直下型地震について 【既往記事まとめ】

大阪でも地震がありました。このブログでも時々地震の記事を何度か取り上げましたが、記事が分散して分かりにくいので、これまでの記事を一つにまとめました。したがって再掲ばかりですが、確認の意味も含めて、どうぞ。

緊急地震速報は、本震前に届かない場合もある・・・「地震の揺れ」に先駆けて来る地震波を捉えて瞬時に警報を出すのが緊急地震速報。だから震源が「直下」に近い位置では、地震波と揺れが同時に来て、警報が間に合わない可能性があります。西尾で直下型地震・震度4を体感・震源はどこ?

直下型地震の震源となることの多い活断層の定義とは・・・「現在の地殻内部の力の状態のもとで活動してきた断層」

活断層の活発度・・・断層のずれ量で表す。A級活断層 1000年あたり1m以上、B級活断層 1000年あたり0.1m~1m未満、C級活断層 1000年あたり0.01m~0.1m未満
活断層の有無は完全に分かっているか・・・残念ながら、分かっていない。活断層の比率は、A級1に対しB級10C級100の比率で存在するはず。実際、A級活断層約100に対し、B級活断層約1000。しかし、C級活断層はわずか数百しか見つかっていない。つまり、まだ見つかっていないC級活断層が多くあるはず。

したがって、いまだ未知の断層が、直下地震を引き起こす可能性だってあるのです。

親記事 三河地震と深溝断層 島根県での地震は「未知の断層」が原因かも

参考:国土地理院が発行している活断層図のQA

Q.活断層図には、その地域に存在している活断層がすべて表示されているのですか?
A.
調査時(図作成時)に確認された活断層は、すべて表示しています。しかし、図で緑系統の色で塗られた部分(沖積低地、扇状地)は、川が運んできた土砂などによって最近数千年間に形成された比較的新しい土地ですので、調査で確認できなかった未知の活断層が埋もれている可能性も残されています
また、最近の地層に覆われていなくても、規模が小さな活断層は活動しても地表に明瞭な痕跡を残さないことがあり、一方で規模が大きくても地表にはっきりとした痕跡が残らない場合も知られており(2000(平成12)年鳥取県西部地震や2008(平成20)年岩手・宮城内陸地震など)、活断層図に表示されているものがすべてであるとは言い切れません。

天災は忘れた頃来る・・・阪神大震災と東日本大震災。どちらも起きた時は「まさか神戸で大規模直下型地震が!」「まさか東北一円にあれほどの大津波が!」って言われていた。後になってみれば、識者が「警告は発せられていた」って言ってますが。

小さな地震が多く発生すると、地震のエネルギーだか歪が解放され、でかい地震は来ない? その考えは間違い・・・M8の地震エネルギーは、M2の地震の100,000,000倍(10 9)。だからM2クラスの地震が頻繁に来ても、大きな地震のエネルギーが削られて来なくなる なんてことは、残念ながらありません。(東日本大震災はM9.0)

熊本地震の事例として、現在の住宅の耐震基準でも震度7が2回来ると、住宅が重大な被害を受ける可能性がある・・・現在の基準(建築基準法)では、震度7の地震が2回来ることは想定していないから。

当然、建築基準法違反、施工不良、基準の緩かった時期(昔)に造られたもの(塀、住宅、橋梁など)はさらに注意が必要。個人所有の物もあるので、最終的には個人がわが身を守るしかないかと。

南海トラフ巨大地震の被害推定 学会提言・・・もう一歩がんばろう!

「国難」被害1410兆円 南海トラフ巨大地震の推計 土木学会が報告書

西日本を中心に大きな被害が想定されている南海トラフ巨大地震が起きた場合、道路など公共インフラの損害で長期的に1410兆円の被害が生じるとの推計を7日、土木学会が公表した。学会は「国難」レベルの災害になるとして、対策の強化や都市機能の分散を進めるべきだとしている。

東日本大震災と、それに続く復興の7年間を見続けてきた我々にも、もし南海トラフで巨大地震が起こると甚大な被害が生じるんだろうな と言うことは分かっています。が、それが定量的な被害推計って形で出るのは、大事なことだと思います。

この新聞記事は「土木学会の提言では15年以内に有効な対策を進めれば、南海トラフ巨大地震では509兆円の損害を防ぐことができる」と結ばれています。

新聞を読んだ読者は「じゃあ早くその対策をやれよ!」と反応すると思うんですが、まずはその内容をよく読んでみましょう。 なかなか突っ込みどころ満載なんで。

(詳細は新聞記事には書かれていません。土木学会の概要報告書を読みましょう)

代表例として、南海トラフ地震について、僕が主旨だと思ったところを抜粋しました。引用はすべて上記の概要報告書です。

対策そしてその効果の推定も堤防、道路等公的インフラストラクチャーの整備、増強に限定している。

・様々な公共インフラ対策で、南海トラフ地震の経済被害(間接被害)を3分の1から6割程度、軽減できることが示された。

・巨大災害発生時までに各対策が「間に合う」ためにも、それぞれの災害発生確率を踏まえて、「15 年程度で完了」することが必要であることが示された。(南海トラフ地震 の経済被害は1,240兆円 。公共インフラ対策として道路,港湾/漁港,海岸堤防,建築物耐震強化に38兆円以上の対策を行うと、南海トラフ地震の経済被害を509兆円減らすことができると推定。)

