ことわざの「後は野となれ山となれ」のように、森林は伐採しても、自然に山(森)へと戻るのか――。そんな研究を森林総合研究所(茨城県つくば市)が約40年間にわたって続け、このほど調査結果を公表した。
一般的に天然林は伐採しても自然に再生すると考えられてきたが、どの程度の時間をかけてどのように再生するかは科学的に検証されていなかったという。そこで森林総研は新潟県湯沢町の国有林内にある「苗場山ブナ天然更新試験地」で、67年から2008年までの41年間、再生のメカニズムを調査した。
77年まではササを減らすための刈り取りや除草剤散布を行い、78年にブナをすべて伐採して、その後芽生えたブナがどう成長するかを分析した。結果、ササの高さはいったん低下したが、ブナ伐採後は以前より高い約2メートルに。一方、ブナはササを超えられず、1メートル以下にとどまるか途中で消えてしまった。30年たった08年でも再生の兆しはみられず、最近の変化も確認できないという。
毎日新聞
周りの山を見ていると、「やっぱりなあ」と思うような結果ではあります。 このあたりではササ(笹)ではなく竹ですけど。
山の手入れをしないと、竹がはびこります。短期間で急速に高さを伸ばす竹は、林の最上部に葉を広げ、成長の遅い木々は竹の下で日が当たらず枯れていくというプロセスが、全国で絶賛進行中。ササは竹ほど高くはならないけど、木の更新が不可能になるという点も考慮にいれれば、樹林がササ原やタケ林に移行していくという意味で同様。
昔はタケノコを掘ったり、竹細工に使ったり、それなりに竹の需要もあったでしょう。さらに。当時は薪や木材として山木は非常に価値がありましたから、その育成を妨げる竹や笹は、山仕事での駆除対象だったでしょう。
それが、安価なプラスチック製品が出回り、山木の需要もないため、山仕事がなくなって現在に至っています。山が笹や竹で覆われていくさまは、風の谷のナウシカに出てくる「腐海」のようでもあります。その進行を止めるには、タケはササより更に厄介です。
モウソウチクは地下茎による栄養繁殖で拡大するため,
モウソウチク林の皆伐後における再生竹の持続的な刈り取りが
効果的な拡大防止法としては,地上部を全て伐採し,地
下茎を掘り起こして栄養供給を完全に絶つこととされる
しかしながら,広範囲にわたる急傾斜な竹林の伐採で
は,地下茎を掘り起こす作業は費用や労力の上で極めて
大変なことから,地上部の伐採のみで終始することがほ
とんどである.一方,林冠を欝閉していたモウソウチク
が皆伐により無くなることで,裸地に近い状態となり,
すでに地下茎を張り巡らせていたモウソウチクの再生が
活発に起き,竹林伐採後の林種転換として目標とされて
いる広葉樹林に自然に到達することは考えにくいという
広葉樹林化に及ぼす影響
森林総研の担当官は「一度ササの茂る『野』になってしまうと、自然にブナの『山』へと戻るのは難しいことが分かった。近年はスギの伐採後、自然に広葉樹が芽生えて育つことが期待されているが、今回のようにブナの種子が豊富に落ちてくる環境でもうまく成長できなかったので、かなり厳しい」と分析されています。
竹の山や笹の山を放っておいても広葉樹の森に戻らない。もし戻そうとするなら、相当の手間と時間と金が必要になりますね。
オババ「腐海を止めるためには、竹の地下茎も根こそぎ取らねばならぬ」
ナウシカ「そんなの無理よ。だって人手も予算もないのだもの。第一、山仕事ができるオジジだってもういないわ」
ユパ「さよう。もとの自然の状態に戻す と言えば美しいが、実はもはや現代人が腐海の増殖を止めることは非現実的なのじゃ。部分例外はあれど大半は「持続不可能」という意味でな。もはや我々は好むと好まざるとにかかわらず、外来種を含む新しい自然体系を、受け入れ共生する道しかないのだ」
・・・とか思いました。