Go toがダメなら、Going alone キャンペーンをやったら?

コロナの感染拡大を受けて、Go to関係のキャンペーンは軒並み停止になりましたね。まあ、仕方のないことだと思うんだけど、飲食・観光業界を救うためだとしたら、「おひとり様」での利用に補助を与える という処置はどうでしょうか?

理由① 一人客は会話しないから、たぶん感染が広がる可能性は低いだろう

感染を避けるため、盛んに「三蜜を避けてください」と言われる昨今ですけど、蜜でも感染が起きていない場所があります。それは「満員電車」です。

日本国内の満員の通勤電車などを指して「3密なのになぜクラスターが起きないのでしょうか?」と疑問を寄せられることがありますが、これはおそらく電車内で皆さんがあまりしゃべらないからだと思います。 

クラスターが発生しているケースの多くは、合唱している、カラオケをしているとなど大声を出しているところです。これに加えて最近は電車内でも多くの乗客がマスクを着用し、換気されていることも影響していると思われます。

新型コロナ、日本の満員電車で「クラスター」が起きない「意外なワケ」

感染を防ぐために重要なのは、実は「三蜜を防ぐこと」ではなく、「会話して飛沫を飛ばさないこと」じゃないの?と思える事象ですねえ(笑)。もちろん蜜を防いだり、マスクをしたり換気をしたりすることも、大事ではあるんでしょうが。

「一人で食事をする」「一人でホテルに泊まる」行為では、ほとんどしゃべることはないので、満員電車の事例をもとに考えると、感染のリスクはかなり低いのではないかと思うのです。

理由②「1人で行動せよ」とすれば、おバカな政治家でも理解できるかもしれないから

政府が感染防止策として少人数での会食を呼びかけるなか、菅義偉首相が14日夜、自民党の二階俊博幹事長らと5人以上で会食したことについては、「一律に5人以上はだめだと申し上げているわけではない。ぜひ感染リスクが高いことを頭に置いて対応していただければと考えている」と述べた。

「一律に5人以上がだめだとは」 西村担当相が首相擁護

8人だ!とか、芸能人と会食って不要不急だろ!言ってることとやってることが違うから国民はあんたの言うこと信用しないんだよ!とかツッコミどころ満載であります!

それはそれとして、西村さんの発言も一理あって、「5人以上の会食がダメで、4人以下なら大丈夫」 という線引きは本来できないのです。人数が多くなれば、感染のリスクが上がるということは言えるでしょうけど。

でも「1人で行動」すれば、会話しないで済むから、2人以上の時より感染リスクは格段に低いでしょう。だから「1人以下での会食は制限なく大丈夫」 とは言えるでしょうし、おバカな政治家でも理解できる気がします。まあ一人は「会食」と言いませんが(笑)。

理由③一人で食事や宿泊が堂々とできるようにしよう!

「一人で食事したり、宿泊したり、旅行するのは、(周りからどう見られるか気になって)嫌だなあ」という人も多いようです。僕の経験だと特に女性はそう思う人が多いようです。旅館や飲食店によっては、あんまり一人客を歓迎していないところもあり、客としても入りずらい ということもあるかも。

が、これらの店舗も将来のことを考えると、「おひとりさま」はとても大切なお客様になり得る・・・というか、生き残るためには、そこをメインターゲットとする社会の意識変化が不可欠になると思います。 消費者としても、一人で堂々と?旅行したり飲食店を利用することが大事になってくるかもしれません。

というのは、これまで家族類型の主流であった「夫婦と子」からなる世帯は2050年には少数派となり、代わって単独世帯が約4割と一番多い世帯類型となる。また、単独世帯のうち高齢者世帯の割合は5割を超える ことが高い確度で予測されるからです。

出典:国土交通省 国土計画局(H22) 国土の長期展望に向けた検討の方向性について25ページ。(なおこの資料は、日本の未来を考える上で目を通しておくべき重要資料だと思います。)

まあ、単独行動って、確かに最初の一歩は不安というか、敷居が高いかもしれないです。

そこで政府が「おひとり様行動割引キャンペーン」をやっていただけると、「私、別に一人で食事する必要はないんだけど、キャンペーンで安くなるからやってみたの」という正当な理由付けができ、第一歩が踏み出しやすくなります。

一度やってみると、あ、なんだぁ、「単独行動って言っても慣れの問題」だな って気づいて、それからは気にならなくなるかも。店舗の方も、政府のお墨付きがあれば、意識改革しやすいでしょう。

理由④単身(特に独身)は派手にお金を使ってくれる夢の消費者 かもよ?