検討したのが「土木学会」だから当然なんだけど、そしてインフラの耐震の重要性は分かるけど、

「減災対策として検討したのは堤防、道路等公的インフラストラクチャーの整備、増強に限定。結論としてそこに15年で38兆円の資金投入して対策すべき」 って、有効な提言なんだろうか? これだけでは、我田引水(土木業界に金をよこせ!) と言ってるようにしか聞こえないんで、残念!と思うわけです・・・。

15年で38兆円の投入が必要とするなら、年間2.5兆円の資金投入が必要になる。じゃあまず、その投入余力はどこから持って来よう?

問題)下の予算は2018年度の日本国の当初予算です。2.5兆円/年の投資は、国だけでなく地方自治体の投資も含むので、国の負担を1兆円/年とします。下の当初予算からこの1兆円をどこから捻出するか答えなさい。また、下の参考資料も活用しなさい。

左:収入 右:支出   出典:財務省パンフ
我が国の人口の長期的推移 国土交通省資料

収入の部:人口激減、高齢化が進む中で、税収が増えるのは期待できん。消費税をあげれば増えるけど、それは基本社会保障費に回るんだよね。公債金って実質借金だし・・・

支出の部:少子高齢化が進む中で、社会保障費や文教費は削れんだろ、地方切り捨てもできんし、防衛費も増える一方だしな。その他の内訳はよく分からんが、これから国債費も増えるだろうし、なかなか1兆円なんて・・・。

難問ですね!あのですね、予算編成時に「首相枠」ってのがあるんですね。時の政権が「政治主導」や「首相の意向」として費用を分配する枠です。(正確には予算の特別枠)それが、頑張ってたかだか1兆円なんです。それを巡って各省庁はそれに向けたいろんな政策を競い、いろんな省庁に配分されるんです。だから「南海トラフ巨大地震対策費」として特定の目的に1兆円を生み出すって、もう日本の予算枠ではたぶん無理なんだと思います。それくらい、予算編成の自由度って低いってことだと思う。

まあこれは妄想ですから、なんとか1兆円「南海トラフ巨大地震対策費」ができて、各地方自治体にも同様に頑張ってもらい、2.5兆円/年の「南海トラフ巨大地震対策費」ができたとします。で、それを全額「公的インフラストラクチャーの整備、増強」に限定させる必要性はあるのかな?

土木学会による提言の一番の問題点はここだと思うんです。

インフラの整備、増強以外にも有効な手段はあるんじゃないでしょうか?例えば・・・危険個所に立つ老人福祉施設を安全な場所に移転させる。拠点病院の機能をより災害に適したものに改善する。インフラ整備ではなく、危険個所に暮らす人々に直接資金を渡して、より安全な場所の空き家を利用し住んでもらう※とか。

まあ、これらの例がどれほど有効なのか知りませんけど、ともかく土木学会は、インフラの整備・増強案と、それ以外の代替案との比較検討をしていないので、インフラの整備、増強を優先すべき必然性が分からないんですね。

ところで、土木には「土木計画学」という分野があります。土木計画学とは「空間、社会基盤施設およびそれらにかかわる土木事業において発生する問題内容を発見整理し、これに関係する社会基盤施設などを対象に、事業の主体者(意思決定者)が計画の目的を検討し、目的達成に必要な多くの手段(代替案)の中から、合理的かつシステマティックな選択行為を遂行する一連の行為と、その支援手続きおよびそれらにより得られる成案である(wiki)}と定義されています。

目的達成に必要な多くの手段(代替案)の中から、合理的かつシステマティックな選択行為を遂行する土木計画委員会?の知見を使わずして、世間にインフラ整備の必要性を訴えるのって、無理じゃね?

ただ土木学会はオオカミ少年だな と誤解され続けるだけじゃないかな?それは学会も、世間の人もみんな不幸だと思うんです。

まあ土木の分野外との比較は「土木学会の仕事じゃない」と言うなら百歩譲るとしても (僕は、それだと「目標達成」できるとは思えないけどね)

「国難」とまで言う「南海トラフ巨大地震対策」は、例えば「整備新幹線の整備」や「ダムや高速道路の新設」に優先する喫緊の課題だから、それらを一時中止して地震対策に舵を切るべき と言う比較検討と提言は、学会内部でも十分できたんじゃないかな。そのうえで、「学会はここまで決意しましたから、他からの資金融通をお願いします」と来るべきでは。

参考:古い資料だけど、建設業ハンドブック2015によると、2013年度の建設投資52兆円のうち、新設工事が37兆円。維持工事が15兆円。 これは民間投資を含んでいるけど、政府(国+地方自治体)投資についても、ほぼこの比率だと考えれば、新設工事をやめて「維持工事」と「南海トラフ巨大地震対策」に特化すれば、かなりの対策は進むんじゃないだろうか・・・

※そもそも、これから急速に人口が減少する社会で、総合的に見てインフラの整備、増強って持続可能なんかね? もちろん、人口密集地で必要な箇所はあるとしても。