来るべきコロナウイルスの第二波、それは苛烈なものになるんでしょうか?
もちろん、僕自身にそれを答える能力は無いのだけれど、それでも何らかの答えが欲しい。 ってなことで、いくつかの記事をまとめてみました。 まずは楽観的な(でも非常に読み応えのある)記事。
あの山中伸弥教授すら首をひねる、日本の奇跡「ファクターX」の正体
世界的にみて、なぜ日本は感染者数も死者数も少ないのか。ノーベル賞を受賞した京都大学教授・山中伸弥氏は、最近の対談でこう述べている。
「日本の感染拡大が欧米に比べて緩やかなのは、絶対に何か理由があるはずだということです。何が理由かはわからないのですけれど、僕は仮に『ファクターX』と呼んでいます」最近の研究でほぼ明らかになってきたのは、日本人の多くは、コロナウイルスに対して、広い意味での「免疫」を持っているという事実だ。 京都大学特定教授の上久保靖彦氏らが発表した研究がその嚆矢だ。
上久保氏らは、今回の新型コロナウイルスには大きくS型、K型、G型の3種類があることを突き止めた。
日本では、弱毒のS型が昨年12月下旬の段階で、すでに流行していたが、通常の人ならばほとんど無症状だったため、当時は気付かれることがなかった。このS型が変異したのがK型で、1月中旬から日本に広がった。
欧米の場合、2月1日以降、中国からの入国制限を行ったため、S型は入ってきたが、K型の流入は食い止めた。対照的に日本では、入国制限の時期が3月9日まで遅れたため、S型もK型も3ヵ月近くにわたって流入し続けた。
S型にせよK型にせよ、無症状や軽症がほとんどだから、気付かないまま治癒した場合が多い。
K型が中国でさらに変異したのが、重症の肺炎を引き起こすG型で、世界を恐怖に陥れている新型コロナである。
日本は、S型とK型の両方の免疫を獲得していたことにより、G型の発生は食い止められた。だが、S型だけではG型を予防できない性質があるため、K型が入ってこなかった欧米では、猛毒性のG型が蔓延した――。
つまり、日本人の多くは、すでにコロナウイルスに対する免疫を獲得していたため、感染者数や死亡者数が非常に少なかったというのが上久保氏らの結論である。また、そもそも東アジアにはSARSの流行以降、さまざまなコロナウイルスが流行しており、その抗体が新型コロナに反応したという仮説(東大名誉教授・児玉龍彦氏)も示されはじめた。別のウイルスにかかっていたのが、結果的に新型ウイルスの免疫となった「交差免疫」という考え方だ。
人種に起因するという説も出てきた。慶應大学医学部教授の金井隆典氏は、白血球の血液型にあたる「HLA(ヒト白血球抗原)」の遺伝子の違いが、死亡者数に関係するとみる。人が持つHLA型はそれぞれ異なるが、人種や民族間での偏りも大きく見られるからだ。金井氏が説明する。
「日本、韓国、台湾、中国といったアジアだけが、人口当たりの死亡者数が圧倒的に少なく、欧米諸国の100分の1です。コロナでの死亡には、人種間での遺伝的な違いが関与している可能性が大きいとみます。日本人特有の遺伝子そのものの特徴が、欧米の人のそれとは違うのではないか」
従来から言われてきたBCG接種が免疫をつくりだしているという考え方も、いまだ有力だ。以上のような要因が、複合的に起こってきたようだ。ポイントは、日本人は、基本的にコロナウイルスに対する大きな意味での「免疫」ができているということだ。順天堂大学特任教授の奥村康氏が語る。
週間現代
「新型コロナでは、PCR検査で陽性反応が出た人でさえ、9割以上は無症状です。それは、感染後5日~1週間で抗体ができるからです」
とてもよくまとまっているし、それなりに理屈は通っていると思います。ただし標題の「日本の奇跡」という、日本マンセー主義者が喜びそうなキャッチはいただけません。「日本の奇跡」ではなく、「アジアの奇跡」ですから。欧米と日本の人口当たりの死者数を比べると、日本の死亡率は圧倒的に低いけど、東アジアで比較すると、むしろ高いんです!
日本の新型コロナの死亡率は低い?
