いま、「103万円の壁」撤廃が話題になっています。簡単に言うと、所得税の控除額を上げて、国民の所得を増やしてやろう(実質的な減税)という話。ちょっと前に記事にしました。
んで、たぶん「103万円の壁」撤廃派から、話を複雑にしてうやむやにしたいがためだと思うんですが、「壁は103万円だけじゃない、106万円の壁もある」 みたいな声が上がりました。
普段動きの遅い役所が、恐るべきスピードで「106万円の壁(厚生年金対象額)」撤廃の案を出しました。
厚生労働省は、パートなどで働く人が厚生年金に加入する要件の見直し案を正式に示しました。「106万円の壁」の撤廃にむけ、年収要件を見直すよう提案しています。
今の世間の流れを読めば、「壁撤廃」といえば「所得増」方向の話だと思うじゃないですか。ところが、厚生労働省が提案したのは、「所得減(社会保障費徴収増)」方向の話だったという。このタイミングで、よく言った!すごい!としか言いようなし。
厚労省はきょうの審議会で、働き方が多様化する中、厚生年金への加入を広げる必要があることから、51人以上としている企業規模の要件の撤廃を提案したほか、年収およそ106万円以上としている賃金についても、「最低賃金の引上げに伴い、賃金要件を上回る地域が増えている」として見直す案を示しました。 また、5人以上の従業員がいる個人事業所も全業種で加入の対象とするよう提案しています。
同上
はい、この霞が関文学のメインテーマは「厚生年金への加入を広げる必要がある」ですよ。「厚生年金への加入を広げる」とどうなるか。「今まで厚生年金を払わなくて良かった人も、払う必要が出てくる」ということです。 ここ、テストに出ますからね。
社会保険料は後で自分にも帰って来るのだから、増税とは少し性質が異なるのは確かです。でも現時点の所得減になることは一緒。今の流れで、所得減の方向になることを「壁撤廃」って言いますかね。「焼け太り」っていうんじゃ?
あと、これ意味わからん。
・・・現在、事業主と従業員で折半としている厚生年金保険料の負担割合について、事業主と従業員の合意がされれば事業主の負担割合を増加させる案を示しました。
企業にとっては超優秀な人材の引き留め策だと思うんだけど(「普通」レベルの従業員にこんな手厚いもてなしする非合理的な事業主なんていないだろ)、それなら「老後の備えを手厚く」なんていう不確かな未来の話じゃなく、今確実に貰える「その分給料上げます」が正しい選択だと思うね。なら厚労省の口出しいらなくね? 何が狙いなんだ?
あ、そこまでなりふり構わず、より多めの厚生年金保険料の負担をお願いしたいと。つまり厚生年金の収支バランスが大変悪化してます ってことか。うん、納得です。
んま、どこかの頭のいい役所が、少し頭の悪い役所に「やっちゃえ日産!」とけしかけたんでしょう。話を複雑にして、頭の悪い国民が混乱し、最初の目的を忘れるように。
まとめると、こういう話だな。
・「103万円の壁撤廃」=控除額増=実質減税→所得増(所管:財務省)
・「106万円の壁撤廃」=社会保険料増 →所得減(所管:厚労省)
バカにされたものだなあ。 騙されないようにしないと。
追記。少子高齢化の中、正直「厚生年金への加入を広げる必要がある」のは事実で、認めたくはないけどいずれやらなければいけない改革だとは思う。けど、今、やるべきは現時点での所得増をどうはかるか で、それに水を差すような議論は、今取り急ぎでやる必要はないんじゃね?という話。 景気は「気」だから。