情報は、NHKの記事からです。
トランプ大統領 相互関税日本に24% 一律10%関税【一覧表も】
1.やっぱアメリカは大国なんだな。
「個別の関税率を示していないすべての国や地域を対象に一律で10%の関税」
こんな恐ろしいこと、アメリカ以外のどこの国ができるでしょう。 日本が相手のご都合を聞かないでこういうことをやったら半殺しにされちゃう・・・。
あれ、そういえば日本史を習うと「1854年、日本は初めて外国との間の条約を締結。その4年後に結んだ日米修好条約は、治外法権を認め、関税の自主権をもたない不平等条約。その後日本は日ロ戦争で大国ロシアに勝ち、日本の国際的な地位が上がった結果、1911年、関税自主権を完全に回復することに成功しました。」と習いますよ。 もちろん現代日本には関税自主権はありますが、でも実質的に関税を自由に決められないはず(WTOとかの絡みで)となると、日本はこの意味では発展途上国なのでは?
日本史においては、江戸幕府末期に諸外国と結ばれた不平等条約に関する話題として関税自主権が取り上げられることが多い。
現在の日本は世界貿易機関(WTO)協定に基づきほとんど品目について協定税率を設定しているが、この状態を捉えて「関税自主権がない」とはいわれない。これは不平等条約における関税自主権の喪失は、片務的であったが、現在の協定税率は相手国の交渉に基づき互恵的(相手国も義務を負う)に設定されているからである。関税自主権 wiki
あれ、でもアメリカは今回の関税率決定に際し、「相手国の交渉に基づき互恵的(相手国も義務を負う)に設定」してないですよ?いいのかな。
あっ、それがこの辺の話とつながって来るのか・・・。
トランプ米政権が歳出削減に取り組む中で、米国は世界貿易機関(WTO)向けの拠出金支払いを凍結している。3人の関係者がロイターに明かした。
トランプ政権は包括的な歳出見直しの一環として「米国第一」の経済政策に反すると見なす国際機関からの脱退や拠出金カットなどを進めている。トランプ米政権がWTO資金拠出凍結、歳出削減の一環=関係者 2025年3月28日午前 7:10 GMT+98日前更新
これ、WTOが「アメリカよ。今回の関税設定は、相手国の交渉に基づいた互恵的な物じゃないから無効だぜ」って文句言ってきたら、「うるせえ、だったら脱退する。うちWTOにスゲー資金出してるけど、それでもいいのかよ、ああん?」って返す腹ですよね。やくざだな。
2.それでも「アメリカ市場」ってめっちゃ魅力的なんだ
世界各国にとって、「アメリカ市場」がいかに魅力的かということも表していますね。 アメリカ市場が魅力的でなければ、「そんな関税を勝手にかける無法国家アメリカになんて、輸出するのやめーた」って言えばいいんだけど、誰も(中国ですら)それ言えないもん。
3.スピード感が違う
「すべての国や地域を対象に基本の関税率を設定し、一律で10%を課すとしています。この措置はアメリカ東部時間の今月5日に発動するということです。」
4月2日に大統領が「関税かけるぜ」と発表して、4月5日に発動って、なんなのこのスピード感。
わが祖国日本だと、4月4日に「ガソリン価格引き下げます」と発表。いつから下げるかというと6月から。引き下げ額は未定。 二か月も待たせるの~。
自民、公明、国民民主3党の幹事長は4日、国会内で会談し、高止まりが続くガソリン価格について6月から一定額を引き下げる方針で一致した。現在、政府は物価高対策として1リットルが185円程度になるよう石油元売り会社に補助金を出しているが、さらにガソリン価格が下がるよう補助額を拡充する。引き下げ額については今後調整する。補正予算は組まず、確保済みの予算内で対応する方針だ。
補正予算を組まず確保済みの予算内で対応するなら、今すぐ支出できるはずなんだけど、なんで日本政府はこんなに時間がかかるの?逆にアメリカ政府はどうしてこんなに素早く対応できるの?この違いは何?
