ウクライナのゼレンスキー大統領とアメリカのトランプ大統領の会見、びっくりしましたねー。仮にも選挙で選ばれたいい年したオッサン(いちおう選良・・・)同士の外交だというのに「幼稚園児の喧嘩かよ」っていうレベルの罵りあいしてるんだもの・・・
フェイク動画で、両者が殴り合ってる動画が出回ってて、爆笑しましたね。

まあ外交交渉の本質は基本殴り合いで、それをいかに優雅にオブラート(儀礼とか)に包むのか ということなのだな と妙に納得させられました。 そういう意味では、これフェイクじゃないかも(笑)。
閑話休題。トランプ大統領は、そういうオブラートに包むという配慮が一切ない人ですね。アメリカが世界の警察官たることをやめる方向を取ったうえで、ロシアに侵略されたウクライナ大統領に「あなたは交渉のカードを持っていない。我々と共にある時はカードを持てるが、我々なしでは何のカードもない。」って言っちゃえるんだから。それに「軍事支援の代償に鉱物貰うけど、安全保障はしらんよ」なんてね。
アメリカのトランプ大統領は今週、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、鉱物資源の権益をめぐる合意文書に署名する予定だと明らかにしました。一方で、ウクライナが求める安全の保証をめぐっては、アメリカではなく、ヨーロッパがその責任を負うべきだという考えを示しました。
まともな感覚をもっている人なら「人としてよくそんなこと言えるよな」って思いますよね。たぶん、前大統領のバイデン氏は「いい人」だったんでしょう。でも結局、ゴールの見えない戦争をずるずる続けさせることしかできなかった というのもまた事実。
そして「どうあるべきか」という理想論でなく現実を直視すると、トランプ大統領の言うことは正しいとしか言いようがないですね。前提条件として、ウクライナはEUの支援を受けたとしても、アメリカの支援がなければ戦いを続けられないし、かといってアメリカがいなければロシア相手に停戦交渉もできない。そして、アメリカはこれ以上支援を続けるつもりはなく停戦を目指している ということが事実だからです。当事者たるウクライナはその流れに逆らって泳ぎ切る国力がない。
【キーウ共同】「米国は信頼できない。もはや仲間とは言えない」「ウクライナだけで戦うしかないのか」。トランプ米政権が3日、対ウクライナ軍事支援を停止したことで、ウクライナの市民や兵士の間では失望と憤りが広がった。
「ニュースを聞いて衝撃を受けた。とても動揺している。米国の助けがないまま、ロシアの侵略を防げるとは思えない」。軍に入隊したばかりで訓練中のエドワルド・ボチオンさん(46)は首都キーウ(キエフ)の駅で静かに話した。これから電車で訓練場に向かう途中だという。
ウクライナの人々の失望と憤りはもっともですが、ウクライナ軍の新規入隊兵(訓練中)が46歳という年齢なのが衝撃ですね。兵士自体枯渇してる・・・
閑話休題。それが大国に睨まれた小国 という冷徹な事実です。でもウクライナ(小国)可哀そう・・・と同情するなかれ。中国とロシアに隣接する日本、韓国、北朝鮮、台湾も、そのような事態が生じれば同じ立場になるのです。 小国相手なら何を言っても許されるのが、大国というものです。
呉江浩・駐日中国大使は20日、日本の国会議員約30人が台湾でおこなわれた頼清徳(ライチントー)新総統の就任式に出席したことについて、「公然と台湾独立勢力に加担するもの」と非難した。在日中国大使館が日本の政治家や学者を招いた座談会で述べた。・・・「外部勢力が台湾問題でもって中国を制しようとしている」と外国と台湾の結びつきを牽制(けんせい)し、「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」とも述べた。
ではウクライナを含めそれらの小国には、大国と敵対した際にトランプ大統領の言う「交渉のカード」は本当に持てないのでしょうか。あるいは何か持つ方法はあるのでしょうか?
僕は「たぶんある」と思います。あまり直視したくない現実ですが、フランスのマクロン大統領の発言を聞いて、「あーあ、ついに真打ち出ちゃったな」と嘆息しました。ですが、それしか現実的なカードはないでしょう。
フランスのマクロン大統領は5日、ウクライナ情勢をめぐってテレビで演説を行い、ロシアの脅威がヨーロッパに差し迫っているとして、フランスが保有する核兵器による抑止力を、ヨーロッパにも広げることについて、検討を始める考えを明らかにしました。
ウクライナ情勢をめぐっては、2月のアメリカ・トランプ大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談が激しい口論となり、アメリカがウクライナへの軍事支援を停止する事態にも発展しています。
・・・また、マクロン大統領は「アメリカが私たちの味方であり続けると信じたい。しかし、もしそうでなくなった場合にも備える必要がある」と述べ、フランスを含むヨーロッパ各国が防衛力を強化し、ウクライナへの支援を継続する必要があると強調しました。
それは、核の傘に入るか、自前の核兵器を持つかの違いはありますが「核武装」です。
ゼレンスキー大統領も核保有に触れていたようですね。これこそ交渉カードとしての発言かもしれませんが。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATO=北大西洋条約機構の加盟が認められるまでの間はロシアの脅威から安全を確保する手段が必要だとして、核兵器の保有にも言及しました。NATO加盟の必要性を強く訴えるねらいとみられます。
そしてあまり思い出したくないのだけれど、日本の僕らは知っています。
日本の近隣には瀕死の独裁国があります。この国は独裁制を維持するため、独裁制以外のあらゆるものを犠牲にして核爆弾とその輸送手段(大陸間弾道弾ーロケットとも言う)の開発に邁進していることを。そして今のところその選択肢が成功していることを(核がなければ見向きもされなかった小国が、大国アメリカと対等に交渉ができた)。交渉が失敗しても独裁制が延命できているのだから、独裁小国サバイバルとしては今のところ成功でしょう。
