最近、縁あって?檜の間伐作業に関わりました。
倒した檜(ひのき)の木を用材として使うには、皮むきが必要になります。ってことで、檜の皮むきをやってみたのだ!
これが原木。木を倒して枝を払った後、用途に応じ2~3mに輪切りにしてあります。この皮を剥きませう。
取り出したるは「鉈(なた)」。これで木に縦に筋目を入れ、皮と身?の隙間に鉈をこじ入れ、てこの原理で少しづつ剥がします。ある程度剥がれたら、ヘラみたいな道具を差し込み、バターを薄く切るようにビローンと引っ張ると・・・
こんなかんじで皮がビローンと剝けます!
ここで理科の授業。この写真では良く見えないのですが、木の皮と身の間には、根から吸い上げた水を枝葉の先端まで届ける「道管」があり、伐採直後はその水分に溢れたこの部分はヌメヌメで、簡単に皮が剥げるのです。(「道管」という知識は、もちろん僕もあったけど、手を置いたらつるっと滑るほど水分に溢れ、その為皮がすんなり剥けるなんて、体験しないとわからないな)。
伐採後時間が経つにつれ水分が蒸発するので皮が身に吸着し、だんだん皮剝ぎが困難になっていくのです。すなわち「切ったらすぐ剥け」。
ってことで発生した檜の皮がこちら。枝や節がなければ、長方形の長い皮が手に入ります。この皮何かに使えそうですが・・・
と昔の人も思ったらしく、この皮で屋根を葺くことを考え出したのです。これを「檜皮葺(ひわだぶき)」と言います。檜の皮を「檜皮(ひわだ)」と言うんですな。
「檜皮葺」を使った建物としてパッと思い浮かぶのは、奈良は室生寺の五重塔。 山中の森に囲まれた場所に、小さな五重塔がひっそり建っています。
建物の建材は檜、屋根材は檜皮です。おそらくその地に生えていた檜を切り出し、皮まで建設材料に転用したのでしょう。外(下界)から運ぶ資材を最小限にし、懐(運搬賃)にも環境(ゴミ減、運搬影響減)にも優しく、周りの木々と調和もバッチリな「最先端エコ建築手法」。檜の木自体も耐久性に優れているっていうし、完璧!
てか、檜皮を葺く屋根は出雲大社本殿、厳島神社本殿、御所紫宸殿・清涼殿などに使われる、大変格式の高い屋根材でした※。
西尾市内では、金蓮寺弥陀堂(国宝)が檜皮葺です。
wiki「檜皮葺」曰く。「世界に類を見ない日本独自の屋根工法」だそうで・・・そりゃまあ、檜は日本と台湾にしか生えてないから、日本独自で間違っちゃいないけどな(笑)。
檜皮は断熱効果が高く、湿度の調整にも優れているので、日本の建物には非常に適しているそうな。特に湿気の多い山間に建てられることの多い寺院の建築には、重宝したことでしょう。
てなことを考えているうちに作業終了。あ、この写真で、水分で表面がツルツルなの分かりますか?
「モトは白く輝く檜の建材と、屋根材である大量の檜皮を手に入れた」( ´艸`)
昔は、檜皮を採取する人:原皮師(もとかわし)という職業があったようです。
ただし、実際の檜皮採取は「立木から皮を剥ぎ、採取後再生を待つ。再生した皮が高級品」だそう。ってことは道管までは向かないんだな、きっと。(道管まで剥くと、立木が枯れてしまいます。その性質を使って、皮むきを省力化した間伐に利用する方法もあるそうな いろいろ考える人がいて、おもしろいですなあ。)
さらに調べてたら、 昔は檜皮を 採取する職人:原皮師(もとかわし)という職業があったそうです。
ここで一つ大事なことを。建材として使うにしても、屋根材として使うにしても、枝がある木は材木としての価値が大幅に下がります。建材としては「節」になるし、皮も枝の部分が「穴」になりますから、屋根材としては使えなくなるのです。
つまり、檜を材木として使うには「枝打ち」作業が必須。それをやらない木材は、材木としては使えないのです。 写真の木は良い位置を選んで撮影していますが、この林も枝打ちはしていませんので、材木としての価値は低いな。
まあ、うちは建材にするわけじゃないんで、使える部分は皮を剥いてこのまま放置して乾燥させ、乾燥して軽くなったら山から下ろして加工することになるでしょう。
しかしまあ、今の時代、山の中に分け入って、一本一本の檜の木の枝打ちをやるほど人手も予算もないご時世でございます(てかすげー重労働!)。
日本は世界に冠たる森林国であり、はなはだ残念なことですが、少子高齢化、東京圏への人口集中が進むこの国では、檜皮葺きなんてのは持続不可能な伝統技術になりつつあるような、気がします。
※よく似た屋根材に「杮葺(こけらぶき)」があります。これは檜を含む「木材の薄板」を用いるものです。実相寺の釈迦堂は「杮葺」です。
檜皮葺きも杮葺きも、細長い材をずらしながら下から平行に重ねて並べ、竹釘で止める施工法で屋根を葺くそうです。これも人手と予算ががかかるなあ。