そうなると、ピノコじゃないけど「でも先生、日本全国だとどうなゆのさ?」と疑問が出てきます。 じゃあ、調べてみゆ。 (漫画・ブラックジャック風)
全国の寺院数を調べるのに一番便利なのは、たぶん「文化庁編 宗教年鑑」です。これの昭和60年版が吉良図書館で閲覧できますので、それを元に集計します。
僕が知りたいのは、伝統仏教とされる13宗の寺院数の内訳です。(華厳宗、法相宗、律宗、真言宗、天台宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗、曹洞宗、臨済宗、黄檗宗)+その他。
年鑑の「文部大臣所轄包括宗教法人の包括宗教団体別・被包括宗教団体・教師・信者数」の仏教系の内訳をこの13宗派に分類します。
統計上は上記の13宗派には分類されていません。例えば「禅系」だけでも臨済宗××派、臨済宗△△派、一畑薬師教団、曹洞宗、如来教、黄檗宗など22に分けられている)
どこまでが臨済系で、どこからが「その他」なのか、僕に微細な違いはわかりませんし、知りたくもありません。でも「だいたい上記13宗派がどのくらいの分類になるのか知りたいので、ネット情報を元にエイやと主観で分けました。だから正確ではありませんけど、おおむねの傾向を知るなら十分かと思います。
結果。
昭和60年版集計では、日本には74,406の寺院がありました。
(華厳宗58、法相宗60、律宗115、真言宗12266、天台宗4217、日蓮宗6762、浄土宗8251、浄土真宗20791、融通念仏宗357、時宗414、曹洞宗14808、臨済宗5780、黄檗宗460、その他67)
参考まで「愛知県宗教法人名簿」 昭和60年版による西尾市の寺院数は303寺院。
(華厳宗0、法相宗0、律宗0、真言宗6、天台宗0、日蓮宗9、浄土宗156、浄土真宗90、融通念仏宗0、時宗0、曹洞宗17、臨済宗14、黄檗宗1、その他10)
まあ、数はあまり問題ではありません(てか正確さに欠ける)。大事なのはそれぞれ全寺院数を100%として、それぞれの宗派が概ねどのくらいの比率になるかを表した下表。まあ誤差ありで見てね。
青色が西尾市、オレンジ色が全国を示しています。
全国的には、浄土真宗、曹洞宗、真言宗の順にお寺が多いです。
西尾の場合は浄土真宗は全国並みなんだけど、曹洞宗と真言宗は少なく、その分浄土宗の寺院が圧倒的に多い ということが言えます。
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さて、日本にはなんで浄土真宗のお寺が多いのでしょう?
この疑問に答えてくれる本があります。宗教学者島田裕己著「浄土真宗はなぜ日本で一番多いのか」 幻冬舎新書。
答えはあとがきに書いてありますが、それが庶民の宗教であることを徹底したから だそうです。詳細は本を読んでね。
この本は、浄土真宗に限らず日本の仏教の宗派の違いや特徴、教団の歩み、多宗派との関係や影響を解説する本です。ザーッと読んでおくと、たぶん宗派について(宗教じゃないよ)、歴史とかを楽しむのに十分な知識が得られるでしょう。新書版だし。おススメの本です。
本の中には部分的に寺院数や信徒数も紹介されているんだけど、この数字を視覚的に分かりやすいようグラフ化してくれると、もっとヒットしたと思うんだよ。そこにグラフが載っていれば、僕も調べなくて済んだわけだし・・・
(もっとも、上記13宗派にまとめて図表にすると分かりやすいんだけど、どうしても統計を「主観的にまとめる」ことが必須だから、学者としてはまずいかもしれんし、宗教法人からクレームも来るだろうね)
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グラフを眺めているといろいろアイディアが出ますよね。 鎌倉以降の宗派は信者の身分との結びつきが強いと言われているから、(士農工商なら、士=禅系、農=浄土・浄土真宗系、工商=日蓮宗系)禅宗や日蓮宗系の寺院は旧城下町に多く、浄土・浄土真宗系は旧農村地帯に多いんじゃないか とか、真言宗や天台宗は密教や修験道と結びつきが強いから、寺院数は平地より山国の方が多いんじゃないか とか。
古くからある仏教(華厳宗、法相宗、律宗)は奈良に集中していそうだし、時宗や融通念仏宗もかなり特定の地域に集中してるんじゃないかな とか
日本の場合、「宗派歴史地理学」が学問として成立するような気がします。(葬式のやり方とか、田舎では宗派が厳然として残ってますからね)まあ、調べるのはいろいろ面倒くさそうですけど。
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