の上限に迫り、じゃらん、ヤフートラベルは割引の上限額を3500円に引き下げた。航空券などがセットになったパック旅行の上限は引き続き1万4000円。楽天トラベルは上限はないが、会員1人につき1回の利用に限定。dトラベルは割引商品販売を当面中止した。・・・また、JTB、日本旅行など条件を変えていない会社もある他、観光庁は、大手集中を避けるため中小事業者を重視する方向だ。

「Go Toトラベル」で割引上限引き下げ、利用回数制限相次ぐ 予算枠追加検討も

ツッコミどころ満載な記事。「大手各社は予算枠の上限に迫り」は誤植で、「大手ネット旅行サイト各社は予算枠の上限に迫り」が正解だろ。

「観光庁は、大手集中を避けるため中小事業者を重視する方向だ。」・・いや、観光庁は大事にする相手が違うだろ!

中小事業者を重視するんじゃなくて、実際に旅行に行く消費者を重視してほしいっす。んで、消費者が支持している事業者は、今回割引上限を引き下げたり、利用回数制限を課した会社だよ。大手でも中小でもない。「大手ネット旅行サイト」!そこに重点的に割り振ってくれ! まあ実務は事務局丸投げでしょうし、この事務局構成だと無理だろう。

んでも・・・ゆくゆくは、それがアフターコロナあるいはウイズコロナ社会でのインバウンドを含めた旅行消費の拡大に繋がると思うんだよね。視点を事業者から消費者に移さない業界や喚起策に未来はないと思うよ。

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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