「産地偽装」起こっても仕方ないのかも・・・

先日、夕方の報道番組『イット』で、熊本産のアサリがまさかの97%外国産!というショッキングなニュースを取り上げていました。いわゆる「産地偽装」という事件です。

食品表示法では「水産物を2か所以上で育てた場合、最もその期間が長い場所を原産地として表示する」と定められているそうです。つまり、中国で「1年間育てたアサリ」を輸入した場合、熊本で「1年より長く」育てれば、「これは熊本産のアサリですよ」と販売することが可能なのです。
熊本県側は今回の偽装の件について、『原産地で育った期間より短い場合、それを熊本県産と表示したのであれば偽装になります』と話しています。

「熊本産アサリ」が外国産だった!なぜこんなことが起きたの?国産の見分け方は?【偽装問題の詳細】

つまり、 中国で育てた期間<熊本で育てた期間→熊本産(○)、中国で育てた期間≫熊本で育てた期間→中国産(○) でも、後者を熊本産(☓)と偽って表示したと。

偽装はもちろん悪いこと・・・なんですが、この記事では、事件の背景として、次のようなことを指摘しています。ぶっちゃけ、中国産や韓国産のアサリではほとんど売れないんだって。

先日のテレビ番組『ワールドビジネスサテライト』によると、中国産や韓国産のアサリはほとんど売れなくて、卸先が見つからず在庫になってしまうのだそう。

同上

うーん、韓国はともかく、中国産のアサリって言うと、僕もちょっと手が伸びないかもしれません。偏見かもしれないけれど、急速に工業化・経済成長している中国って、高度成長期の日本を連想しますよね。 当時我が国では工業排水を垂れ流していたことがありまして、それらが海に流れ、そこで育った魚介類を食べた人たちが、奇病を発症したという歴史がありましてね(水俣病)。日本で起こったことが、中国では起こらないよう、法規制はあるはずですが、違法、脱法行為は国を問わないからなあ。なんて思ったりして。

そんなこと言ったら、外食の材料は基本向こうから来てるだろ・・・とか色々反論はあるんですけど、できれば国産、嘘でもいいから国産(「国産」と自分を信じこませたい と言うべきか) というのが、偽らざる消費者心理なんだろうと思います。

そのうえで、アサリに関して、下のグラフを見てください。

日本全国のアサリの漁獲量の推移を表したグラフです。出典 家勉キッズ

1985年までは、15万トン程度取れていたものが、それ以降つるべ落としに落ちて、今や7千トンレベル(2018)です。つまり直近30年で、国産アサリの漁獲量は5%にまで減っています。ここまで酷いとは思わなかったね。

でも、近所のスーパーへ行くと、熊本産や愛知県産をはじめ国産のアサリが、高くなっているとは言え、まだまだ日頃の食卓に出せるくらいの値段で手に入りますよね。(産地偽装が発覚してからは、多少状況は変わったかもしれないけど)

でもこれって、明らかに需要と供給のバランスが取れてない、ありえない事象なわけです。もしこれだけ希少になった国産アサリ全てが本物であるなら、今や一般庶民の食卓には出てこない高級食材になっているはず。そうなっていないのは・・・

と思っていたら、2月25日付の記事で「統計調べると、昔から需要(市場流通)量と供給(漁獲)量はおかしかった」という記事が出ました。(2月26日追記)

「県が毎年作成している水産統計にも、漁獲量を大きく上回る県産アサリの市場流通が記録されており、偽装の疑いが長年見過ごされてきた可能性がある」(2月12日配信・熊本日日新聞)、「統計に残されていた状況証拠、熊本県は『データを見落としていた』」(2月17日配信・西日本新聞)というのだ。

熊本県が毎年作成している水産に関わる統計などをまとめた資料「熊本県の水産」には、熊本県産のアサリの漁獲量と大阪府内の中央卸売市場の取扱量が記載されている。例えば、19年に中央市場で取引された量は、すべての産地で1568トン、うち熊本県産が1349トン。ところが、この年に出荷された熊本県産のアサリは339トンしかなかった。19年だけでなく、少なくとも15年以降はこうした実態だったことが、熊本県の統計資料からわかるのだ。

なぜ「アサリ偽装」は逮捕されず、「ワカメ偽装」は逮捕されたのか

そういう難しい話はいい。ただ私は、国産の美味しいアサリが安く食べたいだけなの!

