空母とカタパルト

(マニアックな話です。興味のある方だけご覧ください)

数日前のニュース記事でこんなのありました。

【12月17日 AFP】(更新)中国で2隻目となる空母「山東(Shandong)」が17日、就役した。台湾や米国、さらに領有権を争う南シナ海(South China Sea)周辺諸国との緊張関係を抱える中、同国軍にとっては大きな戦力増強となる。

中国で2隻目の空母「山東」が就役 国産としては初
中国北東部・遼寧省大連にある大連船舶重工集団の造船所を離れる、中国初の国産空母「001A型」。IMAGINECHINA提供(2019年11月14日撮影、資料写真)。(c)Imaginechina  より引用

この写真見て思ったこと。

そういや、アメリカを除く各国の航空母艦は、飛行機の発艦方式として、前部飛行甲板に傾斜をつけるやり方だな。(正確には「スキージャンプ」方式) どうして アメリカの空母みたいなカタパルト方式じゃないんだろ?

スキージャンプ方式の離陸とは、(上の写真を見て想像してください)飛行機が自分の搭載エンジンを使って空母の飛行甲板を滑走、先端のジャンプ台の坂を駆け上がり、最後に離艦します。水平な飛行甲板を滑走するだけでは、離陸に必要な揚力を得ることができないのです。

一方、カタパルト式(射出機を使った)の離陸の場合、 飛行機のエンジンも使いますけど、飛行機が離艦できる速度まで空母の甲板に設置された射出機が押し出してくれるのです。 人間が紙飛行機を飛ばすイメージです(滑走しないで済む)。 実際には、下の写真を見てもらうと分かりますが、滑走はするけど距離は極めて短くてすみます。こんな短距離で飛べるんだね。

wiki カタパルト、ニミッツ級航空母艦 より引用

仮に両方式で同じ飛行機を飛ばすことを考えると、常識的に考えてカタパルト方式の方が戦闘には有利ですね。

スキージャンプ台方式だと飛行機単独のエンジンを使って、坂を上って加速する必要があり、飛行機を軽くしないといけません。 →逆に言えば、カタパルト方式の飛行機は、より燃料やミサイルを多く積むことができ、航続距離や攻撃力が増すわけ。

また滑走距離が短いということは、飛行甲板を有効に使うことができる と言うことを意味します。その分たくさんの飛行機を積めたり、離陸と着陸を同時並行でやれたりします。→作戦の幅が広がる。

じゃあ、すべての空母が、カタパルトを装備すればいいじゃん。でも実際にはカタパルトを装備する空母は限られます。 なんでだろ?

答えは・・・wikiに書いてありました。

現代の航空母艦では、第二次世界大戦後にイギリス海軍で考案されアメリカ海軍において実用化された蒸気カタパルトが主流である。・・・蒸気カタパルトは、油圧式より高速で作動し、はるかに重い航空機も運用でき、強力な加速が一度に加わる火薬式よりも航空機への負担が少ないという利点があるが、配管が複雑になるという欠点がある。推進用機関のボイラーが蒸気式カタパルトの装備を前提としていなかったエセックス級では、改装で蒸気式カタパルトを装備した際にカタパルトを連続使用すると蒸気の不足により速力が低下した。現代の原子力空母は十分な蒸気発生量があるため、カタパルト使用による速力低下は一切無い。

wiki カタパルト

要約すると

  • 構造が複雑(すなわち大容量で重く、整備が大変)
  • 蒸気を大量に使うので、十分な熱源が必要

で結局、アメリカの「巨大原子力空母」クラスでないと載せるのは現実的ではない ってことかと思います。※現在アメリカ以外にカタパルトを装備した航空母艦は、フランスの原子力空母1隻のみ。

だから今、各国では次世代カタパルトである「電磁式カタパルト」の開発に躍起になっているそうです。これは大電力が必要だけど、蒸気カタパルトよりは簡単な構造なんだってさ。アメリカでは最新鋭空母に搭載されていますが、トランプ君が「以降の空母に採用しない」って言ったとか。まだ開発途上ってことね。

そういや、日本のヘリ空母「いずも」にF35Bを搭載できるよう改造するそうだけど、スキージャンプ台を付けるのかなあ。ちょっとカッコ悪いから、平らな甲板のままの方がいいけどな(笑)。

Kaijō Jieitai (海上自衛隊 / Japan Maritime Self-Defense Force) – http://www.mod.go.jp/msdf/formal/jmp/201612.html, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=55763099による

