イスラエルとかパレスティナあたりの歴史

いよいよ地上戦間近なんでしょうか・・・

あのあたりでイスラエルやらパレスティナについて書かれるのは、この人くらいからが有名なところじゃないでしょうか。 半分神話(旧約聖書)の時代です。

 みけらんじぇろ だびで像    wikipediaから画像をお借りしました。

ミケランジェロは、キリスト教の権威が高い時代に、理想的な男性像を彫像したのであって、実際のダビデがこんな好男子だったかは知りません。(この像は、ユダヤ人のシンボルでもある割礼がないしな)

この時、ダビデの属するヘブライ人(ユダヤ人)のイスラエル王国は近隣に住むペリシテ人と戦をしており、ダビデは一騎打ちでペリシテ人の巨人戦士ゴリアテに勝利します。その時のダビデをモデルにした彫像です。 戦場で裸ってことはないでしょうけど。ま、このころ、ユダヤ人の王国がこの地域にあったのです。 

のちにダビデは国王になり、ダビデと息子のソロモンの時代にイスラエル王国は全盛期を迎えます。「ダビデ王とソロモン王の御代・・・」というのは、映画やアニメでもちらほら出てきます。実態がどうだったのかは知りませんけど、東洋で称えられる「貞観の治」の神話版みたい位置づけかと。

例:映画インディジョーンズシリーズ「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」のアークって、モーセが神と契約した「十戒」が刻まれた石板を収めた箱のことです。「ソロモンの秘宝」とも呼ばれます。ソロモン王が建設したエルサレム神殿の至聖所に安置されてたことになっているからです。

貞観(じょうがん)は、中国唐代の太宗の治世に使われた元号。 627年 – 649年。
太宗が魏徴などの賢臣を任用し、広く諫言を納れて善政を敷いたため、隋末の戦乱から民生を立ち直らせることに成功した(貞観の治)。貞観年間は賦役も軽く、殖産が奨励された傍ら、突厥との防衛戦にも勝利し、社会は安定して経済は繁栄を見た。
後世の治政の範とされ、その原理は『貞観政要』(太宗と名臣たちの論議を記した書)に詳しい。

wiki

その後、イスラエル王国は滅亡し、最終的にはローマ帝国に占領されるのですが、大規模な反乱を何度も起こすので、もーゆるさんってことで、ユダヤ民族はこの地を追い出され散り散りになります。(ディアスボラ) ついでに、ローマはこの地を「ユダヤ」属州から「シリア・パレスティナ」属州に改めます。 パレスティナというのは、「ペリシテ人の土地」という意味です。ユダヤ人なんてもうこりごりだ って感じでしょうか。

以降、ユダヤ人のいなくなったこの土地は、近隣のアラブ人、いまでいうパレスティナ人が住み続けてきました。(ペリシテ人と現在のパレスティナ人との関連性は不明)

故郷を追われたユダヤ人たちは、キリストを殺害した呪われた「流浪の民」としてあちこちで迫害されました。特にキリスト教至上主義下のヨーロッパではまともな職業にはつけず、土地も持てず。日本の「士農工商」みたいに商人とか金貸しとか人に蔑まれるような仕事をせざるをえませんでした。

まあ、成功した商人は富を握っています。そのうえユダヤ人は自分たち独自の宗教を守り(閉鎖的)、身を守るため子息の教育に投資し識字率も高い。代を重ねるごとに社会に対する影響力も持ってくるんですけど、それゆえに「けっ、ユダヤ人のくせに」とますます民衆に恨まれたり。たびたび弾圧があったり。平時でもユダヤ人収容区(ゲットー)しか住めないとか。 

「うう、我々の国さえあれば、こんな苦難を受けなくていいのに」そんな思いが、先祖の栄光の地、パレスティナへの帰還と建国という思いにつながります。シオニズム運動です。

 それに拍車をかけたのが、第一次世界大戦時の英国外交です。 戦費を獲得したい英国は、ユダヤ人の金融財閥かつシオニズム運動の盟主であるロスチャイルド家に「パレスティナにユダヤ人の国家をつくるのを認めます(だから軍資金お願いね)」と約束します。(パルフォア宣言)。と同時に、アラブ人の豪族に「イギリスと敵対するオスマン帝国と戦ってくれたら、パレスティナにアラブ人の独立国をつくってあげます」と約束。(フセイン・マクマホン協定 ここから、映画「アラビアのロレンス」のストーりーが始まる)

