地に落ちた?「西尾の抹茶」ブランド

地理的表示(GI)産品として法的に名称が守られている愛知県のブランド茶「西尾の抹茶」が、2月中にも同産品の登録から外れることが1日、分かった。生産団体は手間のかかる伝統的な製法を続けてブランドを守り、高級路線を維持するより、生産コストを下げて安価で拡販する必要があると判断。近く登録の取り下げを農林水産省に申請する。取り下げは制度開始以来初めて。

 西尾の抹茶は愛知県西尾市や安城市が産地で、17年にGI登録された。まろやかな風味を引き出すため、日差しを避ける覆いの下で、時間をかけて茶葉を育てる栽培法が特徴。出荷価格は1キロ当たり3000円を超える高級品だ。
 健康志向を背景に抹茶市場は拡大しているが、伸びているのは同1000円程度の手頃な製品が中心とされる。西尾茶協同組合(西尾市)は「高級品だけでは立ち行かない。安い製品が必要」(幹部)と判断。GI登録を取り消した上で、よりコストのかからない製法で作った抹茶も「西尾の抹茶」として販売する方針だ。

地理的表示、初の取り下げ 愛知産「西尾の抹茶」―高級特化から転換、安価販売も

西尾市は、碾茶(抹茶の粉に挽く前の原材料)の生産において、全国生産量の約20%を占めるトップクラスの生産地です。 なので「 西尾の抹茶」を地理的表示(GI)産品 として知的財産保護の対象としました。こうすることで、登録した栽培法のみを使う茶葉だけが 「 西尾の抹茶」 となり、ブランド化するので高値で取引されることを期待したのです。

が、キロ当たり三千円クラスの「飲用(高級)抹茶」を売りたい供給者側と、チョコレートなどのキロ千円クラスの「加工用(低級)抹茶」を買いたい需要者の間でギャップがあったんですね。

抹茶はブームになりつつあるとはいえ、飲用の需要は一割程度で横ばい。残りの需要は加工用が占め、そちらの生産量は年々需要が増えているそうです。

「抹茶」の製法はそれほど厳密に決まっているものではないそうです。

日本の食品表示で「抹茶」とされるのは、日本茶業中央会による「覆い下で栽培生葉を揉まないで乾燥した碾茶を茶臼で挽いて微粉状に製造したもの」、および「『茶臼で挽いて』という表現は粉砕の代表例を示したもので、他の方法で微粉末にしても「抹茶」と言える」との補足説明に当てはまるものとなる。このため、工業的に粉砕機で破砕した場合でも抹茶と表示できるし、映像はイメージですの断りを入れて人が茶臼を挽く映像を流しても問題ない。

wiki抹茶

なので、お茶(煎茶)を造っている各地の産地が、お茶よりは高価な「加工用抹茶」を造り始め、ライバルを迎え撃つ西尾勢はGI表示のブランドを取り下げることになったとのこと。

 ※ここまで記載は:2月2日中日新聞総合欄3面「西尾の抹茶」取り下げへ の記事を元にしています。

この記事は「取り下げは苦渋の選択だった」って書いてあるんですけど、その分析は甘い!というか、それ商売としておかしい と思うんです。

いくら市場に疎いとはいえ、普通の生産者(供給者)ならGI表示の登録をする2017年以前の段階で

  • 抹茶はブームになりつつあるとはいえ、飲用の需要は一割程度で横ばい。残りの需要は加工用が占め、そちらの生産量が年々需要が増えている
  • 加工用は安価なことが絶対条件

てなことは当然分かってたことです。普通の日本人が日常生活で抹茶を飲むことなんてめったにないし、伝統に凝り固まった「茶道」業界が、老舗ブランドである宇治抹茶から、新興勢力である西尾抹茶に乗り換えるとは思えないです(西尾の抹茶が「最高」品質であるとも聞かないし)。

抹茶を飲む需要を喚起したってのもあまり聞きませんし・・・タピオカがブームになるくらいなら、抹茶でもやり方によっては売れる・・・かな?

つまり現状のままでは飲用の需要は増えません。加工用は増えているけど、高値ブランド化した「西尾の抹茶」に需要を取り込む勝機はあったのでしょうか?

一口に「生産団体」と言っても、西尾のお茶屋も規模の大きい数軒と、小さいままの大多数に分かれちゃっているので、あるいはそのあたり、内部で利益相反が出ていたのかもしれませんね。

あるいは正直な話、どの方向で行くにせよ勝機を見出すのは難しく、「GI表示を取ることで何か勝機を見いだせるんじゃないか」 という願望の下に取得したのかもしれませんね。

農水省の幹部は「シャンパンは厳しい製法を守り続け、今の地位を築いた。伝統を捨ててしまえばブランド力を維持するのは難しい」と述べ、取り下げの動きに対して懸念を示した。

農水省としては、「GI認定をすることで高付加価値商品として高値で売ってほしい」という目的だっただろうから、「安値で売りたいので、認定を取り下げます」って来たら、「今更そんなこと聞きたくな〜い」って、控えめに言って激怒するんじゃないかと。ま、お上の怒りは恐ろしいけど、生産者側にはもう、それを維持する余裕がない という深刻な問題なんだろうな と。

いずれにせよ、もうびぼう策(※)ではうまく行かないことがはっきりしました。厳しい状況ですが、現実と正面から向き合うしかないわけで、もう開き直るしかない、あるいは前に進むチャンスなのかもしれないです。

地元の名産でありますし、前向きに取り組んでいってほしいと思います。

※びぼう策・・・物事を取り繕うために講じる処置、といった意味の語。欠点を隠すための、一時的な間に合わせ、といった負の意味で用いられることが多い。

2月15日追記 

農水省は十四日、愛知県西尾市の「西尾の抹茶」の登録を三日付で削除したと発表した。削除は2015年のGI保護制度開始以来初めて。・・・生産に通常よりも手間がかかり安い価格で販売できなかったため、生産者団体の西尾茶業協同組合が「流通面のメリットがない」として取り下げを要請していた。

2月15日付中日新聞33面(社会欄)の記事

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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