その1からの続きです。
貰った資料は、木杭を打つ工法、柱状改良をする方法(土とセメントを混ぜて柱を造る 以下セメント系)、鋼管杭工法の3つでした。費用を考えなければ鋼管杭が最も良いのですが、費用を考えると我が家への適用は考えていませんでした。
で、地盤会社さんを訪問。技術系の方が相手してくれました。(以下「地」とする)
僕「木杭の支持力が、セメント系を上回る結果であることを資料で読みました。良質な木ならそうでしょうけど、木は工業製品でない天然物ですから、当然品質にばらつきがありますね。 意地悪に見ると、良質な試験体だからセメント系を上回ったのかもしれない。そのあたりの品質管理はどうされていますか?」
地「会社の試験地で実際に試験杭を打ち測定したところ、既存工法と同程度の支持力が確認されています。」
僕の理解(・・・質問の回答になってないと思うけど・・・根拠資料となる数値を採取する「試験」なら、当然多くの杭の中から良質の杭を選定して実験し、そのなかからランダムに「試験杭」を選定して支持力測定をするな。 ・・・でもそのレベルの「良質な杭」が、僕の家に使われる保証は何もない・・・。セメント系なら、使った材料から試験体を造って強度試験やることも可能だけど、木杭だと一部切って試験体にすることはできないしな・・・)
僕「木は腐りますね。 我が家は地下水位は高いので、水位以下の部分は大丈夫だと思いますが、心配なのは地下水位以上の部分です※。空気に触れ、水に触れ、長期的には腐る可能性が考えられますが点検はできませんね、どのように対策されているのですか」
地「防腐剤を加圧注入しています。実際の試験地で20年。実験室の実験で60年相当の試験をしており、問題は出ておりません。」
僕の理解(加圧しても、木材に完全に薬剤を注入するのは、簡単じゃないよね。それに薬剤注入しているから大丈夫って、あんまりうれしい答えじゃないな。地下水位から考えて地下水位以下では空気が遮断されるので問題はない。地下水位以上は基礎コンクリートになるので、問題なし。念のため防腐剤を加圧注入しています」とか言ってくれると嬉しいんだけど・・・そもそも点検できない箇所だから、薬液をしみこませ耐性を持たせた材料より、そもそも腐らない材料が適してるんじゃない?)
という感じで、あんまり要領を得ない対話が続き、木杭へ乗り気にはなれなかった・・・
僕「木杭工法がわが家にベストな方法だと思いますか?」
地「それはお客様によっていろいろですね。私はこの工法が良いと思いますが、説明させていただいて、納得して木杭を選ばれる方もいらっしゃますし、やっぱり木では心配だ ということで、柱状改良工法を選ばれる方もいらっしゃいます。それぞれです・・・」
僕(「豊田真由子衆院議員の気持ちになってきたよ・・・」) 「はい。じゃあ柱状改良工法で見積もりください。予算見て決めます。」
見積もりは、200万円+残土処分費でした。設置本数と長さは木材と変わらず、柱状施工の範囲はΦ500でした。
僕メール)「柱状改良工法でお願いします。ただし、試験体の強度を書面で報告すること。施工現場は土中に水分を多く含むので、水セメント比をどのように設定するか教えてください。」
(注:土中水分が多い=セメント固化は水和反応なので、水分が多ければ必要となるセメント量は多くなります)
地メール)「試験体は一軸圧縮試験で実施します。改良体については含水比が高いので通常300kg/m3のところ、350kgに増量します。 水セメント比は基本60%ですが施工前の試掘で土質と含水状況を確認し、調整することをすべての案件で実施しています。 施工後報告書に写真を添付して報告します。」
僕)(水セメント比の設定は計算だから写真撮影しても意味ないがな)まあ言っても伝わらないだろうし、試験実施するから、それでよしとするかぁ・・・)
施工後、大工さんからもらった地盤改良工事完了報告書で、圧縮強度は問題ありませんでした。ただし水セメント比を決める現場試験の写真はなかったし、水セメント比は特に根拠は示されずぜーんぶ60%でした。天気悪い日が続き現場ぐちゅぐちゅの状態だったけど・・・やっぱりねえ・・・つーか、下請けに任せて、君たち現場へ来てたのかな?もし来たら一番見るのはそこだろ?
僕)(完了後大工さんに)「基礎より上は、施工中僕も構造体の工事は見ていたから満点なんだけど、地盤改良は正直不満が残ったよ。自分はどうしても休めず見てられなかったし」
大)「私もあんまり改良の現場って経験ないんで、一本目は当日見てました。問題はなかったと思いますけど・・・」
僕)「うん・・・ところで、大工さんは地盤改良以外すべて地元の専門業者とチームを組んでてうまくやってるよね、その中の基礎屋さんで地盤改良工事ってできないの? 地元の専門業者なら、地元での評判から逃れられないので、一定の安心材料になるんだけどね」
大)「地元の基礎屋さんでもできるんですけどね、基礎を含む主要部の瑕疵担保責任の関係で保険法人の保険に加入しなきゃいけなくて、それが地盤改良は大手五社くらいから選ぶ形になっているので、あんまり選択肢がないんですよ」
最後の大工さんの言葉がどこまで事実なのかはよくわからないし、そこまで調べるすべもないのですが。でも、もしほんとにそうなら、 瑕疵担保10年という保険があるが故の、モラルハザードみたいな現象が起きてるんじゃないでしょうか?
もっとも、僕はかなり疑り深い見方をしていますけど。それでも、構造計算偽装問題や、杭偽装問題があった以上、注意深い施主はそうならざるを得ないと思うんですよね。あとで何か問題があっても、簡単には対処できないところだし。
でも、(ほんの一事例を一般化して申し訳ないけど)こういう対応を取ってたら、この業界、信頼回復はできないと思います。それは誰も得をしない負のスパイラルです。
地盤改良会社だけの問題じゃありません。工務店(大工)主体の住宅建築では建築士の関与は申請図面書きが実態で、それ以上の関与は微妙なところ。(料金も安く抑えられていますからしょうがないんだけど)。それを助けるような法律とその運用状況。そのうえで設計に携わる人が地盤には弱い、地盤改良会社もきちんと説明できているとは言えない状況。
いろんな課題があり、一気に改革は無理だと理解はできますが、地盤改良工事完了報告書の施主説明を地盤改良会社(もしくは設計士)が説明し、対策が十分に行われたことを施主に納得させる ことくらいはしても良いと思いますし、それに費用が必要なら、僕は喜んで払います。
結局、地盤改良工事完了報告書は、誰も説明してくれなかったんだよね〜。
このあたり、土木と建築の知識があって、地形から見た防災の知識がある第三者が、セカンドオピニオンみたいにしていたら、そこそこ需要があると思うんですよね。 あわせて水害で浸水するリスクとかアドバイスしたり・・・ 住宅のリスクアドバイザー みたいな?
あ、僕ってそこそこ向いてるんじゃないかな(笑)。土木、防災の経験あるし、不安な施主の気持ちもよくわかるしさ。 あと建築の勉強しないとダメだけどね。
※昔聞いた話だけど、電信柱が木だった時代、まず腐るのは土の表面近くの部分から。木材腐朽菌の繁殖条件は、適度の水分、温度、酸素、栄養分だから、ここの部分が一番やられやすいのはまあ分かるよね。