そろそろ、西尾の有名どころのお寺はだいぶ回ってきました。
寺院の建物を「伽藍(がらん)」といいますけど、伽藍の中で面白いな と、僕が思ったのが「鐘楼門(しょうろうもん)」です。
「鐘楼(しょうろう)」ってのは、寺院内で梵鐘を吊し、時を告げる建物です。いわゆる「鐘つき堂」。普通は独立した建物なんですが、それと「門」が合体したのが「鐘楼門」です。普通は二階建てで、一階が門、二階が鐘楼になっています。
この建物、考え方が合理的だと思うんですよね。
鐘楼は鐘を鳴らして時を告げるわけだから、鐘が高い位置に設置するほうが、音を遠方に届かせるには有利です。だったら、建物は一階建てより二階建てにして、二階に載せたほうが合理的でしょう。お城でも、時を告げる太鼓を高い位置に設置する目的で「太鼓櫓」を設置することがありますね。
どうせ一階は空いてるんだから、そこを門にして合理化しよう! そうすると、鐘楼と門と本来二つ建てる必要がある建物が、一つに減らせます。さらに、門って通路だから、大抵は寺の中央動線上にあります。
参拝者が鐘を撞く場合、通路の上に鐘があるので、「鐘楼はどこか」迷わないし、お寺さんが撞く場合も、移動距離が短くて済む。(移動動線がスムーズ)
何より、二階建ての見栄えのする門ができるんです! だから・・・なのかは分かりませんが、市内でも古刹とか大寺院に多いですねえ。
(そもそも「二階建ての建物を立てて良いか」という問題もあったかも。※)
市内にあるお寺で鐘楼門のあるところを挙げてみましょう。
ね、どのお寺も見栄えがいい。また、後正面に本堂。中心に鐘楼門、前面に山門を配置する「いい場所」にあるでしょ。
ん? これらのお寺の伽藍配置、基本はみんな同じですねえ。
四つのお寺はすべて「浄土宗西山深草派」ですね。たまたま、この宗派のお寺だけ、門が後世に残っているってことも考えづらいだろうし、この宗派の大規模なお寺は、山門ー鐘楼門ー本堂 って伽藍配置にしていたんだろうか?※2 修正アリ
(西山深草派の本山は京都の「誓願寺」です。このお寺に鐘楼門はなさそうですが、明治期に「新京極通り」を造るため大規模に境内を収用されているそうで、現状は参考にならないかな・・・)
それとも、これらの門が造られた時期が一致していて、たまたまそういう建築様式が流行っていたんだろうか? うーん。
2月8日追記:海蔵寺の鐘楼門の写真を取りに出かけたのですが「カメラを忘れて、陽気なサザエさん」でございました。しかも鐘楼門じゃなくて、楼門でした(別個に鐘楼がある)訂正させていただきます。
※2 2月8日追記:コメントをいただきました。八王子に桂福寺という鐘楼門のあるお寺があるのですが、そのお寺は「曹洞宗」だそうです。つまり、この伽藍配置が「浄土宗西山深草派」独自の物ではないということね(笑)。 鈴木様、ありがとうございました。
※「建物高さの歴史的変遷」によると、
701年に制定された大宝律令の営繕令には、楼閣を建てて人家を覗くことの禁止と、宮中内の建物の建設にあたり日照を確保することが規定されていた。・・・
中央集権的な封建体制が整備されていくにつれて、士農工商による身分格式が重んじられるようになり、1649(慶安2)年に3階建が禁止される。その後、度々規制が強化され、享保の改革では、「家作り、なるべき成(棟高)はひきく(低く)建て」ることを市中に要請し、さらには1806(文化3)年には、棟高が2丈4尺(約7.2m)に制限された
とあります。