領事館は領事がいてこそ成立するのでは?

(CNN) イランが今週中に中東でイスラエルあるいは米国の権益を狙った「相当な規模」の攻撃を仕掛けるとの判断を強めた米国が高度な警戒態勢に入り、対応措置の準備を急いでいることが7日までにわかった。
バイデン米政権の高官がCNNに明らかにした。この攻撃は「不可避」との見方をしており、イスラエル側も同様の認識を抱いているという。
イランはシリアの首都ダマスカスにある自国の大使館施設が今月1日に空爆された後、イスラエルの仕業と断定し、報復を宣言していた。

イラン、今週中に「相当な規模」の報復攻撃か 米が対応措置急ぐ

シリアにあるイランの大使館施設が空爆され、イランはイスラエルの仕業と断定し、イスラエルあるいはその後ろ盾であるアメリカの権益を狙い、攻撃を仕掛ける可能性が非常に高いということだそうで。

いつもオーバー報道気味の韓国マスコミは「第五次中東戦争の懸念」・・・とか書いています。いや、そこまで行くと危機あおりすぎだろ。

イラン軍、イスラエルに「最大の被害与える」…第5次中東戦争の懸念 中央日報

イランもそこまではやりたくないのが本音でしょう。けど、こういうのはいろんな思惑やら行き違いが生じるものですから、かなりきな臭くなっているのは事実かもしれません。うまく鎮静化してもらえるといいのだけれど、落としどころが見えないですね。

イランは強力な報復を訴える声が国内で強まる一方で、イスラエルやその同盟国の米国と直接衝突する事態は避けたいのが本音で、どこまで強硬に対抗すべきか苦慮しているもようだ。

1日に起きた攻撃では、イランの精鋭「革命防衛隊」の司令官らが死亡。特に、殺害された対外工作部門「コッズ部隊」のザヘディ司令官は、イスラエルを敵視するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやシリアの親イラン勢力と緊密な重要人物だった。

イラン、慎重に報復検討か 「弱腰」回避で強硬論も イスラエルと直接衝突望まず

大使館を攻撃する というのは「さすがに仁義なき戦い」という論調のようですし、普通に言えばそのとおりなんですが、今回のシリアのイラン大使館施設空爆の犠牲者のことを聞いて、ちょっと解せなかったことがありまして・・・

シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部の建物が1日、空爆で破壊され、イランメディアは2日までにイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の将官ら13人が死亡したと伝えた。・・・攻撃対象は大使館の隣にあるイラン大使公邸が入る建物で、在外公館が標的となるのは異例。大使や家族は無事だった。 革命防衛隊などによると、死亡したのはレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラ支援の中心人物とされ、レバノンやシリアに展開する部隊を率いるモハンマドレザ・ザヘディ司令官と、副官を含む隊関係者6人、シリア市民6人。

イラン大使館空爆、死者13人に イスラエル軍、シリア首都

建物はイラン総領事館兼大使公邸だったとの情報があり、イスラエルが攻撃したという。駐シリア・イラン大使は無事だったが、ロイター通信はこの攻撃で精鋭軍事組織「革命防衛隊」の幹部が殺害されたと報じた。建物は完全に破壊されたという。

シリアのイラン大使館周辺が空爆受け6人死亡、イスラエルが攻撃か…イラン国営テレビ報道

イランの革命防衛隊は1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部がイスラエルによって攻撃され、将官7人が死亡したと発表した。
報道などでは、精鋭コッズ部隊の上級司令官モハマド・レザ・ザヘディ准将と、その副官のモハマド・ハディ・ハジ=ラヒミ准将の名前が死者に含まれているとされる。

シリアのイラン公館に空爆、軍高官の死者多数 激化続く紛争

イラン大使公館兼イラン総領事館が空爆され完全に破壊されました、それにより大使や外交官が死亡した というのなら「仁義なき戦い」イスラエルはけしからん!という話として分かるのですが、実際には外交官は無事で、 軍事組織「革命防衛隊」の関係者(コッズ部隊の司令官や関係者)とシリア市民が犠牲になったとのこと。 「シリア市民」っていう表現も微妙ですけど。なんで大使館に軍司令官がいるのよ? 