英国はパレスティナを「ユダヤ人国家にする」かつ「アラブ人国家にする」と両立不可能な二重約束をしたうえ、さらにフランスと「戦後はこの地域を二国で分割統治しましょ♡」とさらに本音の密約を重ねます。(サイクス・ピコ協定)

俗に「三枚舌外交」という悪名高きやつ。これが、現在のパレスティナ問題の遠因なんです。覇権国(落ちぶれ期)の暴走という点で、米国が、その二の舞を踏まないといいんですけど、なんか既視感ある気が。

んでお約束。英国は戦後、フランスとの密約を実施案として採用。共存はきびしいだろーなーってことで、分割統治(委任統治)した土地の一部にユダヤ人の入植地とアラブ人の国?をつくることにしました。

が、双方大反発。そりゃ「パレスティナの一部」しか認めませんし、そもそも独立させてねえから。特に資金力のあるユダヤ人側は「約束が実現されないなら、実力行使あるのみ!」と在外地主からパレスティナの土地を買い占め入植していきました。独自の宗教を持つユダヤコミュニティ(国家)に異民族のアラブ人は不要です。出ていけー。

遠い祖先が住んでいた土地だからとはいえ、それはローマ時代の話、それ以降は父祖の地として代々アラブ人が住んできました。アラブ人から見ればユダヤ人の行為は、自分たちの土地(俺たちの国)をどこぞの馬の骨(日本帝国)が武力を背景に住んでいた人たちを追い出し、「満州国」という傀儡国家を建国したのと変わりありません。

 双方行くとこないから必死だし、譲れません。深刻なドンパチが続き、当たり前ですが治める英国が武力介入しても収まらず困っている中、ドイツではナチスによるユダヤ人撲滅作戦が始まり、パレスティナに流入するユダヤ人が急増。対応に苦慮する英国はユダヤ人の入植を制限するもユダヤ側はテロ活動で抵抗。戦後、匙を投げたイギリスは国連に下駄を預け逃げちゃいます。 

国連はパレスティナの土地をユダヤ人国家とアラブ人国家に分割する案を決議をするも、現地のユダヤ人とアラブ人の人口比率を無視しロビー活動が活発なユダヤ側に有利な分割裁定をします。そしてユダヤ人国家であるイスラエル建国。パレスティナ人(アラブ人)に味方するアラブ諸国はこれを不服としてイスラエルと数次にわたる戦争(中東戦争)を戦いますが、毎回イスラエルが勝利。イスラエルがパレスティナ全域を武力制圧、そして統治することになります。

アラブ諸国による武力介入は終わったけれど、武装闘争組織であるパレスティナ解放機構(PLO アラファト議長)が結成されイスラエルに対する武力闘争を開始。イスラエル領内にいるアラブ住民たちも抵抗運動(インティファーダ)をやめません。

そんな年月が過ぎ、ついに1993年にPLOとイスラエルの間でオスロ合意が結ばれ、パレスティナ人による自治区を設けることが決まりました。 ヨルダン川西岸地区とガザ地区をパレスティナ自治政府*(PLOが主流派で母体)が治めることになったのです。地区にはイスラエルの入植地はだいぶ残ってはいるんだけれど、ともかく共存の一歩は!

*パレスチナ国として世界136か国が国として認めているんですけど、日本国政府は認めておらず、自治政府と呼んでいます。

が、快挙は長く続かず、イスラエルとパレスティナで約束互いや過失、その結果としてドンパチが続きます。またパレスティナ自治政府もカリスマであったアラファト議長(穏健派ファタハを率いる)の死後、強硬派ハマスが第一党となり、内紛の末、自治領をヨルダン川西岸はファタハが、ガザ地区はハマスが統治するという分断状態のまま、現在に至ります。

朝日新聞記事から借用

てか、ヨルダン川西岸地区と、ガザ地区ってまったく分断されていて、ファタハとハマスがそれぞれの地域を統治してるってことは・・・もう別組織って考えてもいいんじゃないかと。つまり、ガザ地区を支配するハマスによるイスラエルへの攻撃は。パレスティナを代表するであろう「パレスティナ自治政府の決定」ということではなさそうです。

