※私的色の強いメモっす。
今はもうないのだけど、昔、筑波大学に「第三学群 基礎工学類 構造工学専攻」という学科がありました。
僕はここの卒業生なんだけど、不思議な名称のため「大学時代に何をやってきたの?」と聞かれても、これまでうまく答えられなかったんです。
他大学の工学部卒業生なら「土木学科出身です」とか「建築やってました」と答えれば、聞いた人はそれぞれイメージを持ってて、説明は不要なんだけど。
まあ、筑波大学と言うのは新しい枠組みで学生を教育をする ということで開学した「変な大学」でしたので、当時の卒業生はそれぞれ皆、説明には苦労してきたのかもしれませんね。
※僕の専攻は、その後他学類に吸収され、名称も整理され「理工学群 工学システム学類 環境開発工学専攻」となっているようです。
が、先日「独断と偏見による 建築と土木の違い」の記事のなかで、機械・建築・土木で学ぶ基礎力学体系の表を描いてみて、ようやくこの専攻が何をしようとしてたか分かったのです。(卒業後二十年経ってやっとかい!)
構造工学専攻は、「機械・建築・土木学科の基礎として学ぶ力学体系を全部履修すること」が専門だったのです。従来の各学科は、基礎力学を習得したうえ、それぞれの応用科目を学習するんですけど、この専攻は、幅広く共通の基礎科目ばっかりやるのが専門。
ちなみに、僕が履修した専門科目をすべて羅列してみます(卒研と実験は除く。×は履修放棄💦)
- 機械力学系(振動学、材料学、制御工学、×機構学、×機械要素論)
- 流体力学・水理学系(流体力学、流体工学 ×気体力学)
- 材料力学・構造工学系(材料力学、構造力学)
- 熱力学系(熱工学、伝熱工学)
- 土質工学系(×土質工学)
- その他(応用数学1ⅡⅢ、鉄筋コンクリート工学、環境工学)
怠惰な学生だったことがバレちゃいます(笑)。
この教育により、どの分野に行っても、基礎は分かる っていう間口の広い学生を育てようとしたんですね、基礎工学だし。今は技術発展のスピードが速く、新しい技術は独習せざるを得ないので、最初から「専門は独習せよ」ってのも、それはそれで一つの見識かもしれないです。
ただ、当時の学系長は、僕ら学生に対して「エンジニア課程を修了したはずなのに、君たちはどうもエンジニアらしくないなあ」とおっしゃり、その後学類の吸収再編をされましたんで、問題もあったものと。
僕的にはサイモン先生のおっしゃる通り、分析ツールである「力学」ばっかりやってて、それらを統合する科目、「設計」なり「デザイン」を重視しなかったせいじゃないかと思うんです。要するに消化不良です。
専門家活動におけるデザインの中心的な役割を考える時、今世紀に入って、自然科学が専門学部のカリキュラムから人工物の科学をほとんどすべて駆逐してしまったことは、皮肉な現象である。工学部は次第に物理学部や数学部となってしまったのである。・・・「応用」という形容詞が用いられるとき、それは単に、専門学部では、専門的な実務と極めて深く関連していると思われるトピックスが、数学や自然科学の分野から重点的に選択される、と言うことを意味しているのである。それは、分析と区別されたデザインが教授され続けるということを意味したのではなかった。
H.サイモン「システムの科学 第3版」デザインの科学
ま、まあ悪い面ばかりじゃなかったです。専門の壁にこだわらない(だって、こだわる「専門」がないんだもん)ってのは良い点かもしれないです。
僕らが卒業するときは建設業界(土木・建築)は大不況でしたけど、多くの卒業生は比較的良かったメーカーや自動車業界に就職していきました。そういう意味で選択肢は広く取れました。
また、当時はこの専攻を卒業すると、土木施工管理技士、技術士(建設部門)、建築士の受験資格が得られました(それぞれ土木学科、建築学科卒業の扱い)。おそらく機械部門であっても、普通に機械工学科卒の扱いになっていると思います。コウモリみたいだな。まあ習ってない科目もあるから、試験に向け独学が必要ですけど、基礎があればなんとかなる?
※現在は、受験資格のある専攻においても、必要な授業科目をちゃんと履修しているかチェックされます。工学システム学類 環境開発工学専攻卒業で建築士の試験を受ける場合は、他学科(芸術学類、社会システム学類)の講義を受講し、必要な科目をきちんと履修しないといけないようです。自分の学類の卒業要件となる専門科目との両立は難しそうだな・・・。土木施工管理技士の場合も、受講必須な科目があるんで、在校生や受験志望の人はきちんとチェックしましょう。
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ちなみに高校生の僕は艦船マニアだったので、造船技術者(タービンエンジンをやりたかったので機械工学科)か建築士になる(建築学科)つもりでこの学類を選びました。当時はネット検索なんて無かったので、進研ゼミの進学資料で、機械系でありつつも、卒業すると建築士の受験資格が取れることを確認してね。
が、現実は厳しかった(笑)。専攻に入って最初の専攻長挨拶。「毎年建築を目指してこの専攻に入る者がいるが、この学類では建築は学べない。」今言うんじゃねえ!
正確には構造力学だけは学べましたけど。でも、どうしても建築を学びたかった同級生は、同じ大学の芸術学類建築学コースに入りなおしてました。その後、僕も社会工学類に興味が移り、我が財務大臣にも協議いたしましたが・・・余裕は無かったので、建築士の道・転学は断念。
造船技術者(タービンエンジンを学ぶ)の方ですけど、僕、熱力学系がどうしても、全然、全く、サッパリ・・・理解できず、諦めました。
それ以降は・・・「無神論者を育てるには、厳格な宗教教育を施せばよい」じゃないですけど、履修するのはすべて「〇〇力学」ばかりで、四畳反力学大系になった僕は、居心地の悪い5年間を過ごしました(家で本ばかり読んでた)。
結局、もう少し、社会と技術の接点みたいなところに携わりたくて、卒業後は土木系公務員の道を選び・・・そこもドロップアウトしてますね。専門にはこだわりません(苦笑)。