4.なんで日本が24%なのに、イギリスやイランが10%で済むのよ?

まあ、アメリカにとってイギリスが特別な国だから、ここが安いのはまあわからんでもないけど、トランプが目の敵にしているイランも10%っておかしいよねえ。
「日本の非関税障壁が46%」ってのも、一体どうやって算出したのか興味ありますよね。 「非」関税障壁だから明示されないものをどうやって算出したかという意味で。
が、
スロウィッキー氏は税率について、「関税率と非関税障壁を計算したものではない」と指摘し、偽の関税率だと批判。米国の貿易赤字額を貿易相手国の対米輸出額で割っただけだと断じた。・・・ホワイトハウスの担当者は記者団への事前説明で、関税率の算出方法について、経済諮問委員会が「定評のある手法」を使って算出したと説明していた。ホワイトハウスはその後、米通商代表部(USTR)の公式サイトに「解析しづらい数式」(同紙)を使って算出方法の詳細を示した。
「解析しづらい数式」って、言いえて妙だな。 「理解できない数式」かも(笑)。
なるほど。 そもそもアメリカはイランに経済制裁課してるから、ほとんど輸入がないんでしょう。だから最低の10%で済んでいるのだな。
カンボジアとかベトナムは50%近いので、阿鼻叫喚の世界ですな。スロウィッキー説によれば、アメリカはそれだけ大量に東南アジアから輸入をしていて、貿易が大赤字になってる ということでしょう。タイとカンボジア、ベトナムの差は、「中国に近い奴はお仕置きよ」ということでしょうね。
中国は割と控えめな数字ですが、現状25%の関税がかかっているうえに34%上乗せなので、大体60%。 トランプは「中国に関税60%掛ける」って公言してたので、その通りになりましたね。そういう意味では、トランプは「言うことは実行する男」なんだなあ。
5.日本では(たぶん日本に限らず)株価だだ下がりで阿鼻叫喚だけど、直撃のはずの自動車メーカー株価の下落がそこまでひどくない感じがする。むしろ純然国内産業たる銀行株がひどい。
さんざん事前アナウンスされてたから、実は自動車メーカーは対策ができてるのかな。あるいは「アメリカ自動車メーカーも含め、すべての自動車メーカーにアメリカ国外から輸入した場合25%の関税を課す」という縛りは、基本みんな関税かけられ、意外とフェアな競争ができるんで、競争力のある日本自動車メーカーは意外と戦える ということなんでしょうか? となると、むしろ24%(国により異なる)かけられる比較的競争力のない日本非自動車輸出産業の方が厳しいかも。
国内産業である銀行株が下がっているのは、今回の騒動を受けて、日銀が金利を上げられなくなったからでしょう。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だけど、経済ってのは面白いなあ。
4日の株式市場では、TOPIX銀行業指数の下落率が一時前日比10%安を付け、連日の大幅下落となった。
三菱UFJフィナンシャル・グループの株価が同11%安、三井住友フィナンシャルグループが9.8%安、みずほフィナンシャルグループが同12%安とそれぞれ下落した。銀行業指数の下落率が10%を超えるのは、日米の長期金利の急低下を受けて大幅に売られた昨年8月5日以来となる。
岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一氏は、米トランプ大統領が世界の貿易相手国・地域に対して相互関税を課すと打ち出したことで「景気後退が現実味を帯び、日銀の利上げが当面難しくなったとの見立てから、金利上昇期待で買われていた銀行株はその期待が剥落した」と指摘した。
ちなみに、最終的な4日株価市場でのトヨタ自動車株の下落率はー4.41%。三菱UFJフィナンシャル・グループはー8.48%でした。
うーむ、かなり株価下がったしいっそ「トヨタ自動車」の株を購入してみようか? 落ちるナイフはつかまない方がいいとは言われるけど(しかも名指しの本丸だぜ)・・・(買ってみました。)
6.でも、自動車下請け会社は阿鼻叫喚だと思う。