ガザ地区へなぜ進攻?日テレニュース

たぶん肝心なのは、ハマスやパレスティナ自治政府(ファタハ)がどう行動しようかと考えているのかではなく、パレスティナ人自体がハマスの行動を、そしてパレスティナ自治政府(ファタハ)どう思っているのか?ということです。ハマス単独では、イスラエルに勝ち目はないでしょうから、ガザ地区の住民としては「巻き込まれた」という思いかもしれませんし。 そのあたりをどう整理するかが、最終的な糸口なのかもなあ。

[15日 ロイター] – パレスチナ自治政府の通信社WAFAは15日、イスラム組織ハマスの行動を批判するアッバス自治政府議長の発言を公表したが、後でハマスに言及した部分を削除した。理由は明らかにしていない。

WAFAがウェブサイトに掲載した当初の発言は「ハマスの政策と行動はパレスチナ人民を代表するものではなく、(パレスチナ解放機構の)政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だと議長は強調した」としていた。

ハマス批判、パレスチナ議長発言から削除 自治政府の通信社

「パレスチナ人は、ガザ地区の人、ヨルダン川西岸の人、イスラエル領内の人、外国に逃れていった人に大きく分けられる。政治観などは各地域の中でも一枚岩ではない。ガザ地区に関しては、ハマスのやり方に賛同していないパレスチナ人もいることは確実だ。ただ、イスラエルの占領政策、イスラエルという国家に対して批判的であるということは、ほとんどのパレスチナ人が気持ちを一つにしているということは言えると思う」

ハマスを「パレスチナ人」はどう見ているか?一枚岩じゃない政治観も パレスチナ系日本人研究者に聞く「どっちもどっち」で片づけないために

ちなみに、日本の公安調査庁は、ハマスを、テロ・ゲリラ組織と認定しています。政府の一機関とか政党という位置づけではないのね・・・。

他方、イスラエルとしては、これまでカウンターパートとしてきたパレスティナ自治政府(穏健派が主流だった)が強硬派ハマスをまったく制御できておらず、交渉相手として役に立たない以上、現時点では強硬派に対して強烈な打撃(攻撃)を与えるしかないーすなわちガザ進攻&市街戦 という残念な結論しか残っていないようにも思えてしまいます。双方にとって泥沼の道だともわかってはいるのでしょうが・・・

 

参考文献 これならわかるパレスチナとイスラエルの歴史Q&A 

 

市民講座を利用する。 「中東の歴史」

暑かったり寒かったり、風邪を引いたのか喉がガラガラして痛いです。呼吸器系が弱いので注意しないと。 皆様もお気を付けください。何を気を付けたらいいのか、僕には分らんのだがね。

5月から今日まで、西尾市の春期公民館講座を受講しておりました。講座名は

「中東の歴史」 -なぜ紛争はなくならないのか–  でございます。

1時間半の講義8回で古代オリエントの歴史、多神教と一神教、ローマ帝国と宗教、イスラーム、イスラーム世界の拡大、オスマン帝国の盛衰とアラブの民族運動、イスラエルの建国とパレスティナ問題、イラン革命後の中東情勢    などが取り上げられました。

まあ、程度としては高等学校世界史+αですね。 なにせ講師は元高校教諭※だからして。

こういう講座は、講師の力量により、或いはタイトルと内容がかけ離れていたりして、聞いててがっかりすることも多いのですが(EX大学の教養講座等)、今回は楽しい!とは言えないまでも、きちんとしたよい講義でした。(誰もが池上彰になれるわけじゃないす)

この講義を聞いて、何か新たにすごい知見が得られる というようなものではありませんが、中東の歴史って、本を読むよりは、しっかり知識が身につくと思います。一人で本を読んでも速やかに忘れますが(笑)、講義で聞くとなかなか整理できていいと思いますよ。

さらに、今回の講座は講師が博識で、いろいろ脱線する小話がなかなか面白かったですね。日本史やら宗教にまで話がおよんでたし。思考的にはかなりリベラルで、どのくらいかと言うと、安倍くんや稲田くんが聞くと「非国民!」と言うくらい。パンチが効いてて面白かった(受講者に極右の人がいないで良かったよ)。僕も同類だけど、めんどくさいので黙ってますがね(笑)。

