脱穀の終わった田んぼで、残った藁(ワラ)を細かく切って、田んぼに返す作業をしています。

藁を長いまま田んぼに戻すと、長い繊維が残って耕運機に引っかかったりして難儀するので、細かく切るのですね。
機械化が進んだ現代の農業では、この作業はコンバインがやってくれるんですがね。手刈りした場合は長いまま残ってしまうので、写真にある「押切り」という道具を使って裁断していきます。なかなか手間のかかる作業です。
藁は裁断しないで長いまま、畑作用の藁マルチとして使ったり、縄をなったり、稲刈りした稲穂を束ねる「すげ」にしたり いろいろ用途があるんですけど、保存するためにはしっかり乾かさないと腐っちゃうのです。それ用の藁もとってありますが、今年は稲刈り以降雨が多く(しかもしっかり降った)、乾燥度がイマイチなので少し悩みの種です。
とはいえ、今時藁で縄を編んだり、「すげ」を造る用途はあんまりないですよね〜。一番身近でワラを感じるのは、これじゃないでしょうか?

「稲わら」ではなく、「麦わら」帽子ですけど(笑)。
僕は麦わら帽子がお気に入りで、春から秋にかけての野外作業ではいつもこいつを被っています。 利点その一は、この手の帽子(hat)つばの部分が広いので、強い日光を遮る日陰がたくさんできること。そのうえで、「麦わら」制の場合、風通し抜群 なのがいいところ。
布製の帽子(cap)もかぶりますが、こちらはひと夏過ぎると、自分の汗で帽子の内側が「かび」だらけになってしまうのです・・・もちろん使い終わったら風通しの良いところに干しておくんだけど・・・麦わら帽子の場合、わらの部分は全くかびません。内張りの布部分はかびるけどな。
それともう一つ。誰に聞いたか、読んだか忘れたんだけど、人が麦わら帽子をかぶって行動してると、鳥が見ても「なんだ農夫か・・・」と安心するんだそうです。で、安心したところを鉄砲でずどんとやる(ハンターの話だったっけなあ)。 ま、鉄砲は極端ですが、鳥を脅す必要はないですからね。個人的には目立たず地に溶け込むのが好きなもので、愛用してます。
それからもう一つ理由が。僕は以前、土木工事の監督をやってたことがあって、炎天下の工事現場で、安全帽(ヘルメット)の下に麦わら帽子をかぶっている作業員さんをちょくちょく見かけたんです。 ヘルメットをかぶるから、正確には麦わら帽子の頭を抜いてつばの部分だけをつけてるんですけど。 バカの一つ覚えかもしれませんが、彼ら屋外作業のプロが使う酷暑対策「麦わら帽子」に対する信仰みたいなものがあるんす。 シーズン中に新しいの購入して交換しても惜しくないくらい安いし。
以前はちょくちょく登山に行ってたですが、雨の心配が少なければ、麦わら帽子を被って行ってました。理由は上記と同じ。少し背中のザックに干渉して邪魔だし、雨が降るとザックにしまわないといけないんですが。
山で麦わら帽子被る他の利点として、「帽子が他人とかぶることはことはまずない」「登山の玄人に見られるかも(笑)」。 屋久島に遊びに行ったとき、見ず知らずの登山者に「トイレはどこでしょう?」と聞かれました。地元のガイドに間違えられたのね(笑)。「300m手前にあります」って返してあげた!
※本論と外れますが、雨の多い屋久島とか長期縦走に行く場合は、ゴアテックスのhatもあると、雨の時とても便利です。レインウエアの上着には頭を覆うフードが必ず付いているから必需品ではありません。けどレインコート付属のフードと、独立したハットでは頭と首の自由度が全然違います。 雨降りにフードを被るとどうしても下を向いて黙々と「辛いな〜」と歩き勝ちになります。一方、独立したハットだと頭をあげて周りを見ながら登山を楽しむことができるんです。ま、そういう時の景色ってあんまり期待はできないけどな。
夏の工事現場でワラと言えばもう一つ思い出があります。あれは今から20年くらい前になるんですけど、夏によく酷暑を記録する岐阜県多治見市の近くで仕事していた時のことです。 除草作業でシルバー人材センターの方たちが、炎天下の日中、黙々と草取りをされてたんですな。その時、みなさん背中に藁で編んだ蓑(みの)を付けておられたのです。
蓑(みの)は、イネ科植物の藁(わら)を編んで作られた雨具の一種で、雨を防ぐために衣服の上からまとう外衣の一種である。
なお、下半身を覆うような短いものを腰蓑(こしみの)という。
wiki
解説付けたけど、イメージ湧きますかねえ?昔話「笠地蔵」で、地蔵様の数に持参した笠が足りなくて、最後の一体は、おじいさん自身が身に着けていた「蓑」を掛けてあげた話あるでしょ? その蓑なんですけど・・・
まあ、それを見た僕が「そんなの着て暑くないんですか?」って聞いたらば、(やれやれ若い者は何も知らないのだね風に)「何を言っとる。これが一番涼しいんだわ」って。
藁蓑で日陰はできるし、厚さにもよるんだけど断熱性や透湿性はいいはず(例えば白川村の合掌造りの家の屋根は分厚い茅葺で断熱性抜群。茅でも藁でも理屈は同じ)原理的には頷ける。
今なら「空調服」が最善なんだろうけど、電気いるしね。僕はこういう「田舎農家のおばあちゃんの知恵」みたいな話が大好きなんで、「暑中に蓑」がどのくらい効果があるもんか試してみたかったな。安いカッパが普及して、いまどき藁蓑なんて売ってないし、自分自身は造る技を持ってないから、なかなか試すことは難しそうなんだが・・・

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。