林芳正官房長官は31日の記者会見で、国民民主党が掲げる「103万円の壁」見直しについて、同党の主張通り所得税の基礎控除などを現行の103万円から178万円に引き上げた場合、国・地方で7~8兆円程度の減収が見込まれると指摘した。「基礎控除等の所得控除は高所得者ほど減税の影響額が大きくなる」とも語った。
国民民主党(玉木代表)が強く求めている、所得税控除(基礎控除+給与所得控除)の限度額103万円の引き上げについて、 林官房長官はこのようにのべたそうです。
まあ、政府を代表してこのようなコメントを出すのはやむを得ないです。 政府は徴税者だから、徴税額が減るのは面白くないのは理解できる。
が、政治家・林芳正(ポスト石破の有力候補の一人)としてはどう思うのか、そこを聞きたい。なぜなら、「(一気に)7~8兆円程度の減収が見込まれる」のは、本来納税者に対してやるべきことをきちんと実施してこなかった、与党と政府の落ち度だ と思うから。
国民民主党が打ち出した「所得税控除額を現行の103万円から178万円に引き上げる」という政策の算定根拠は、所得税控除額103万円を決めた1995年の最低賃金と、現在の最低賃金の差が、1.73倍あるからなのです。
最低賃金が1.73倍になったなら、所得控除額も1.73倍にする(103*1.73=178)。 これ減税とか騒ぐ以前に、シンプルな「時点修正」に過ぎない じゃん。ふつうの、まともな話に思えますけどね。なぜ今までやってこなかったの?って思うくらい。
最低賃金って・・・
第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。第九条 賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
最低賃金法を見るに、最低賃金とは「雇用者は、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる最低の賃金額くらい支払ってあげなさい」という趣旨だと読めます。
その時給で普通に働けば「健康で文化的な最低限度の生活」がおくれるし、それを後押しするため「国は所得103万円以下の労働者からは所得税を取らない(1995年)」という制度設計になっているはず(建前上は。現実は知らんけど)。
だったら、2024年までに最低賃金が1.73倍になったのなら、「所得103万円×1.73倍。以下の労働者からは所得税を取らない」となるのが普通でしょう。
というか納税者(=国民)のことを思うなら、最低賃金が上がったら、本来はその度ごとにそれに比例させ所得税控除額も上げるべきでした。 これ↓が納税者の懐具合なんだから。
衆議院選挙のたびに「一票の格差があるので今回の選挙無効」と訴訟を起こすお約束があるんですが、それよりこちらを訴える方が国民にはより重要な論点なのでは?
27日投開票の衆院選は「投票価値の平等を定める憲法に反する」などとして、弁護士グループが28日、289小選挙区すべての選挙無効を求める訴えを全国の14高裁・支部に一斉に起こした。・・・今回は「一票の格差」を是正するため、2020年の国勢調査に基づき、15都県で選挙区を「10増10減」する区割り変更が行われた。それでも、格差が2倍を超える選挙区が10あった。・・・弁護士グループは、憲法が要求する投票価値の平等に違反していると主張。
どうです税理士の皆さん、「最低賃金が上がるたびに所得税控除額が上がらないのは憲法違反である」と訴えることを恒例化してみては。意外と世論が味方に付くかも・・・
まあそれしてこなかったのは、政府だか与党政治家の怠慢でしょう。 それをしてこないで、一気に上げると「7~8兆円程度の減収が見込まれる」(から難しい) って、被害者みたいに言わないでほしい。
実際には、国は徴税者としてこの間、税収増大で潤ってます。オマエ加害者やんけ。
1995年の国の一般会計税収は51.9兆円(決算額)、2024年のそれは69.6兆円(予算額)だから、少なくともこの間に18兆円くらい税収が増えています(特に近年は右肩上がり)。なら、たかが7~8兆円、国民に返すのになんの不都合があるの? これがマクロ的視点。
ミクロ的視点の話で、7~8兆円税収が減る分をどうするか、これに均衡した予算の調整が、政治家本来の仕事でしょうに。
あとね、所得税控除額103万円のままだと単純計算ですが
1995年 最低賃金が611円 →(税金を無視して)年1685時間労働まで無税
2024年 最低賃金が1055円 →(税金を無視して)年 976時間労働まで無税
*最低賃金額については、「一目でわかる最低賃金」の全国平均額から引用しています。確かにほぼ、玉木氏のいう1.73倍に近い数値になっています。
日本は今、パートとかアルバイトの深刻な働き手不足があるわけですけど、所得税払わない範囲で働く人の場合(扶養に入っている学生とか主婦等)、労働時間を1995年当時の6割弱に抑えないといけない計算です。労働人口減少に加え、働いている人が十分働けないとなれば、そりゃ人手不足になります、てかこれ人災ですよねぇ。政治災というか。
かなりまともな経済政策を訴えている国民民主党(玉木)さんには、野党でもない、与党でもない「ゆ党」として、政局を人質に政策実現に全力尽くしてもらいたいと思います。
政局(政権交代)しか考えていない野田立憲民主党に近づかないのも好感持てます。減税の敵は自民党にもいますが、奴も増税に政治生命をかけた戦犯ですので、この面での共闘は無理でしょうから。
消費税増税を柱とする社会保障・税 一体改革関連法が10日夕の参院本会議で民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。野田佳彦首相が最重要課題と位置付けた増税が実 現に向け大きく前進するが、実際の引き上げは次期衆院選後になるた め、選挙結果次第で増税が実行されない政治リスクはなお残る。
一体改革は消費税率(現行5%)を2014年4月に8%、15年10月 に10%へと引き上げる計画。野田首相は法案の今国会成立に「政治生命 を賭ける」と繰り返し決意表明し、自民、公明両党の3党による修正合 意によって道筋を付けた。
2012年