高市首相が「台湾有事」について発言した結果、すごい波紋が広がってますね。
ことの発端は、7日の衆院予算委員会で立憲民主の岡田克也元外相(72)から台湾を巡ってどのような状況が日本にとって「存立危機事態」にあたるのかと質問された際の高市氏の見解だ。
高市氏は、「”戦艦”を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えたのだ。
「日本は、長らく憲法第9条の下で、自衛隊の武力行使を”自国を防衛するための必要最小限度”に限定してきたため、集団的自衛権の行使は憲法上許容されないという解釈を維持してきました。しかし、’15年の平和安全法制の成立により、政府は憲法解釈を変更し、限定的ながら集団的自衛権の行使を容認しました。
高市氏の問題意識はよくわかります。僕は麻生、安倍元首相が発言した「台湾有事は日本有事」という見解自体には賛成ですし。だけど現役首相のこの発言が、中国政府が発狂発言せざるを得ないほど慌てさせた時点で、 この発言したことが「戦略的にまずかった」 って思いました。
中国外務省は14日、国民に対し日本への渡航を控えるよう呼び掛ける通知を出した。・・・通知では、「日本の指導者が台湾に関し露骨に挑発する発言をし、中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」と主張。日本在住の中国人に対しても、安全に注意するよう求めた。
もちろん中国の発言内容は非論理的なただの言いがかりです。でも相手にここまで言わせてしまったこと自体がアウト。
なぜならこれ、両国首脳が合意した 「戦略的互恵関係の推進」に反し、両国の共通利益を拡大する方向に向いてないからです。 喧嘩別れすれば済む相手でもありませんから、高市氏もそれを進めること自体に異存はないでしょう。
高市早苗首相は31日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席のため訪れている韓国南東部の慶州で中国の習近平国家主席と初めて会談した。日中双方の共通利益を拡大する「戦略的互恵関係」や「建設的かつ安定的な関係」の推進を確認した。
日本の輸出相手トップ10の移り変わり
2008年までの50年余りはアメリカが断然1位でしたが、この年にアメリカで金融危機が起こり、アメリカをはじめ世界中の景気が急激に悪くなり需要が落ち込みました。しかし、中国は政府のいろいろな経済対策により景気の落ち込みが少なく、引き続き高い経済成長を遂げたことから、2009年から日本の最大輸出相手になっていました。2013年以降はアメリカが再び1位となった後、2018年に中国が6年ぶりにトップへ返り咲き、その後、2019年はアメリカ、2020年からは中国がトップになりました。
この辺り、考えても言わず「秘すれば花」にすべきでした。まあだからと言って、一度言ってしまった発言を取り消すことにどれだけの意味があるのかは分かりませんが。
それと、もっとまずいなあと思ったのは、
「高市氏は”戦艦”を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えた の部分。
えーと、現時点で、世界には現役の 戦艦(BATTLE SHIP)は存在しないのです・・・
アメリカが持ってた最後の戦艦(アイオワ級)も、1990年代に退役してます。まあ、第二次世界大戦で活躍した戦艦が湾岸戦争でも使われた(再就役だけど)のは、技術的にすごい話だぜ とは思うけどな。
戦後、世界唯一無二の戦艦となったアイオワ級は第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争と多くの戦歴を誇ったが、運用・維持には多額の費用がかかるために平時は予備役にあることが多く、・・・冷戦終結後の国防予算の削減に伴い1992年までには全艦が退役することとなった。
もちろん中国は戦艦を保有してません。たぶん高市氏は「軍艦を使って武力の行為も伴う」と言いたかったのでしょう。 そして、戦艦と軍艦の違いなんて、普通の人(素人)にはどうでもよい話かもしれません。
ひとくちに「軍艦」といっても、その種類は多岐にわたります。最も広い定義では、軍が保有し運用している艦船は大小問わず軍艦になります。・・・
それでは「戦艦」とは、どのようなものなのでしょうか。保有する国/軍が「戦艦」と呼称すれば戦艦になるのですが、あえて定義するとしたら「砲撃で相手の艦船を撃破するために作られた船」というのが、近代以降の戦艦だといえるでしょう。・・・見分け方としては、威力の大きな大口径の砲を多数装備し、その発射時の反動でひっくり返らないよう、大きな船体になっていることが挙げられます。このほかにも有効射程の長い大口径砲を活用する関係で、遠くまで見通すための高い艦橋構造物やマスト(見晴し台)を持っているのも特徴に挙げられます。
その定義で各国の海軍が保有する現役の艦船を見渡してみると、実は「戦艦」に分類される船は1隻もいないことがわかります。というのも、現代の海戦において砲撃戦で決着をつけるということは想定されず、砲撃戦を専門とする戦艦が「時代遅れ」の存在となったためです。
でも、有事について発言する首相なら、基礎レベルの軍事専門用語くらい知らないとまずくね? この発言だと、中国は戦艦を有すると認識してた と取られても仕方なくね?
その程度の軍事知識しかない と世界に認識されてしまったのは・・・彼女のためにも、日本の国益のためにも大きな損失だったと思います。
あまり評価はしてませんが、軍事オタクの前首相なら、この間違いはなかったでしょう。(そもそも思想的に、性格的に、「存立危機事態になりえるケース」なんて明確に答えることはなかったでしょうが。)
★参考記事
ドローンを大量使用するなど戦争の形態が変わってきたからか、一周回って時代遅れとされた兵器が再び注目されつつある なんていうニュースもあります。そんなこんなで、また戦艦が復活する可能性も、無きにしもあらずかも?
でも戦艦「ドナルド・トランプ」とか、かっこ悪くていやだなあ。
2024年1月3日、ドイツはウクライナへの支援として、新たに「ゲパルト」自走対空砲3両と、対空機関砲用砲弾3万発を送ったと発表しました。・・・ 実は、ウクライナとロシアの戦いが始まるまで、同車両は時代遅れの兵器とみなされていました。1973年に配備が開始されたもので、基本設計は50年以上前の車両です。ドイツでは2010年に退役しており、当初はドイツがウクライナ支援をアピールするための供与といわれたことも。しかし実戦投入されると、その評価は覆ることになります。一体なぜだったのでしょうか。
・・・ウクライナの戦場に投入されたゲパルトは、予想に反して、ドローンや亜音速で飛ぶ巡航ミサイルを相手に迎撃能力の高さを発揮します・・・そして、なんといっても機関砲の弾を使っての迎撃であるため、ミサイルなどで迎撃するよりも圧倒的にコストパフォーマンスがいいことが魅力です。
2025年9月30日、バージニア州にあるクワンティコ海兵隊航空施設(Marine Corps Base Quantico)で行われたアメリカ軍幹部が集まる重要な会議に出席したトランプ大統領は戦艦の復活は選択肢の一つとして検討していると発言した。
「これは実際に我々が検討していることだ。側面装甲の厚さは6インチ(約15センチ)で、アルミニウムではなく鋼鉄製だ。アルミニウムではミサイルが近付くだけで溶けてしまう。そういう船は今はもう作られていない」
・・・「中には『いや、あれは古い技術だ』と言う人もいる。しかし、私はそうは思わない。あの大砲を見れば、古い技術だとは言えないだろう」「砲弾はミサイルよりも費用がかからない」とトランプ大統領は語った。

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。