自民、公明両党は18日、所得税がかかり始める「年収103万円の壁」の見直しについて、20万円引き上げて123万円とする方向で最終調整に入った。20日にも決定する2025年度与党税制改正大綱に明記する。
この国で働く場合、現在ですと年収が103万円を超えると、所得税を納めないといけないのですよ。 国民民主党が、「あまりに低額すぎてひどくね?せめて178万円まで上げましょう!」 と声を上げたので、政権与党は「仕方ない、 123万円まで上げてやるか」と腹案を決めたようです。 お上のお情け、かたじけのうございます。
ここで、一つ別の視点で見てみましょう。
この国では、やむを得ない事情で働けなくなると、生活保護を受けることができます。 家族構成や住む地域によって異なるのですが、単純に1人世帯だと考えると、月に10万~13万円の支給を受けることができます。 (年間120万円~156万円)
これは、日本国憲法第二十五条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と記載された最低の生活費という位置づけです。
そして、生活保護受給者は、様々な支払いが免除されます。さっき出てきた所得税も払わなくてよいのです。
生活保護は、やむを得ない事情で働けない人のための制度なので比較してはいけないのだけれど、どうしてもこんなことを考えてしまいます。極論ですけど。
・一人暮らしで働いて年収104万円のAさん
・一人暮らしで生活保護を受けるBさん
Aさん→労働してます。月の収入8.6万円。所得税・住民税はらう必要あり。
Bさん→労働してません。月の収入10~13万円。所得税・住民税はらう必要なし。
しかも、Bさんは住民税非課税世帯(生活保護受給者)なので、「生活苦しいでしょう?」とたまに給付金が貰えます。
2025年最新決定!住民税非課税世帯3万円 子供1人につき2万円加算 電気ガス代補助も再開
一方、Aさんは住民税を払っているので(給与所得者の場合、年収100万円以下が非課税)給付金はもらえません。1人暮らしで子供もいない・・・。
もちろん極端な事例ですけど、働いている人が働けない人より冷遇される、「働いたら負け」状態。
追記。実際は状況は深刻で、極端な例ではないようです。
ふつうに考えると、職がない人よりも、職のある人の方が豊かで、貧困率は下がるはずです。実際、ほとんどの国でそうなっています。ところが日本では、ひとり親家庭、そのほとんどである母子家庭のお母さんが働くと貧困率はあがるんです。理由は簡単、ダブルワーク、トリプルワークの非正規でつないでいかないといけないからです。子どもがいますからね。朝から夜遅くまで正社員で、というわけにはいきません。結果、働かずに生活保護を利用したほうが収入が高くなってしまう。だから働くと貧困率が上がってしまうわけです。
・・・日本では大勢の人たちが生活保護という制度を利用しないことが知られています。
井手英策「いまこそ税と社会保障の話をしよう」
制度設計が間違ってね?せめて改善する方向に動くべきでは?
まあ、この国では憲法に「勤労の義務」が設けられており*「27条1.すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」国民とは名ばかり、実体「国の労働奴隷」というのが正しい制度理解なのかもしれないね。「貧乏で苦しかったら、もっと馬車馬のように働いて多く稼ぎ納税せよ。それが国力増強につながる!」とか。 (明治政府の富国強兵政策だな)
*そもそも憲法って、国民の権利を守るため、国(権力を持つもの)を縛るための法規なので、そこに「国民は勤労の義務を負う」って書いてあること自体おかしいと思うんだけど・・・国を成り立たせるため、「国民は納税の義務を負う」だったらまだわかるけど・・・。
憲法は、国民の権利・自由を守るために、国がやってはいけないこと(またはやるべきこと)について国民が定めた決まり(最高法規)です。
勤労の義務が存在するのは、日本、北朝鮮、そして旧ソ連だけ
以前、「憲法に勤労の義務が存在するのは、日本、北朝鮮、そして旧ソ連だけ」だという記事を書きました。このときは、なんか社会主義国とか全体主義国の倫理観なのかな? くらいのニュアンスで捉えていたのですが、下記の2冊を読んでいくなかで、なぜ日本において勤労の義務が憲法に含まれるようになったのか、いろいろな経緯が書かれえており、改めてこれについて考えてみようと思った次第です。
閑話休題。 てなわけで、僕の理解としては「働いたら負け」→「生活保護様には及びもないが せめてなりたや住民税非課税世帯様に」ってマジで思うわけです。こんな国に税金払いたくないもの。
参考 豪商・本間光丘~「本間様には及びもないが せめてなりたや殿様に」
昔愛読していた投資家ブログ(今は無い)に出てた言葉が思い浮かびました。
「ガメや、労働をする人間になってはいけませんよ。一生懸命に働くのは、頭が悪い人間だけが懲罰として働くのですからね。仕事をするなどは無能の証明です」
なるほど、働くのは懲罰と考えれば納得。なんとしても早く「有能」にならねば。