明らかに欧米先進国と東アジア諸国の間で、感染状況や死亡率は違います。これはすでに、千葉大学の研究グループが報告しているとおりです。そして日本ですが、東アジア・西太平洋諸国の中で感染者数は4位、死者数は4位、致死率は4位、そして死亡率はフィリピンに続いて2位です。すなわち、東アジアの中では、決して死者数も死亡率も低いとは言えない数字です。とくに検査と隔離を徹底したお隣の韓国と比べれば、すべての項目で劣っています。ほぼ同じ感染者数のバングラデシュと比べても、日本は死者数、致死率、死亡率ともはるかに上回っています。
つまり、東アジア・西太平洋の先進諸国の中では、中国を除けば、日本は死者数、致死率、死亡率でトップクラスに入るのです。
Dr. Tairaのブログ
それともう一つ、本質的に気になるのが「日本人の多くは、コロナウイルスに対して、広い意味での「免疫」を持っているという事実だ。」と言っているところ。これ、まだ事実じゃなくて仮説じゃない?そして、悲観的な記事で別の専門家はこれを否定してるんじゃないかと。
流行規模、日本は小さかった? 低い陽性率に第2波懸念
新型コロナウイルスへの感染歴を調べる抗体検査について、厚生労働省は16日、陽性率が東京0・10%、大阪0・17%、宮城0・03%だったと発表した。専門家は、国内では多くの人が抗体をもっていないとみて、「第2波」に向けた対策の必要性を指摘している。
海外で報告されている抗体検査の陽性率は米ニューヨーク州で12%、スペインで5%など。欧米に比べ、日本は流行の規模が小さかったとされるが、今回の抗体検査からもその傾向が示されたといえる。
朝日新聞デジタル
東京医大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「欧米に比べ、日本は大幅に陽性率が低いことになる。感染者がそれだけ少ないということでもあり、日本では、秋にも心配される第2波で感染者数が増える可能性がある」と指摘する。
抗体だけが免疫のすべてではないです。 とはいえ、インフルエンザ予防にインフルエンザワクチンを打つのは、抗体を使って免疫を獲得しているわけですから、対コロナ対策でも、抗体が免疫の主役にはなると思うんです。
だから「日本人は欧米人ほどコロナの抗体を持ってません。それだけ感染者が少なかったんです」ってのは、先の記事と全く反対のことを言ってると思います。
そして国内では多くの人が抗体を持っていない というのは事実なんですよね。つまりこちらの記事が正しければ、第2波が来た日本では抗体を持っていない人が多いから、死者数が増えてしまう可能性もあるわけです・・・
ま、交差免疫とか人種、遺伝的な違い、BCG接種の有無とか複合的に見た場合、東アジアや日本の人々が優位性を持っている可能性もあります。が、そうではない 可能性も考えられるわけで・・・例えばこれ。
新型コロナ感染、血液A型は重症化リスク高い可能性=研究
研究は欧州の研究者グループが欧州の新型コロナ流行のピーク時に4000人超の遺伝子を分析し、感染者や重症化した患者の関連性を探った。A型の患者では重症化するリスクが他の血液型に比べ45%高いことが分かった。一方、O型の患者は35%低い可能性があるという。研究論文は医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。
REUTERS
日本と世界の血液型の分布はと言うと・・・
血液型の世界分布図
A型の分布については、ヨーロッパで割合が高い点が目立っている。また北極圏やオーストラリア原住民でも割合が高い。アジアでは、日本だけが高くなっており、血液型から民族系譜を探ろうとする立場からは、日本人のA型因子がどこから来たか「謎」ということになる。O型は、他の血液型に比べて世界的に割合が高いが、特に、ラテンアメリカで割合が高くなっている。日本はユーラシア大陸の中緯度帯と共通で、O型が相対的に少ない地域となっている。
社会実情データ図録
A型はヨーロッパと、アジアだと日本だけが例外的に割合が多いそうです。ま、死者数が急増しているラテンアメリカはO型の割合が多いから、血液型だけで判断はできないんだろうけど。
結局、結論としては、いろいろ説があってよくわからん。「わからん」ってのが現状認識としては正しく、楽観的にも悲観的にもならず、気をつけることがあれば気をつけましょう。ってことかと。
第2波までに、日本政府のZ旗を掲げるだけのシステム(皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ)だけは改善してほしいと思うけれど。
ちなみに、1918年のスペイン風邪のとき、日本は第1波より第2波のほうが死亡率が高かったそうです。
スペイン風邪、第2波は死亡率4倍超に 備えのヒントは
朝日新聞デジタル(有料記事)
国内の第1波は、18年秋に本格化した。翌19年春までに感染者約2100万人、死者は25万人にのぼった(内務省衛生局編「流行性感冒」から)。感染者は4月もなお11万人を超した。だが7月は約1600人まで減っていた。
しかし11月6日付の東京朝日新聞には《恐ろしい流行感冒襲来の徴(ちょう)》という見出しの記事が載った。
「今春ようやく終息し市民も漸(やっ)と安堵(あんど)の胸をなで下ろした間もなく」「東京市を襲う兆候あり」
「流行性感冒」によると、第2波は10月下旬ごろから本格化し、11月には全国に広がった。死者は20年1月に5万5千人、2月も3万8千人にのぼった。第1波で流行が穏やかだった地域ほど「激しき流行を来(きた)し」たとの記述もある。