領事館とか大使館って、外交官(基本は文官)が使用もしくは滞在しているからこそ不可侵だと思うんだけど、建物が完全に破壊されたのに、それらの人は無事。ということは、名目上はともあれ実態として、外交官施設としては使われていなかったんでないの?

第二十二条 1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。

第一条 この条約の適用上、
 (a)「使節団の長」とは、その資格において行動する任務を派遣国により課せられた者をいう。
 (b)「使節団の構成員」とは、使節団の長及び使節団の職員をいう。
 (c)「使節団の職員」とは、使節団の外交職員、事務及び技術職員並びに役務職員をいう。
 (d)「外交職員」とは、使節団の職員で外交官の身分を有するものをいう。
 (e)「外交官」とは、使節団の長又は使節団の外交職員をいう。
 (f)「事務及び技術職員」とは、使節団の職員で使節団の事務的業務又は技術的業務のために雇用されているものをいう。
 (g)「役務職員」とは、使節団の職員で使節団の役務に従事するものをいう。
 (h)「個人的使用人」とは、使節団の構成員の家事に従事する者で派遣国が雇用する者でないものをいう。
 (i)「使節団の公館」とは、所有者のいかんを問わず、使節団のために使用されている建物又はその一部及びこれに附属する土地(使節団の長の住居であるこれらのものを含む。)をいう。

外交関係に関するウィーン条約

それに「革命防衛隊」の関係者って、軍人(武官)で外交官じゃないですよね。(武官でも軍事情報の交換や情報収集担当として外交官扱い(駐在武官)できますが、部隊の司令官はこれに該当しません。)

ちなみに、司令官には司令部(副官や複数の参謀)が同行し、単独では行動しません。今回被害にあった人たちのメンツから考えるに、これは「イラン大使館関連施設といいつつ実はイランのシリア派遣軍司令部(ヒズボラ支援も担当)とそのシリア人関係者でした」ということじゃないのかなあと思ったりして。

そういえばイスラエルは「ガザ地区の病院の地下にはハマスの司令部があるのだから、病院は保護されるべき対象ではなく、軍事施設なので攻撃は許される」という主張をしていましたね、それが事実かどうかはもちろん知りようもないですけど、報道を見る限り、それより説得力のある説かもなあとか。

イスラエル軍のハガリ報道官は米CNNテレビに対し、攻撃に関与したか否かには触れなかったが、「イランは事態を悪化させた主要な国であり、現場は在外公館ではなく革命防衛隊の精鋭、コッズ部隊の軍事用の建物だ」と述べた。

イスラエル、シリア・ダマスカスのイラン外交施設を空爆か 革命防衛隊の幹部司令官ら死亡

もちろん、大使館ではなく軍事施設だから空爆も是 と言うことはないですけど、大使館施設を空爆したのか、実質的な軍施設を空爆したのか という違いは与えるニュアンスが大きく変わって来るのではないかと思った次第。

その人たちが大使公邸で何をやってて、イスラエルは何を狙ってそこを攻撃したのか、その背景を含めた報道が欲しいなあと。

いろいろ固有名称が出てきたんで、ちょっと図式化してみました。 イスラエルはハマス掃討作戦をしていて、基本的にアメリカはイスラエルを支援しています。 対するハマスをヒズボラが支援していて、そのヒズボラをイランの革命防衛隊が支援してます(実行組織として防衛隊内の特殊部隊あるいは対外工作部隊であるコッズ部隊が支援)。今回殺害されたのは、この部隊の司令官です。 

もちろん大使館はイラン政府(外務省)の施設です。ちなみに、イランには革命防衛隊だけじゃなく、別に国軍が存在します。

「船頭多くして船山に登る」という言葉がありますけど、イランは旨くかじ取りをしていってもらいたいなあと思います。 まあそれは対決するイスラエルやアメリカにも言えることなんですけど。

 

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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