コロナの感染者は急増していますが、入院できず自宅で療養(放置プレイとも?)する感染者の数は増えるばかりで不安がつのりますね。
対コロナの医療提供体制の拡大は、もうすでに1年以上前から言われていますが、全然進歩していない様子。
でもなぜなのでしょう? 日本は民間病院が多く・・・ということは聞きますけど、「そこをなんとかしないと」 とみんなが思うことなんだけど。
そこを掘り下げていた記事がありましたので、紹介します。 この問題はアンタッチャブルなのか、深堀りした記事もあまり見ないですから。 ついでに僕の考えも。どうしたらいいかってのは、大きすぎて提示できなかったけど。
「開業医の不作為」とまで言い切る記事も、そうそうないわ(笑)。 詳しくは記事を見てほしいけど、なるほど と思った内容を抜粋。
以下の引用は断りない限りこの記事からです。
足元で入院加療を要する患者が21万人、重症者は2000人にも満たない状況で、医療崩壊が起きるのは、新型コロナに対応できる病床数が少なく、診療に携わる医師が極端に少ないからだ。病床を持たない診療所も新型コロナ診療に携わっていないところが多い。・・・
昨年から欧米先進国では新型コロナ患者の多くは自宅で療養し、外来診療・往診で治療を受け、悪化・重症化の兆しが出たら入院する形だ。日本で自宅療養が問題なのは、医師が診療せず不安なまま放置され、悪化したときには手遅れという状態になるからだ。多くが軽症で治るのだから外来診療や往診ができれば、状態に応じて入院やICUでの措置が決められるので対応がスムーズになる。
ちょっと目からウロコ。自宅療養って不安はあるし家族内感染の恐れもあるから反対だったんだけど、これだけ状況が逼迫してくると、それしか手段はない のかも。
自宅療養の場合で最も怖いのは、ここであげられたように「不安なまま放置され、悪化したときには手遅れという状態になる」可能性。近くの病院や診療所が救急対応として往診してくれれば、そしてSOSの電話がきちんと対応されれば、だいぶ違うとは思います。 が、現状はそれ以前の段階で、窓口となる保健所がパンクし、先に進めない「無理ゲー化」してるようで。
その上で病院が対応してくれるかというと・・・(全ての開業医に当てはまるわけではない と理解した上で)
多くが救急医療を担う日本の公立病院の勤務体系は過酷で、これは今に始まったことではない。新型コロナの流行以前から問題視されていた。大病院の救急救命医や研修医などは時間外労働の上限が年間1860時間で、これ自体が過労死レベルだ。・・・
このような状況なので、資金のある人は自分の勤務を自由に管理できる開業医を選び、その結果、開業医の数は余剰になり、ムダな検査、ムダな投薬で収益を確保し、経営を成り立たせようとする。・・・
ついでに言えば、診療報酬制度の引き下げには日本医師会が抵抗するため、薬価引き下げで帳尻を合わせることが多い。製薬会社が新薬を開発してもすぐにあまり儲からなくなるため、ワクチンや新薬を開発するインセンティブを下げてしまっているという実態もある。
日本医師会は医師たちを代表する位置づけとして、政府に対応しているが、実際には任意団体で32万人の医師のうち会員は17万人だ。うち開業医8万3000人、残りは勤務医や研修医だが、勤務医は医師会に入っていても忙しく医師会の活動などできないので、成功した開業医の利権団体になっている。つまりは新型コロナについては何の苦労もしていない医師たちを代弁する組織である。
「医師会は成功した開業医の利権団体」というのは言いすぎ・・・と思うかもしれませんが、日本医師会はこのコロナ下の状況でも、こんな主張をしていることは知っておいて良いかと。あまり報道されないがね。
第37回分科会で、日本医師会副会長の今村聡氏は、「新型コロナという要素があったが、根本的なところは変わらず、総論的には医師数は抑え、診療科、地域の医師の偏在をどうするかという問題だ」と述べた。
医学部定員、2023年度も削減の方向性は変わらず
レポート 2021年6月5日 (土) 橋本佳子(m3.com編集長)
時間外労働の上限が年間1860時間の状況にも関わらず、「診療科や地域の医師偏在の問題」じゃねえだろ。勤務医と開業医の偏在の問題であり、総数として本当に足りているのか、本当に検討したのかよ?