てか、空母と艦載機を装備するより、長距離ミサイルを大量に(数うちゃ当たる方式で)開発したほうが安上がりじゃないの? →あ、それが北朝鮮の戦略か。

1月28日追記 すごくよくまとまった記事がありましたので、参考まで。

30tの艦載機が2秒で300km/h!空母の蒸気カタパルト脅威の加速どう実現?米仏のみ運用

空母から艦載機を飛ばす際に使用される「カタパルト」は広く知られるでしょうが、現行の「蒸気式」を開発、かつ運用している国となると、実はアメリカだけに限られます。旧日本海軍も取り組んだ各種カタパルトの歴史をたどります。

乗り物ニュース

福島第一原発の処理水問題

いろいろ考えさせる記事がありましたので、紹介します。元記事はかなり長いので、僕が主旨と思ったところだけ抜粋引用しますけど、是非元記事を読んでみてください。

福島第一原子力発電所では、事故で溶け落ちた核燃料を冷却するために水をかけることや、地下水が原子炉内部に流入することによって、放射性物質を含む「汚染水」が生まれ続けている。この汚染水から放射性物質の除去処理を施した「処理水」も、同様に貯まり続けている。

しかし、いま運用されている浄化設備では除去できない放射性物質がある。トリチウムだ。

原子力施設で生まれたトリチウムは希釈すれば悪影響がないという考え方を前提に、世界各国では規制基準に基づいて大量のトリチウムが海や大気に排出されている。日本も同様に、これまで全国の原子力施設で発生したトリチウムを含む水を40年以上にわたり処分してきたという。

(増え続ける処理水の処理方法として検討した)5つのプランの中で最も低コストな方法が、海洋放出だ。そのため、関係者の間で海洋放出することを支持する声は強い。

これまでも、田中俊一・前原子力規制委員長や更田豊志・現原子力規制委員長、原田義昭・前環境相らが海洋放出を支持する方向の発言を行い、メディアで大きく取り上げられた。

しかし、現時点での科学的な安全性評価や、コスト面からの評価だけでは解決できない問題がある。それが、いわゆる「風評被害」への懸念だ。

小委員会のメンバーはどう思っているのか。森田貴己委員に話を聞いた。

森田さんは、放射性物質が水産物に与える影響を研究している科学者だ。水産庁が所管する中央水産研究所で海洋・生態系研究センター放射能調査グループのグループ長を務め、5つの処分方法について技術的な評価を行ったトリチウム水タスクフォースのメンバーでもある。

森田さんも「トリチウム水タスクフォースにあるように技術論で言えば、処理水は海洋放出が最もリーズナブルな方法」と語る。科学的に安全だという前提のもとに「(政府関係者や東電が)その方法を選択したいと思うのは当たり前で、合理的ではある」とも話す。

しかし、森田さんは海洋放出について「現段階では反対」という立場だ。

「あくまで風評被害への対策として、タンクに貯蔵し続けるという選択があると考えています。タンクの中に入っている水を放出することが安全ではないから貯蔵を継続すべきだ、と言っているわけではないです」

海洋放出の先にある風評被害について十分な対策が打ち出されていないというのが、その理由だ。

「地元の漁業者の多くも、処理水の放出そのものの安全性は理解しています。問題は、それを海洋放出した際に起こるであろう風評被害をどうやって防いでもらえるのか、という点です」

「だから、何が何でも自然科学的に正しい、では押し通せないということです」

「大気放出や地層注入など、現状検討されているいくつかの選択肢に(技術的な観点やコスト面で)バツをつけていって、残っているのは海洋放出だけじゃないですかというのが、これまでの議論の進め方です。海洋放出には風評被害が生まれるので、本来ならばその選択肢にもバツがつくはずですが、そこは追及されない」

複雑化する福島第一原発の処理水をめぐる国の議論。“最有力案“に反対するメンバーに聞く

漁業者は処理水そのものの安全性は理解しているけど、風評被害を防いでもらえないと賛成はできない。  政府関係者や東電は海洋放出が自然科学的安全で、しかもコスト的にはもっとも有利なので、海洋放出したい。 という立場。

決断を促すのにもっとも難しいのは、「風評被害を防ぐ」有効な手段がないことなんですよね。「福島産の魚を食べて応援しよう」ってキャンペーンをやっても、そのキャンペーンに乗って積極的に福島産の魚を食ようと応じる人たちは、そもそもキャンペーンがある前から食べてる/もしくはそれに準じる意識の高い人たちですもん。

似たような話があります。「防災意識の啓発」として、防災のシンポジウムをやると、主催者あいさつでちょくちょく聞く話です。「この防災のシンポジウムに参加する人たちは、そもそも防災に対する意識の高い方たちなので・・・」。

正直、そんなお堅い話に付き合ってくれるような人たちは、あんまり心配することはないんです(危機感を持ってるから)。問題はシンポジウムに来ない人たちへ、どう情報を届け、防災に向けた行動してもらうかということですが、それってどうすればいいのか困ってます。と言うのが現状かと。 同じ構図ですね。

