えっ、ペットボトル水の賞味期限って、実質無限なんだ! ローリングストックを って何だったの?

個人的には結構衝撃的な記事でした。

防災用などで備蓄しているミネラルウォーターの賞味期限が切れたら、捨てたほうがいいのか。元消防士で防災アドバイザーの高岡武志さんは「捨てる必要はない。理論上、ミネラルウォーターは絶対に腐らないので、どれだけ賞味期限を過ぎていても、お腹を壊すことはない。賞味期限が設定されているのは『計量法』があるからだ」という――。

ペットボトルの賞味期限は気にしなくていい…理論上「絶対腐らない」ミネラルウォーターに賞味期限がある理由

「賞味期限」ってメーカーが「この期間は間違いなくおいしく食べられます」と宣言する期間で、「それ過ぎたら、食べたらダメ、ゼッタイ!」となる期間じゃないのは知ってました。

賞味期限(おいしく食べることができる期限です!)
袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のこと。スナック菓子、カップめん、チーズ、かんづめ、ペットボトル飲料など、消費期限に比べ、いたみにくい食品に表示されています(作ってから3ヶ月以上もつものは「年月」で表示することもあります)。この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではありません。もし、賞味期限が過ぎた食品があったら、大人の方とそうだんしてから食べましょう。

子供の食育 農林水産省

賞味期限を(長期間)過ぎたペットボトル水を飲んでいいかどうか、「子供の食育」ページを読むような賢い子から相談された大人も、どう判断すればいいかわからず戸惑うばかりでしょうに。農水省も手軽に「大人と相談してから食べろ」とか言うなよ。

普通の食品だと臭いを嗅いで、問題なさそうなら少し食べてみる 変な味しなきゃ野性のカンで判断 という流れかと思うけれど、ペットボトル水ってこの方法使えないじゃないですか。ペットボトル茶ならまだわかるかもしれないけど・・・ 

きちんと密閉され日陰で保管され変形もしてないペットボトル水って、水質が悪くなる要素なんて無いよね  と思う一方、防災の本やネット記事を見ると、「ローリングストック」(消費と補充を繰り返すことで、食料品や日用品を常に一定量ストックできるようにする備蓄方法)しとけ って書いてあるですよ。

僕の家だとペットボトル水を日常的に飲む習慣はなく(水道水おいしいぞ)、「消費と補充の繰り返しなんてできねえ」と毎回突っ込みたいところ。それでも水は大事だから防災備蓄用に積んであります。 いつ処分すべきなのか迷いつつ。

実際には、水をローリングストックしている人も多いようですね。これだと賞味期限とか処分に悩まなくて済むな。

1番重要な備蓄は「水」と74%の人が回答!防災士が教えるおすすめローリングストック法とは

ローリングストック推奨と、通販サイト等で「防災備蓄に最適な長期保存水(10年)」などと称された水が売ってることから、「賞味期限を大幅に超えた水は(理由は分からんが)なにか水質に不都合が出るのだろうから、飲まないほうが無難なのだろう」 と漠然と考えていました。

イメージ図。アマゾンから画像をお借りしました。

なので、消費期限+1年までは大丈夫、それ過ぎたら捨てて(庭の雨水タンクに投入)新しいものを買い替える(できれば長期保存水) という根拠なし運用をしていました。

が、それは「金の無駄遣い」だったらしいです。とほほ。

ミネラルウォーターの賞味期限ですが、これは「穴のせいで中身の水が徐々に減る」ことを考慮して設定されています。実は水の分子は、ボトルにあいた超極小サイズの穴よりも小さいため、非常にゆっくりですがボトルを通過してしまうのです。そうなると当然、徐々に中身が減っていくことになりますが、実は量が減り過ぎると販売時に法律違反になるという事情があるため、そうなる前の日付になるように賞味期限が設定されているのです。


この法律は「計量法」というもので、例えば2Lペットボトルであれば1%(20ml)、500mlペットボトルであれば2%(10ml)以上減ったものを販売してはならないというものです。つまり、ミネラルウォーターの賞味期限は「計量法違反になるかどうか」だけで設定されている期限なのです。実際に消費者庁も以下のように回答しています。


ちなみに防災グッズとしてよく売られている5年保存や10年保存のペットボトル水は、中身が蒸発しにくい特殊な素材を使うことで5年経っても、10年経っても計量法に違反しない量をキープしています。

ペットボトルの賞味期限は気にしなくていい…理論上「絶対腐らない」ミネラルウォーターに賞味期限がある理由

残念ながら、記事にある「消費者庁の回答」がきちんとした論拠になっているとは読み取れなかったけれど、それでも記事全体の論理性は高いので、この解説はおそらく正しいでしょう(と僕は判断した)。

それはそれとして、「南海トラフがいつ来るかわからん」「常に備えとけ」「自助 共助 公助」「警視庁災害対策課のツイートマジ使える」 とかけっこう話題になる国で、

「ペットボトル水の賞味期限って計量法で縛られているだけで、実は期限過ぎても備蓄として有効(飲む水として問題なす)」が常識になってないこと、それ自体がおかしいですね。これって一番大事な防災ストックの基礎知識です。これ知るだけで(意識ある)家庭の水ストックが、予算かけずに増やせるんですよ。 いの一番にやるべきことでしょう。

同記事の最後のとりまとめ、非常に大事なことが書いてあるのでキャプチャしておきます。できれば、元記事読んで理解しておいてください。 「防災対策のハードルは低いことが重要です。気合を入れた防災対策は継続できません」か。これが本当の防災ですね。