この事例をもとに、もしウクライナが核を持っていたら、ロシアに進攻されることはなかったのではないか(核抑止)、相手に交渉に応じてもらえたのではないかと考えられます。
実はソビエト連邦が崩壊した際、ウクライナには核兵器がありました(ウクライナ領内のソビエト連邦の基地に。だけど)。ウクライナは、各国からの安全保障を受け入れる代わりにその核を放棄した歴史があります。
ソビエト連邦は破産崩壊したようなものだから、その構成国たる当時のウクライナには核を安全に保管する能力も予算もありませんでした。だから放棄以外の選択肢は取れなかったでしょう。
けど、各国からの安全保障にはロシアもアメリカも加わっていたことを考えると、ウクライナが「あの時の核を今も持っていれば」と悔やむのが当然でしょう。彼らは裏切られたのだから。そして「大国による保証」という言葉の軽さを身をもって知ってしまった。
1990年代初頭、ロシアの影から抜け出し、新たに独立したウクライナが誕生すると、その政府は核兵器に背を向けた。
しかし、ロシアの全面侵攻開始からほぼ3年が経過した今、戦後の安全保障についても同盟国間でどう保証したらいいのか明確な合意がないなか、多くのウクライナ国民が核兵器を手放したかつての決定を誤りだったと感じている。
30年前の1994年12月5日、ハンガリーの首都ブダペストで行われた式典でウクライナは、ベラルーシやカザフスタンと共に、アメリカ、イギリス、フランス、中国、そしてロシアからの安全保障の保証と引き換えに核兵器を放棄した。
他国からの安全保障の保証なんてあてにならん・・・という世界では、小国が核抑止を安全保障の現物保証としている事例があります。インドの脅威に対抗するためパキスタンの核保有。仮想敵国(異民族異宗教)に囲まれたイスラエルは核保有国と言われていますし、イスラエルの主敵であるイランも核保有国になろうとしています。
核武装していない韓国ですが「北朝鮮に対抗するため核武装すべき」という世論は多数派になりつつあるようです。
韓国は日本同様、アメリカの核の傘に入る一国だが、この数年、韓国は独自に核武装すべきという「核武装論」がじわりと広がっている。各種世論調査で「韓国が核武装すべきか」という質問に対し回答者の50~70%が「核武装すべき」と答えるなど、核武装論はいまや無視できない数字だ。
鄭氏は韓国が核武装を積極的に考慮しなければならない理由を、次のように述べる。
〈もし北朝鮮が米国および韓国との非核化交渉のテーブルにつき、核放棄と国際社会の制裁の緩和、米朝関係の正常化、平和協定などを取り引きする案について真剣に議論する意思があるのなら、韓国があえて核保有を推進する理由はないだろう(…)しかし北朝鮮はもはや米国と非核化問題に関して論議せず、むしろ核弾頭を幾何学級数的に増やすという立場だ。したがって、非核化交渉の再開を期待するのは非常に現実的だ。〉(31ページ)
別に珍しい話ではありません。非難されるべき話だ と言えばその通り ではありますけれど、これが現実世界なのです。
じゃあ日本は・・・日本は唯一の被爆国だし、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞をもらっているし、「核武装」という選択肢はタブー視されています。 もちろん被爆の恐ろしさは重々承知しているし、「核廃絶」は素晴らしい と思います。理想論として。
ですが、理想論だけで今の時代を生き抜けるとは思えません。積極的に推すわけではありませんが、「核武装」以外に有効なカード(*)がない以上、このような状況に陥るまたは陥る可能性があるのであれば、タブー視せず、核武装も一つの選択肢として真剣に検討すべき課題じゃないでしょうか。
*戦争の前に「お互いよく話し合え」という意見が出るかもしれませんが、「大国である相手は話を聞く気がない」「有効な仲裁者もいない」場合はどうします? ロシアのウクライナ進攻の場合を考えてみたら、そういう場合って現実にあり得るでしょ。
参考記事です。
フランス大統領マクロン氏、核の傘で欧州防衛を提唱。青木氏「核不拡散体制が崩壊して、核ドミノが起きかねないような状況」
高橋洋一チャンネル 1224回 トランプとゼレンスキーの大喧嘩でどうなる?停戦
アメリカを訪問している武藤経済産業大臣は、トランプ大統領が予定している関税引き上げについて日本を対象から外すよう直談判しましたが、対象外にはなっていないと明らかにしました。
武藤経済産業大臣
「(日本を関税対象から)除外してほしい旨はお伝えをしたところ。ただそれについてあすから日本を除外するという話にはなってない」「日本除外という話にはなっていない」武藤経済産業大臣 “トランプ関税”で直談判 商務長官・通商代表部代表らと会談 今後「事務レベルで議論進める」
アメリカ側は当然こういいますよね。「あなたは交渉のカードを持っていない。」メディアも「大臣がこう言った」っていう事実を報道するだけじゃなく、「大臣、アナタが持ってるカードは何ですか?」とちゃんと取材してから報道してほしいものだなあ。
林芳正官房長官は12日の記者会見で、トランプ米政権が全ての国から輸入される鉄鋼とアルミニウムを対象に25%の関税を発動したことについて「これまでさまざまなレベルで我が国の懸念を米国に説明し、措置の対象から我が国を除外するよう申し入れてきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始されたことは遺憾だ」と述べた。
「このレベルの政治家がポスト石破の一角とは、まことに遺憾。可哀そうな国民たち。あ、俺らか。」

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。