防災関連だと、大人に強制的に聞かせるのは無理だから、子供の学校教育で取り組もう って方向性になってるんです。(子供が動けば周りの大人も動かざるを得ないだろ)

方向性は悪くないと思うけど、最近の小学校って、英語だプログラミングだ、お金との付き合い方だ とかすでにパンク状態ですから、まあ割り込みは厳しいだろ。ついでにその仕事を、専門外の現場の河川事務所に押し付け、東京のお偉方は実際に効果があると思ってんだか。ヤレヤレ詐欺じゃねーの・・・(最後のは昔抱いてた愚痴)

ま(笑)、この風評被害の対策 に、もちろん僕ごとき答えは持ち合わせていないのですが、せめて多くの人に状況を知ってもらえたら と思った次第です。

と、もう一つ。 政府関係者や東電は処理水の処分方法の議論(海洋放出)を急いでいるのだけど、

その理由を員で資源エネルギー庁の東京電力福島第一原子力発電所事故廃炉・汚染水対策官でもある奥田修司さんは、前述の通り2022年には処理水を保管しているタンクがいっぱいになるためだと説明する。

貯蔵を継続することは、本当に難しいのだろうか。「必ずしも2022年夏にタンクが処理水で満杯になってしまったら、貯蔵ができないわけではない」と話す。

だが、それは現実的ではない、と奥田さんは語る。

「中間貯蔵施設が建設される土地は、地権者の方々にも苦渋の選択をしていただいた上で、受け入れていただいている。そして、中間貯蔵施設もまだ用地取得の段階にあります。そうした事情から、中間貯蔵施設の土地を処理水の貯蔵のために使うことは、難しいと言わざるを得ません」

その言い分は分かるのだけど、その前に問題が立ちふさがってます。こっちは問題解決の解は分かっている、ある意味簡単な問題なのに、なんで 政府関係者や東電は動かないのですかね。

放射性物質を含んだ水には、2つの安全基準がある。

<1>タンクに貯蔵するための基準
<2>環境に放出する際の基準

だ。環境放出する際の基準の方が、貯蔵基準よりも厳しい。

2013年に導入された多核種除去設備(ALPS)に汚染水を通せば、トリチウム以外の62種類の放射性物質を除去することが、技術的には可能だ。

しかし、ALPSを通した処理水にはトリチウム以外の放射性物質も残っている。全体の8割以上で放出基準を満たしていない。

貯蔵の基準は満たしても、より厳しい放出基準に達していない水が多い、ということだ。

東京電力は、タンクに貯蔵するための基準達成をまず目指したことや、ALPS運用当初の不具合などが、その理由だと説明している。そのうえで、環境へ放出する場合は、処理水をもう一度浄化処理(2次処理)し、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り減らす方針を示している。

  • 政府関係者や東電は処理水を海洋放出したい
  • なぜなら2022年には処理水を保管しているタンクがいっぱいになる
  • しかし、処理水の8割以上で(海洋)放出基準を満たしていない

だったらさっさとALPSを増設して、再度の浄化処置(2次処理)して、タンクの中の海洋放出できない8割の処理水を、すぐに放出可能な処理済水にすべきじゃないですか?そうすれば、問題はトリチウムだけに絞れます。

今は①処理水内のトリチウムの問題と、②処理水内の放出不可能レベルの放射性廃棄物の問題、この二重構造になってる。問題を解決するためには、まず問題を一つに絞ることが定石でしょう。それもやらないで、海洋放出を進めるような議論だけしていてどうするんですか?

まさかこのまま何もせず、「タンク一杯になっちゃった。 環境に放出する際の基準には達してないけど、背に腹は代えられません。大量の海水で薄めれば大丈夫だから、このまま放出しまーす」って言わないだろうな?

その辺の対応が場当たり的だから、言っちゃ悪いけど、韓国にも付け入るスキを与えるんだと思うね。

追記:参考まで

海洋へ・大気へ・併用も…原発処理水「放出」で3案議論

政府は23日、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水を浄化した処理水の取り扱いについて、タンクに保管する処理水の放出を前提に、処分方法や実施時期を決めるよう求める有識者会議(委員長=山本一良・名古屋大名誉教授)の報告書案を公表した。実現可能な放出方法として「希釈して海洋に放出する」「蒸発させて大気に放出する(水蒸気放出)」「併用」の3案を示しており、同日の会合で議論する。

読売新聞

処理水を放出可能レベルに達してから放出すること、その検証は誰が責任もってするのか、そこもきちんと議論ほしいですね。後でそのあたりは「記録の保存期限を過ぎて破棄したのでわからない」とならないよう。