中国の事例ですが・・・

11月11日は『独り身の節』『独り身の者のお祭り』だったのです。
それがなぜ、盛大なネット通販セールの日になったのか。その発端については諸説ありますが、代表的な説は1993年に南京大学の学生たちが始めたというものです。宿舎のベッドで行われる雑談会で『俺たちは独身で恋人もいない。将来必ず結婚できるとも限らない。プレゼントする相手もいない。そんな寂しい自分に何か買ってあげよう』というアイデアが出てきて、若い世代を中心に自分へのプレゼントを買う習慣が広まっていったというものです。
つまり、『独身者の悲哀』から始まった習慣なのですが、そこに目を付けたのが中国のネット大手アリババです。アリババは2009年11月11日に大規模なネットセールを実施して、『独身諸君、自分のために何かを買おうじゃないか!』と呼び掛けました。その2009年の売り上げが5000万元、1元=16円で計算すると日本円で8億円ほどでした。その後、年々すさまじい勢いで売り上げを伸ばし、2018年は2135億元(約3兆5000億円)、2019年には2680億元(約4兆1000億円)にまで拡大しました。
今では『独身の日』というより『ネットショッピングの日』になっているのが現実ですが・・・

11月11日の中国「独身の日」とは? イベントで大騒ぎをする理由は?

日本のおひとり様が「裕福」であるかは分かりませんが、(子供がいない分)可処分所得が多い人もいるかもしれませんし、自分が決めれば動けますから(奥さんや子供を説得する必要がない)、やりようによっては、家族連れを相手にするより金払いの良い上顧客になる可能性もあるかも。 消費喚起がこのキャンペーンの主旨なのだから、それに賭けるのもいいんじゃないの?

理由⑤オラいつも一人だから、堂々と割引受けたい(笑)

それに将来、豊かな単身高齢者生活を送るために、「おひとり様にやさしい社会」ってのは是非構築してもらいたいからです。「おひとり様にやさしい社会」は、どの世帯にも優しいでしょうから、それを目指すのは後悔しない選択だと思うし。

12月20日 参考記事(関連個所抜粋)追記

「おひとり様」はやっぱり増えていた!? それでも避けたい場所は「焼肉店」や「遊園地・テーマパーク」
今年はコロナ禍で“単独行動”が増えた人もいるでしょう。民間企業の調査結果によると、今年はやはり「おひとり様」への抵抗感が減っていることが分かりました。密を回避すべくおひとり様デビューしてみたら、意外と心地よかった……という人もいそうですね。
  1人で利用したくない理由を聞くと、「他の人と利用した方が楽しい(50.8%)」や「1人だと利用しづらい雰囲気(37.6%)」といった回答がありました。若年層では「1人で利用しているところを他人に見られたくない」、女性30代では「他の人と感想などを共有したい」という回答比率も高くなっています。

Hint Pont

GoToトラブル・・計画経済的政策で、旅行制御を目指すから・・・ 

Gotoトラベルの運営の失敗は、市場経済の国で、計画経済的な政策を無理やり実行してしまったことに尽きるんじゃないですか?

まあ、日本は表向き市場経済と言いつつ、実態かなり計画経済の運用をしているとは思うけれど。ただそれで押し通すなら、人民に行き先を指定した割引制度にしないと無理だったんじゃない?

GoTo運営に中小から不満 地域ごとの予算枠撤回
 観光振興策「Go To トラベル」をめぐり、国から事業を委託された団体の事務局が出した通知に中小の旅行業者が反発している。全国13地域に分けて見積もった旅行の「予算枠」を守るよう求めたものだが、枠があることを知らなかった業者も多いうえ、「実際にどこに旅行するかは、お客が選ぶのに」との不満が噴出。通知の事実上の撤回に追い込まれた。

朝日新聞デジタル

旅行者はこんな枠があるなんて知らないから、自分の行きたい旅行先に行きますわなあ。旅行先には当然人気不人気がありますし、「補助があるなら旅行へ行こう!」って人もいるから、旅行母体が増えるしあらかじめ正確に見積もる、なんてそもそも無理。 

だから、何の誘導もなしに(※)人々を自由に旅行に行かせておいて、見積もった地域予算枠を守れ って、少なくとも市場経済の官僚(とその手下)が言うこと自体狂っとる。 

※市場主義なら例えば、「リアルタイムで各地域の人気不人気に応じ、割引率を変更(人気の高い旅行地の場合は割引率を下げ、人気のない旅行地は適度に割引率を上げる)し、人々がそれを見ながら旅行先を選べる」ようにすれば、地域別旅行需要を変化させ、地域予算枠を守ることも可能でしょう。しかし、IT後進国である日本で、こんなシステムの開発と運用は不可能(笑)。

計画経済の親玉(倒産済)旧ソ連のようなシステムを使えば理論的には可能かな。ズバリ、行き先を先に申告あるいは指定して割引をしてあげるシステム。ただ、これうまく行くかどうか、先に人民中国に相談してから政策立案すればよかったね。多分「そんな制御無理!」と反対されて実現できなかっただろうから(笑)。