トヨタ自動車が、4月3日に迫るトランプ米政権による輸入自動車への25%の追加関税発動後も、米国で販売する車両を当面値上げしない方針であることが31日、分かった。・・・追加関税によるコスト上昇分は、原価低減などによって吸収する。日本国内の生産台数や雇用も減らさず、仕入れ先の部品メーカーなどからの調達量や価格も維持するとみられる。
さて問題です。
今でも乾いたぞうきんを絞るようにコスト削減をしている自動車メーカーが「仕入れ先の部品メーカーなどからの調達量や価格も維持」しつつ原価低減可能な方法を答えなさい。
答え そんなん無理。
下請けに「原価低減への協力」を求めるしかすべはありません。 それって価格下げに決まってるがな。「ダメならできそうな他の会社に回すけど、どう?」 「Sir、yes、sir!」

山下は停戦協議の席上で、全面降伏に難色を示していたイギリス軍司令官のパーシバルに対し「イエスかノーか」と強く降伏を迫ったという逸話は一躍有名になったが、このときの雰囲気については異説もある(後述)。
まあ、この記事を書いた人も分かってて、「維持するとみられる」と書いてます。「維持する」とは書いてませんね(笑)。 うむ、下請けの多い三河地方の景気悪化は必至だ。
7.で、トランプ君の落としどころはどこなのよ
2026年の11月に中間選挙があります。政治家は選挙に勝つことがすべてなので、その前に大減税をやりたいでしょう。 かたくなに減税しない自民党ですら、匂わす程度はしますんで。
自民党の松山政司参院幹事長は1日の記者会見で、「物価高対策、特に食料品に対する対策は非常に重要だ」と語り、食料品の消費減税を含む積極的な物価高対策を検討するよう政府に求めた。・・・7月に参院選を控え、参院自民は政府方針に異を唱えることが増えている。
ましてトランプ君は、自民党の「選挙前に言うだけ検討するだけ」とは違い、一期目に大減税した実績があります。
米連邦法人税率を35%から21%に引き下げることを柱とする大型減税で、2017年12月に成立した。レーガン政権による1986年の減税以来の抜本的な税制改革で、減税の規模は10年間で1兆5千億ドル(約166兆円)と、過去最大となった。大統領選の公約で15%への税率の引き下げを掲げていたトランプ氏にとって、初めての大型公約の実現となった。
地方と合わせた法人税率は28%程度と、日本やドイツなどの主要国よりも低い税率となった。企業の海外子会社からの配当課税も廃止し、多国籍企業などが海外にため込んでいる余剰資金を米国内に引き寄せることを狙う。また、5年間の時限措置で設備投資全額を課税所得から控除できる「即時償却」を認め、企業の投資を促す。
個人所得税も軽減し、最高税率を39.6%から37%へと引き下げた。もっとも、中低所得層への恩恵は乏しく、個人減税の多くは8年間の時限措置となる。一方、トランプ減税により、米国の財政赤字は10年間で1兆ドル強増える見込みで、中期的に米長期金利の上昇要因となるリスクがある。
でもまあ、コロナ対策でガンガンお金を使ったアメリカ政府にはお金がありません。政府支出を削るため職員をリストラしたり、海外への援助を停止したりしてますが、あまりうまくいってないようです。
大量解雇の米連邦職員、国防総省などに復職命令 政府縮小に打撃
米最高裁 USAID海外援助停止めぐり トランプ政権の主張退ける
うまくいかない象徴であるマスク君はそのうち首だな(笑)。

ともあれ支出削減がうまくいかないなら、増税で政府収入を増やすしかない・・・というのが今回の関税でしょう。どのくらいの規模で減税するか知らないけど、減税額がたまったら今回の増税(関税)はそこでおしまいになるんじゃないでしょうか。
でないと物価高騰に悩む有権者(アメリカ国民)からの突き上げで、中間選挙に勝てなくなるんで。だからまあ、長くて1年くらいの辛抱じゃないかなあ と思うのですが、さてどうなることやら。

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。