てか、他人事じゃなくて、当事者たる医師会でなんとかしろよ って思いますよね。かたや過労で死にそうになっている医師がいるんだから、その生命を救うのが医師であり、その代表たる医師会の勤めだろうと。僕が何でもできる王様だったら、開業医を次々に廃業させて、勤務医の定員を増やしてあげたいです。 んが、医師会のスタンスは・・・
内部事情に詳しい医師は「東京都医師会の尾崎治夫会長は『医師会は任意加入団体だから会員に強制なんてできない。皆の意見を伝えるだけの団体だ』と言っている。それなら、医師の代表として政府との交渉の窓口になっているのはおかしいではないか」と憤る。
色々おかしいとは思うけれど、日本ではこういう団体ってザラにあるよね。「皆の意見を伝えるだけの団体」といいつつ、構成員になれば税制や制度(行政指導など)で保護され、他方、資金力や組織力を元に政治力を駆使する実質「圧力団体」が。「経団連」とか「連合」とか、他にも色々思い浮かぶね(笑)。そして、それらの各種圧力団体を束ねる総本山が自民党という政権党。 それがよく分かるニュース。
停止に応じない飲食店対策で、金融機関から順守を働き掛けてもらおうとして撤回した9日に続き、13日に撤退を余儀なくされた酒類販売事業者への取引停止要請。いずれも世論の反発が急拡大し、衆院選を間近に控えて危機感に駆られた与党が政府を大きく揺さぶった。酒販事業者に対する要請について、森山裕国対委員長は「現場の事情をよく理解されていない発言。何とぞご容赦いただきたい」。山口泰明選対委員長も「しっかりフォローをしていく」と述べ、出席した全国小売酒販組合中央会の役員に低姿勢を保った。・・・
「酒」やり玉、政府撤回ドミノ 業界票に自民内からも危機感
同中央会は全国に支部網を張り巡らし、取引先など関係者も多く、自民にとって有力な支持基盤。
最近の日本が機能不全になっている大きな原因は、これら各種圧力団体の非構成員となる個人(例えば非正規労働者やネットの声)や弱い団体(例えば飲食業界)が増えたにも関わらず、彼ら「多数派」の「弱い声」を現実の制度や政治に反映する仕組みがない ということだと思います。 医療体制を充実させてほしいってのは、今の仕組みでは「多数派の弱い声」なんだよ。
逆にこれまで日本が比較的うまく行ってたとすれば、それは何らかの団体に属する人が多く、またそれらの団体が圧力団体として有効に働いていたため、「多数派の強い声」として現実の制度や政治に反映されやすかった からではないかと思います。
閑話休題。
メディアの多くは新型コロナと闘う公立病院の医師・看護師たちの姿を取材して、これと対比して「国民の危機意識が低い」といった報道姿勢だ。
こうした対立構造を演出しているのが、記者の取材に対し「国民の気の緩み」といった発言を繰り返す日本医師会の中川俊男会長をはじめとする幹部や政府の対策分科会の医師たちである点には注意が必要だ。
構図を見抜けない(簡単に騙される)、取材力不足のマスコミ、あるいはそういう構図の報道を(結果として暗に)望む我々視聴者も悪いんですけど。
その一方で、医師会や分科会はこの1年半、医療体制の拡充に本気で取り組まず、政府や自治体の「お願い」に対し追加手当ばかり要求してきた。
要求が政府で予算化されても、その予算が使われておらず、ゆえに体制の拡充にも繋がらない という悲惨な構図もあるようです。でもそんなこと報道されないねえ? こういうどうしようもないスパイラル、どうしたら打ち切れるんだろう??
医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」は1.5兆円の予算措置がなされたが、その多くは未消化だ。飲食・旅行規制での業者への代償として、地方自治体の協力金の財源となるはずの「地方創生臨時交付金」は4.5兆円も予算措置がなされたが、これもかなりの部分が未消化になっている。これらの未消化については、実務的に出来なかったとされているが、官僚が裁量的に支出を渋ったのかどうかを含め原因をしっかり究明する必要がある。
マスコミが報じない、未消化で終わりそうな「コロナ交付金」のゆくえ
要するに、予算では供給対策も業者規制への代償補償も手当されていたが、それらがあまり実行されずに、人々への行動規制という「かけ声」ばかりが行われたというのが実態だ。