料金は1600円。他にも受けてみたい講座はいろいろあります。・・・陶芸とか、中国語講座、キムチ造りどか。秋講座も利用するつもりです。皆さんにもお勧めしたいところなんですが・・・何せほどんど平日開講なので、仕事をリタイヤしないと受講できない(笑)。

これ以上講座の内容は説明しませんが、紹介された参考図書を載せておきます。

講師曰く、なかなか中東やイスラームについて、きちんとまとまった形で一般向けに取りまとめたよい本はない、学者先生は自分の専門ばかり詳しいし・・・とのことでしたが、それでもこの辺りなら・・・と、2冊本を紹介してくれました。

(読んでないのに紹介してしまうけど、講座の内容、それと僕も宮崎正勝さんの別の本は何冊か読んでいるので、そこから判断するに両方とも悪くない選択肢だと思います。)

これは僕のおすすめですが、イスラームの歴史をサラッと抑えるなら、

あたりがいいかな と。予備校の先生なので、歴史部分はわかりやすくて良いのですが、ただし「歴史を見る目を現代を見る目に応用した」という解説はいただけません。神野史観はどんなものかというと、これを読めば、安倍くんや稲田くんが激賞するだろう といえばわかりますかね。

それとまあ、講義を聞きながらぼんやり感じてたところですが、これからの中東を考えるなら、注目すべきはサウジアラビアとイランじゃないかなと。スンナ派(超厳格)でアラブの盟主サウジアラビア、シーア派でペルシャ人のイラン。おまけに核疑惑付き。この辺りを中心にいろいろ絡んでいるのが中東の現実かなと。

そんなことを思った僕は、次の本を買って読んでみます。

(内容を見ないで買うと、タイトルと内容のギャップに「はずれ~」となることが大半ですが、たまにいいのに当たると、これこそ読書の醍醐味!amazon詣で辞められないんだよね・・・)

→(追記)すばらしく良い本に当たりました。いろんな観点で分析されており、超お勧め!

中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書) 新書       高橋 和夫 (著)

かつて「悪の枢軸」と名指しされるも、急速にアメリカとの距離を縮めるイラン。それに強い焦りを覚え、新しいリーダーの下で強権的にふるまうサウジアラビア。両国はなぜ国交を断絶したのか? 新たな戦争は起きるのか? ISやシリア内戦への影響は? 情勢に通じる第一人者が、国際政治を揺るがす震源地の深層を鮮やかに読みとく!

オバマ君のアメリカは、イランと手を結びサウジを焦らせたものですが(まさにこの本が書かれた状況)、トランプ君のアメリカは、イランを遠ざけ、サウジとの連携を強めてます。ISが占拠していたモスルがもうじき陥落しそうなこの時期に、サウジはGCC仲間だったはずのカタールと国交断絶してたり。

と。あとはトルコとイスラエルに注目かな?

イスラエルに関しては、アメリカとの連携

トランプ君は、イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移動させようとしましたし、大統領に影響力のあるクシュナー上級顧問と愛娘イバンカ氏はバリバリのユダヤ教徒ですし(イスラエルとの連携強化が示唆?)。

トルコに関してはクルド人との関連

クルド人は、トルコ東部、イラク北部、イラン北西部に3000万人近くが暮らしています。本来なら自分たちの国家を持ってもおかしくない規模です。いま、クルド人勢力もモスルを攻めていますが、イスラーム国が壊滅したイラク北部に残るのは、クルド人勢力・・・ですよね。 国内のクルド人への波及を恐れるトルコは、イスラーム国を空爆すると見せかけクルド人を攻撃してます。ただでさえ、トルコは地域で突出した経済力と軍事力を誇りますからね。それがどう動くのかな?

そのあたりよく見ていきたいと思いますね。何せ21世紀は、イスラームの時代ですから!

 

 

 

 

※元西尾高校世界史教諭のKさん。僕も同校出身で、卒業アルバムによれば自分の高校生時代の担任団におられたようですが、こちらは理系の日本史選択の生徒(当時は世界史が必修じゃなかった)、あちらは文系の世界史の教諭ですので、まったく接点がありませんでした。