「公共」「歴史総合」初検定 新科目の高校教科書―「情報I」も、22年度から
文部科学省は30日、2022年度から主に高校1、2年生が使用する教科書の検定結果を公表した。同年度から実施される新しい学習指導要領に基づく初の検定。社会に参画するための知識や態度を身に付ける「公共」や、日本と世界の近現代史を学ぶ「歴史総合」など、新たに必修となる科目が初めて検定を受けた。
JIJI.com
2022年度から、「公共」「歴史総合」「地理総合」とか新しい学習指導要領に基づいて、高校の社会科の科目が変わるみたいです。
僕の高校時代は、「地理」「倫理政経」「日本史」を勉強して、日本史で受験(センター試験)を受けましたね。 僕は基本社会科目は大好きだったんだけど、「政治」の授業は好きになれませんでした。
日本国憲法とか、政治の仕組み(三権分立とか国民主権とか)も勉強するんだけど、なんか理想形の勉強というか、実際の現実社会の動きをうまく説明できないように感じていまして・・・
例えば、ここで出てきた「三権分立」。本来は権力を持つ主体を3つに分割し、それぞれ牽制し合うことで、絶大な国家権力の乱用とか暴走を防ごうという仕組みです。蛇足ですが、エヴァに出てくる生体コンピュータ「MAGIシステム」は、まさに三権分立のお手本です。
日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。
衆議院
でもさあ、日本の統治機構ってこんなふうにうまく分散されていなくて、権力を持つ「上級国民」とそれ以外の「下級国民」がいて、下級国民は自粛とか制限が求められるけど、上級国民は好き勝手やって、仮に罪を犯しても比較的罰せられない階級社会である という方が、現実社会をうまく説明できている・・・ように思えちゃいますよね(笑)。
というのはさておいて、実際の日本国で、三権分立って本当に成り立っているんだろうか?というのが今回の主題です。前置きが長過ぎるけど。
上の図ではあまり明確に書かれていないのだけど、本来「国会」の権力の源泉は、「立法」すなわち法律を作成できることにあります。基本的に法律に書かれたとおりに行政機関は国家権力を使わなければならないのです。まあその細かい解釈や運用は、ある程度各行政機関に委ねられてたりはしますけど。でも根本のところは法律にあるわけで。憲法41条「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」 でもその実態はといえば
<国会用語>議員立法ってどれくらい成立しているの?
今年(2012)の通常国会では、内閣から75本の法律案が堤出され、そのうち63本が成立しました。それに対し、議員立法は衆議院と参議院で合わせて81本が提案され、成立はわずか10本でした。・・・日本は議員立法の成立率が低く、官僚主導の立法が課題とされています。大統領制のアメリカでは立法の発議は議員のみに認められていますが、日本と同じ議院内閣制を採るイギリスでは政府提出の法律案の成立率の方が高いようです。
Yahooニュース
英語だと、議員というのはズバリ「Law maker」って言うんです。けど、日本の議員は「法律の漢字が間違ってます」って言ってるとか。勘違いしちゃいけません。文句あるなら自分で造りましょう!それがあんたらの本来の仕事なんやぞ。
誤字・欠落…政府提出法案にミス続く「前代未聞の緩み」
国会に提出する法案で、政府が失態を重ねている。誤字や欠落、不祥事による法案取り下げ、調整不足による提出期限超え――。与野党から「前代未聞の緩みだ」などと厳しい声が相次いでいる。
朝日新聞
そもそも法律でも計画でもなんでもそうなんですけど、現実問題として、実際にその原案を作る人が主導権を取るんですよね。それを審議する人はちやほやされて「エライ」と勘違いしがちなんですが、実際は出された原案の上で議論している時点で、所詮「釈迦の手のひらの孫悟空」でしかないんですよね・・・。(そういう意味で、政府審議会とか委員会の構成員が、しばしば「御用学者」って言われるのは可愛そうだと思います。だれがなろうと、程度の差はあれど、そうならざるを得ない構造になっている時点で)
そのために、国会議員には国費で、政策担当秘書ってのがつけられているんだがなあ。
「主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書一人を付することができる」国会法132条2項
まあ政府提出の法案の成立が多いということは、つまり立法の実権は官僚にある ということです。
司法を担う裁判所関係はというと、ここは正直良くわからんのだけど、政治家とか官僚が悪さをすると、警察が捜査して、犯罪性があれば検察が起訴して初めて裁判になりますよね。ってことで、検察は司法権においても大きな力をもっているのだけど、この検察ってのも典型的な官僚組織ですね。しかもこの官僚組織は「説明責任を負わない」という致命的な欠点まで持っています。おまいが間違ったら、誰がそれを正すんだよ?
