木元竹末(きもとたけうら)

薪割のため木を割るとき、あるいは竹利用に竹を割る際、言われてきた言葉です。「木を割る際は根元から、竹を割る際は先端から割れ」 という言葉です。

「竹を割る際は先端から」  確かにナタを使って竹を割る際、先端から割るか根本から割るかで、明らかに割れやすさが違います。上から割れば割れ目がきれいで、ささくれが出にくい。

ところで、竹の根元や先端って、どうやったら分かるの? もちろん枝の付き方を見れば分かるけど、竹を割る際って大抵枝払いしてあるよね?

はい。節を見ましょう! 次の2枚の写真をよく見て考えてみましょう。(上下方向を正しく撮影しています)

孟宗竹
真竹

分かりましたか? 孟宗竹が分かりやすいんですけど、節の出っ張り部分と幹部分が、上部は凸と出っ張っているのに対し、下部は出っ張りがなく、スムーズなカーブで幹部に擦りついています。指で節の上下を触ってみると、まさに一瞭然。引っかかりがある方が上です。

真竹の場合、節の上下ともすりついてて、見ただけでは分かりにくいんですけど、やっぱり節の上下を触ってみると上から下に撫ぜたときは引っ掛かりを感じますよ。 ちなみに、真竹の節は2本線、孟宗竹は1本線ってのも覚えておくといいでしょう。

これって雨払いを考えてんのかな。幹に水滴が長くついてると、湿って腐ったり苔が付くリスクがあるから、ちょうど家の軒みたいになってる とかね。

「木を割る際は根元から」。うーん薪割する時って、大抵どっちが上か下か分からないもんな・・・。とりあえず割ってみて、割りにくかったら反対にする ってことはままやりますんで、たぶん割れやすい方向はあるんだと思います。製材業界でも「木を割る際は根元から」っていうらしいけれど、きっちり解明はされてない・・・のかな?

木をナタで割るときは、元口を頭にして割り、竹は末口を頭にして割る方が割れやすいとよく言われます。このことを詳しく教えて下さい。

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問は我々には難しかったので、森林総合研究所の能城修一先生にに助け舟を出して下さるようお願いしたのですが、以下にございますように、はっきりと分かっていないらしいです、お役に立てなくて申し訳ございません。

能城先生からのご返事
私の周辺にいる製材の専門家とか,他の木材加工の専門家にもあたってみたのですが,残念ながら科学的に実証された報告等は見あたりませんでした。製材の専門家も,経験則として,木は元口から割るものであると言っており,木理等が関連していると思うのですが,木材組織の方面でも,こうした検討はされておりません。竹の割り方も,維管束の走行に関連していると思いますが,実証はされていないようです。   

日本植物生理学会のQAより

「木材組織の方面でも,こうした検討はされておりません。 竹の割り方も,維管束の走行に関連していると思いますが,実証はされていないようです。」って、マジ? 維管束の走行に関係しそうってのは、シロートでも想像がつくんだけど、実証はないのかあ。割れやすさは木材の構造材としての価値にも大きく関わってくると思うんで、だれか研究してよ。

まあ、身近な問題で、はっきりとした答えの出ていない問題っていろいろありますよね。例えば、竹ってなんで節があるんでしょう? 

竹を割ってみると、節の無いところは簡単に割れるのに、節があるところは簡単に割れないです。それに生息環境をよく見ると「竹群落の中で効率よく日光を浴びるには、少しでも周りの竹より早く高くなる必要がありそう。なので、竹は自身を資源最小(可能な限り中空)で、頑丈な構造体(高く背を伸ばせる丈夫な幹)となるよう進化してきたのだろう」と想像はできますが。

ここまでは、直感的に多くの人が推定してきたことだと思いますが、その理論(仮説)を科学的に解明するとどうなるかというと・・・その論文は2016年に発表され、米国物理学会の編者おススメ論文になり、日本土木学会論文賞を受賞しているのです。

山梨大学や北海道大学、熊本県立大学などの研究者で構成される研究チームは2月11日、野生の竹がなぜ節をもつのか、その謎を科学的に解明したと発表した。

同成果は、山梨大学 環境科学科の島弘幸 准教授、北海道大学の佐藤太裕 准教授、熊本県立大学の井上昭夫 教授などによるもの。詳細はアメリカ物理学会発行の学術雑誌「Physical Review E」に掲載された。

竹は中身が空洞で、ところどころに節を持つことが知られているが、多くの植物の中で竹だけがこうした特徴を有していた。今回、研究チームは、野外調査で得た測定データと、構造力学理論に基づく数理解析を活用して調査を行った結果、互いに隣り合う節と節の間隔が、ある一定のルールに従うよう絶妙に調節されており、結果として、野生の竹が「軽さ」と「強さ」を併せ持つ理想的な構造を「自律的に」形成していることを突き止めたとする。

なお、今回の論文は、同誌の注目論文(Editor’s Suggestion)に選ばれているが、島准教授によると、「同じような推論は過去にも提案されたことがあったが、竹林の測定データと、理論的な考察をもとに、『定量的に』その推論を検証したのは我々の成果が初となるはず」とのことで、そうした研究の視点のユニークさと、物理学・工学・森林科学を跨ぐ学際的な研究手法が高く評価された結果によるものだといえる。

どうして竹は節をもっているのか? – 山梨大などの研究チームが解明

自然界に生息するタケは中空円筒であり,かつ節と組織構造を有する植物である.これは適者生存の厳しい環境下でできるだけ強く,高く生育するためにタケ自身が進化の過程で獲得してきた形態であり,力学的に極めて高い合理性を有すると考えられる.本研究は,タケの生態を構造力学的に紐解き,節配置の高さ方向分布と維管束の横断面内分布の不均一性が織り成す力学的優位性を実証するものである.この研究により,曲げを受けるタケの節配置による断面偏平抑制効果を剛性に関する異方性を考慮した無次元パラメータにより記述し,タケが外力により生じる曲げモーメント分布に合わせて断面偏平を効率的に抑制していること,また横断面内維管束分布は曲げ剛性を高めるように効果的に配置されていることが初めて理論的に示された

竹の節・組織構造が織り成す円筒体としての合理的な構造特性の理論的解明
土木学会論文集A2(応用力学)

身近な問題で、「たぶんこうなんだろうな」と考えている問題でも、それを突き詰めて定量的に解明できれば、立派な論文になる という好例ですね。もっとも、物理学、工学、森林科学の専門家、それぞれの専門分野だけでは解明は難しかったのかもしれません。(物理学者単独でも、ファインマンとか寺田寅彦クラスなら、解明できそうだけどな。)


投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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