ペットボトルの賞味期限は気にしなくていい…理論上「絶対腐らない」ミネラルウォーターに賞味期限がある理由

歴史と地理から考える都市防災

防災を考えるのに、都市の歴史とか地理など、多角的な面からも考えるのはいいアイディアだと思っているのですが、そんな観点から、とてもよい記事がありましたので、紹介します。

「大いなる田舎」名古屋が語る防災の知恵

「お国自慢」を通して、これからの日本を考える

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

無理やり短くまとめてみると

  • 名古屋のシンボル「名古屋城」は、歴史に残る数々の大地震をくぐり抜けてきた
  • 名古屋城を含む名古屋市中心街(三の丸にある国県市官庁街も含む)が災害に強かったのは、それまで市街地であった清須(川岸で液状化の危険大)から、現在の位置(熱田台地)に町ごと大規模移転「清洲越し」をしたから。
  • 「清須越し」とは、1610年に徳川家康が息子の尾張徳川家初代藩主に、清須の城下を熱田台地の上に丸ごと引っ越すこと命じたもの。約100の寺社、67の町と共に、6万人が引っ越した。
  • 太平洋戦争で焦土と化した名古屋(名古屋城の天守閣もこのとき燃えちゃった)だったが、大規模な復興を猛烈なスピードで進めた。100m道路をはじめとする広幅員道路や、寺社・墓地移転により大規模な土地区画整理事業を進めた。移転した寺院数は300弱、墓地面積は約18万平方メートル。
  • 結果、南北の久屋通と東西の若宮通、2本の交差する100m道路に、南に続く新堀川を加えると、名古屋を十字に4分割する計画になっており、万一大規模な火災が起きても延焼が全市に拡大するのを防ぐ。整備された広い道路と公園は、災害時の避難地や復旧工事の拠点にも。
  • 近年、災害危険度の高い名古屋駅周辺に高層ビルが林立するようになったが、名古屋の老舗企業の本社の多くは熱田台地上に残っている。
  • 名古屋の周辺に集積する自動車産業も、多くは丘陵の原野を開発して大規模工場を建設しており、他地域の産業と比べて災害危険度は相対的に低い。
  • この状況は、入江を埋め立てた大手町から日比谷にビジネス街が広がり、臨海部の埋立地にタワーマンションが林立する東京の風景とは全く異なる。
  • 安全な場所に城を構え、その周辺に城下町が広がる。日本の地方都市の多くは、近代以降もこうした街の形を引き継いでいる。地元の老舗企業は城に近い旧市街地にある場合が大半だ。名古屋も規模は大きいが、そうした地方都市の一つといえる。
  • 最近、この田舎っぽさこそが大切なのではと感じ始めている。地方都市にいまも息づいている街の歴史には、様々な防災・減災の知恵も込めらてれおり、それは地域の特色にもなっている。全国各地で地元の良さを再認識し、それぞれの「お国自慢」を通して、これからの日本を考えてみてはどうだろうか。

名古屋を十字に4分割する計画だった とかは知らなかったですね。へぇ〜。

まあ手放しで褒められるほど、現在の名古屋がそこまで「すげえ」わけではないでしょうけど、江戸時代の規模だと、大規模移転しただけあって、防災上も強かっただろうし、その時の遺産が残っているのは間違いありません。

指摘されているように、近年では災害危険度の高い(地盤が弱い)名古屋駅周辺が急速に高層化し開発されまくっていました。本当に近年ですね。昔は繁華街である栄への通過点でしかなかったもの。防災上はそのほうが良かっただろうね。ま、なんと言っても交通の便がよいのは、災害のこと忘れれば、やっぱり魅力的ですから。

熱田台地は、北西端が名古屋城、南西端が熱田神宮なんですが、現在の名古屋市は、それを遥かに超える面積を持っています。名古屋市の弱点は、特に熱田神宮より南や西に広がる低地でしょう。熱田神宮より南は江戸時代まで海だったし、西は低湿地でした。大雨が降れば大惨事が起こります。2020年の「東海豪雨」では名古屋市の4割が浸水したし、その危険性は基本的には今も変わっていません。

名古屋の街、4割浸った 東海豪雨(平成と中部)
海抜ゼロメートル地帯が広がる濃尾平野は、深刻な水害にたびたび見舞われてきた。平成もそうだ。2000年9月の東海豪雨では新川の堤防が決壊し、名古屋市内の4割が浸水。多くの家屋や工場が泥水にまみれ、被害総額は7700億円を超えた。

日経新聞

この濃尾平野のゼロメートル地帯、名古屋市だけでなく愛知、岐阜、三重3県に跨るんですが、その面積は「日本最大」と非常に危険な地域でもあるのです。参考「東海ネーデルランド」(中部地方整備局)

「自動車産業が多くは丘陵の原野を開発して大規模工場を建設」というのは事実ですが、大規模ではない下位下請けまでくれば例外もあり、裾野の広い自動車産業全体の災害危険度は本当に低いと言えるかなぁ?とも。

でもでも、概略的に都市の成り立ちとか知っていれば、自宅や職場で、災害時にどんなことを準備しておくべきか ということが見えてきますし、なによりただ漠然と「防災考えなきゃ、うちは何を備蓄しとけば大丈夫なの?」っていうアプローチより、断然面白いですよね。

☆福和先生の話はとてもおもしろいしためになるので、本を買って一読しておくと良いと思います。一番のオススメは「次の震災について本当のことを話してみよう」です。