 僕の住む西尾市に面する三河湾はアサリの産地として有名ですが、最近は全然取れなくて、スーパーへ行っても見るのは熊本県産のアサリばかり。

熊本産でもいいじゃないの と買ってくるわけですが、家庭内では 産地偽装が発覚する前から、「ありゃ、中国からアサリを輸入して、二週間日本の海で育てて、国産にするんだぜ」みたいな噂話も出てたりします。どこから来た話だか知らないけれど。 でも知らぬが仏。

うーん。みんな、薄々気がついていて、でも、消費者も生産者も、真実が明らかになると都合が悪いから(みんな損をする)、見たくない事実に目をつぶっていただけなんじゃなかったのかな という気もするのです。

似たような構図として、「卵」があります。経済の優等生と呼ばれていますが、なぜこんなに安いのでしょう? 産地偽装ではないけれど、それって背景に色々課題も抱えているからじゃないの?それを見ていないから、優等生に見えているだけかも・・・?

戦後の1953年(昭和28年)に1kgあたり224円だった。現在の価値に換算すれば1953年の卵の価格は1000円を軽く超える。卵は高級品だったのだ。2005年(平成17年)には204円/㎏、2010年(平成22年)には 187円/㎏だ。直近の2018年の年平均は180円/kgと年々下落傾向にある。

卵は鶏(採卵鶏・レイヤー)が産むものであり、コスト削減が鶏の生き物としての尊厳を無視し、劣悪な環境を強いている場合があることも忘れてはならない。そして、安すぎる卵の赤字補てんや、過剰な採卵鶏を減らした場合には、生産者へ国からの補助金が交付される。

生産効率を上げるためにほとんど身動きできないほどの狭い檻のなかで鶏は一生を暮らす。糞が下に落ちるように床も網でできており、止まり木で休む習性のある鶏にとって本来ふさわしくない。また産んだ卵が転がるように傾斜もついている。狭い檻から出られるのは、卵を産めなくなって、人間の用済みとなり、廃鶏と呼ばれて処理されるときだけだ。

「卵」がいつでもこんなに安く買えるという異常 年間48億円の税金を投入している事業とは?

日本の92%の卵農家は、EUであれば違法業者になる。
EUは2012年に鶏の「バタリーケージ飼育」(狭いケージに鶏を閉じ込めて卵を産ませる飼育法)を禁止したためだ。

日本人だけが知らない「食用卵」のアブない実態

後者の記事は、読んでいて気分が悪くなるのですが、僕らはそういう記事は読むのを避けますよね。鶏の犠牲の上に、「経済の優等生」が成り立っているのかもしれませんよ。

本当は以下のような別種の報道記事もあり、その仕組みに気がついている人は多いのかもしれません。けれど、報道機関もここから先にはなかなか踏み込みません。踏み込んでも、短期的には多分、だれも得をしないから。 卵の価格が上がったら、消費者は困るし、価格が上がったことで卵の消費が減ったら、生産者も困りますよね。政治家や農水省も権限が減って困るし、新聞記者はそれ報道して、とくダネリーク記事貰えなかったら困る(笑)

鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの元代表(87)が、鶏卵業界に便宜を図ってもらう目的で、元農相の吉川貴盛衆院議員(70)=自民=に対し、現金を提供した疑いがあることが1日、関係者への取材で分かった。

元代表は業界団体の役員を務め、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(AW)」の国際的な基準や、鶏卵価格が下がった際に生産者の損失を補てんする「鶏卵生産者経営安定対策事業」を巡り、政治家や農水省に積極的に働き掛けをしていた。
AWでは、業界側が2018年11月、農相だった吉川氏に日本の実情に応じた基準作りを要請。

福山の鶏卵大手「アキタフーズ」元代表、元農相に現金疑い 便宜供与狙いか 東京地検捜査

でもその先に切り込みをしないことによって、今回のような「産地偽装を生じやすい背景」が維持され、結果としてそれが何度も繰り返される、長期的に見てみんな損をする状態が続いてしまう・・・

先に紹介した 記事は、以下のような、考えさせる警告で締められています。主に我々消費者に向けて。

消費者が安いというだけでモノを購入していくと、その裏で何か負担を強いられているものがあるということを忘れてはならないだろう。もっと1個1個の卵をありがたみを感じながらいただく消費者であっても良いと思う。

「卵」がいつでもこんなに安く買えるという異常

そういや、こんな記事もあったな。知っていれば、「あり得る話」で済まされることですが、知らないとこんなことも立派な記事になる。

三重県津市の特別支援学校で19日、給食のスープから長さ2ミリの虫が見つかりました。現在生徒から健康被害の報告は入っていないということです。

学校給食の野菜スープから『虫や幼虫』見つかる…無農薬の食材使われ葉を虫が食べた跡も 健康被害の報告なし

虫の混入が嫌なら(2ミリの虫。チェックした給食作ってる人は、きっと見えないぜ)、きちんと農薬を使った野菜を買いなされ。(「気持ち悪い」というのはよく分かるけど)

スープで茹でられた2ミリの虫で健康被害が生じたとすれば・・・どんだけ危険な虫なんだ!

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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