 ソ連のすべての労働者は毎年28日間の休暇を取っており、誰もが海に行きたいと思っていた。ところが、ソ連のリゾート地やサナトリウムが1年間に受け入れられる数は、約85万人にすぎなかった。だが、ソ連の人口は1億2000万人以上だったから、南方の日差しを満喫できたのは10%以下ということになる。
 休暇バウチャーは、労働組合事務所を通じて配られた。自腹を切って家族連れで海に行くと、2〜3ヶ月分の給料がかかった。これはちょっと高すぎる…。(休暇パウチャーを使えば安いけどそれを使って:モト補足)良いリゾート施設に行くには、2〜3年も待たなければならないことがあった・・・ 国はバウチャーの費用の70%を補填した。安価な郊外のサナトリウムでの休暇を申し込むこともできたが、その条件は平均的なものだった。

ソ連国民が夢見たモノ:アパート、車、海外旅行、そして単なる日用品はいかに獲得されたか

問題は、これだとお目当ての旅行先にいつ行けるか分からないから、旅行に行く気が失せること。いや、近くの温泉なら行けるだろうけど、テンションとともに消費意欲も下がるよねえ。今回の政策は消費喚起が目的なんだから・・・

てか、観光庁は我々に「旅行してお金を使ってください」と言っておきながら、消費する個々の旅行者(つまり消費者)の目線に全く立っておらず、全国の津々浦々のホテル・観光業者(生産者)だけを見て制度設計したことがありありで興ざめ。

キツイ言い方だけど、これまで海外からのインバウンド旅行者を入れてようやく保ってきた旅行者数を、国内需要だけで賄おうって言うんだから、予算配分は「公平」を旨とするんじゃなくて、「競争」的に配分させるのが筋じゃないの? 

それでも公平を重視するなら、このキャンペーンのお金を全国に平等に配布してあげたらいいやん。  (これだと消費者支払い分は観光に落ちませんけど、キャンペーン終わったら消費者は旅行を手控え、ますます人気の観光地に集中するだろうから、損得はどっちもどっちかと)

なお、最初に紹介した記事は次のように続きます。

問題となったのは、事務局が9月下旬に出した通知。個別の旅行業者に対して「東北」や「九州」といった地域ごとに認めた予算枠を守るよう求めた。 この予算枠は各業者が7月以降に出した申請に基づいて事務局が事業者ごとに割り振った。ただ、多くの業者は前年の実績などに基づいて申請しただけで「(地域の内訳は)総額を決めるためだけの数字で、予算の枠だと思っていなかった業者が多かった」(業界団体の地方支部幹部)という。

前掲

「地域別予算枠は、各業者から申請に基づいて事務局が事業者ごとに割り振った」そうです。この事務局って、「Go toトラベル事務局」だと思うけど・・・

 GoToトラベル事務局を構成するのは、全国旅行業協会(ANTA)などを除けば、業界最大手のJTBを筆頭に、近畿日本ツーリストを傘下に置くKNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズという大手旅行代理店4社。この4社から各都道府県のGoToトラベル事務局に社員が出向する形を取っている。

内部資料入手「GoToトラベル事務局」大手出向社員に日当4万円

ここで事務局を構成するとして名前の挙がった4社は、じゃらん、楽天トラベルやヤフートラベルが上限引き下げや回数制限を打ち出した際に「条件改悪無し」だったんですよね〜。他にHISとかExpeidiaとかも条件改悪してないので、疑って申し訳ないんですけど、素直に「各社からの申請に基づいて配分」してないんじゃね?とも感じちゃうな。あるいは想定以上にネットにお客様が流れ大手旅行会社は使ってもらえなかった(人気がなかった)ってことだろう(笑)。ま、コロナ化だし想定できなかったとは思えないけど。・・・ま、この辺は「大人の事情」すかね。

 Go To トラベルを巡っては、東京発着旅行が追加された10月以降に予約が急増、大手各社は予算枠の上限に迫り、じゃらん、ヤフートラベルは割引の上限額を3500円に引き下げた。航空券などがセットになったパック旅行の上限は引き続き1万4000円。楽天トラベルは上限はないが、会員1人につき1回の利用に限定。dトラベルは割引商品販売を当面中止した。・・・また、JTB、日本旅行など条件を変えていない会社もある他、観光庁は、大手集中を避けるため中小事業者を重視する方向だ。

「Go Toトラベル」で割引上限引き下げ、利用回数制限相次ぐ 予算枠追加検討も

ツッコミどころ満載な記事。「大手各社は予算枠の上限に迫り」は誤植で、「大手ネット旅行サイト各社は予算枠の上限に迫り」が正解だろ。

「観光庁は、大手集中を避けるため中小事業者を重視する方向だ。」・・いや、観光庁は大事にする相手が違うだろ!

中小事業者を重視するんじゃなくて、実際に旅行に行く消費者を重視してほしいっす。んで、消費者が支持している事業者は、今回割引上限を引き下げたり、利用回数制限を課した会社だよ。大手でも中小でもない。「大手ネット旅行サイト」!そこに重点的に割り振ってくれ! まあ実務は事務局丸投げでしょうし、この事務局構成だと無理だろう。

んでも・・・ゆくゆくは、それがアフターコロナあるいはウイズコロナ社会でのインバウンドを含めた旅行消費の拡大に繋がると思うんだよね。視点を事業者から消費者に移さない業界や喚起策に未来はないと思うよ。