NHKの地方ニュースを見てると、終わりの方でこのような報道を見ない日はないことに気がつくでしょう。
住居侵入の消防士を不起訴 高知地方検察庁
住居侵入の疑いで逮捕された高知市の消防署に勤務する30歳の消防士について、高知地方検察庁は2日までに不起訴としました。
高知市中央消防署に勤務する30歳の男性の消防士は、2月、元交際相手の女性が住む高知市内のマンションの部屋に忍び込んだとして、住居侵入の疑いで警察に逮捕されました。
NHK NEWS WEB
この消防士について、高知地方検察庁は2日までに不起訴としました。不起訴とした理由は明らかにしていません。
逮捕までされて、不起訴ってことは実質無罪(証拠不十分も含む)。なのに無罪の理由は説明しないとか、明らかに権力の乱用じゃないですか?誤認逮捕の可能性だってあるのにひどいよね。 同様に、違法をおかしたと思われる政治家を不起訴にしても、その理由は説明しなくても済みます。だれか突っ込めよ〜。
こういうの見ると、日本の権力は官僚組織の中にある と思っちゃいますね〜。
もう一つ。憲法第67条「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」第68条「その(国務大臣の)過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」
「立法府の構成員である国会議員でないと、行政府トップである内閣の構成員にはなりづらい」逆に兼任推奨というのは、本来の権力の分散原則からすると、おかしいんじゃないか と思うんです・・・むろん、実務上はこのほうがスムーズであることは否定しないけど。
まあここは、日本は「議院内閣制」だからしょうがないんですけど、本来「議院内閣制」と「三権分立」の両立って、矛盾していると思うんですよね・・・
議員内閣制
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されます。また、内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うものとされており、衆議院で不信任を議決されたときは、衆議院を解散するか、あるいは総辞職をしなければなりません。このように内閣の組織と存続の基礎を国会に置く制度を議院内閣制といいます。
衆議院
もし僕が、「公共」の授業を受けるとしたら、こういうことを習ってみたいですけど、まだ実社会に出てない高校生には荷が重いか。ま、こんなことは絶対教えたりはしないから、そんな仮定は不要なんだけどさ。
追記 読み返していて気がついたのだけど、日本の場合、憲法41条に「国会は国権の最高機関であって・・・」と書いてあるので、そもそも三権は分離しておらず、国会(立法府)の一強なんですな。だから立法府の人間が行政府のトップにもなるわけだ。
でもその国会を構成する衆議院のHPに、三権分立の原則うんぬん と書いてあるのは、どういう意味なんですかね? 謙遜??
更に参考です。たとえ議院内閣制であっても、立法府(議員)と行政府職員(官僚)とは基本的には離れているものであり、日本は「自民党長期政権」が続いたゆえの特異事例だそうです。なるほどねえ。他にも、英国の場合は、官僚は自省庁の大臣以外の政治家との接触は禁止なんだそうです。
日本も同じようにすれば、官僚の長時間残業の温床である「国会対応」が減って、いいことだと思うんですけどね。まあ議員に政策立案能力がない(文句をいうだけ)から、禁止にはできないだろうけど。
日本の政治と官僚の関係が、世界的に見て「特殊」である理由の一つは、「自民党長期政権」にある。1955年に自民党が政権の座に就いてから66年のうち、政権から離れたのは、細川護熙・羽田孜の非自民政権と民主党政権の合計4年2カ月だけである
なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題
この長期政権が、世界と比較してみても、特異な政治的関係を作り上げた。政権交代がほとんどないことで、自民党と霞が関の間は、制度的に一体化した。
省庁は、法案を作成すると、まず自民党政調会部会にそれを持ち込む。部会はそれを審査し、自民党を訪れるさまざまな業界と族議員が「利害の調整」をする「与党事前審査」が行われる。法案は、部会で修正された後に、内閣で「閣議決定」されて、国会に提出される。この流れは、世界の議会制民主主義国で、日本だけの独特な制度である。