政府は9日、液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通することを決めた。政府の協力要請を受けた日本企業による融通は3月から始まり、同月分は数十万トン規模となる。ロシアの軍事的脅威によるウクライナ情勢の緊迫化で、ロシアに天然ガスの供給を依存する欧州では調達への懸念が高まっており、日本は米国から融通を打診されていた。同盟国間の協調を重視し、連携して欧州を支援する。 ただ、LNGを発電などに使う日本は全量を輸入に頼っており、想定を上回る量の融通を求められれば、電力需給の観点から難しい判断を迫られる可能性がある。
欧州へ3月からLNG融通 政府、ウクライナ緊迫化で連携
今朝の新聞に載っていたのですが、どうもおかしな話だと思いました。 主に二点。
一点目。現状として、天然ガスの供給をロシアに頼る欧州が、ウクライナ情勢の緊迫化により、天然ガスの安定供給懸念持つのはよくわかります。だから、欧州が日本に支援を要請し、それに日本が応じて融通する。 これなら話はおかしくないです。
けど、日本に要請してきたのは、アメリカなんですよね。表向き、アメリカは当事者でもないし、関係ないじゃん。 なんで欧州が出てこないのさ?
二点目。アメリカが日本にLNGの融通を持ちかけていること。 日本は、LNGを海外から輸入しているんだけど、アメリカは世界有数のLNG輸出国なんです。だったら、日本に頼まないで、アメリカが直接欧州に運べばいいだけのことでしょ?
2022年内にアメリカが世界最大のLNG輸出国に躍進すると予想する。
中国が日本抜き世界最大の「LNG輸入国」に浮上
2021年の国別のLNG輸出量で世界一は、8300万トンを輸出したオーストラリアだ。しかし前年比の増加率は1%にすぎなかった。第2位のカタールは8130万トンを輸出し、増加率は2%だった。これに対し、第3位のアメリカの輸出量は前年比52%も増加して7360万トンに達した。
輸出量ではアメリカが2022年内に首位躍進か
距離的にも、日本から欧州に運ぶより(北極海航路は使えないだろうから、日本〜インド洋〜スエズ運河〜地中海経由か)、アメリカから欧州に運ぶ方が(大西洋を越えるだけ)はるかに短時間かつ低コストで済むのに。
萩生田光一経済産業相は9日、欧州に液化天然ガス(LNG)の一部を融通する方針を表明した。政府の要請に応じた日本企業がLNGを積んだ船を3月に欧州に着くように数隻向かわせるという。1隻に積めるLNGは7万トンとされ、数十万トン規模になる。
欧州はロシア国営ガスプロムから月800万トン前後のガス供給を受けていた。その規模からすると日本の融通量の数十万トンは数%にすぎない。
欧州へのLNG融通、経産相表明 3月に数十万トン規模
タンカー数隻で済むなら、子分としての「アメリカ親分に付きます(Show the flag)。」表明代として安いものでしょう。けど仮に事が生じた場合、その時は乗りかかった船、タンカー数隻じゃ済まないでしょう。
その場合、どこの国もLNGの備蓄なんてないから、「欧米を支援することで国内の天然ガスが不足し、燃料代やら電気代が値上がりが生じ、国民の不満から政権の支持率が下がる」というリスクを考えておかないといけません。
LNGは石油や石炭と比べて保存しにくく、(日本は)国内需要の約2週間分に相当する300万トンが国内にある在庫の上限とされる。LNG火力は国内の発電の約4割を占める。大雪や寒波で需給逼迫のリスクがあるため、政府は国内のエネルギー供給に支障が出ない範囲で欧州に融通すると決めた。
同上
バイデン政権は、そういう事態が国内で起こることは避けたかったんじゃ?って思っちゃいます。アメリカは2021年の大寒波でそういう事態があったのですね。電力自由化が進んだアメリカでは、寒波で需要が急増した電気の料金が、鬼のように上がった事例があるようで。 一週間で電気代50万円とか、まったく極端な国ですね。
2021年2月15日、テキサス州スプリングで。
テキサス大寒波で電力卸売価格が急騰…電気代が5日間で50万円以上に
テキサス州ダラスの地元紙によると、大寒波で一部の住民は1日に1000ドルの電気代を請求された。需要が増加したため、電力の卸売価格は約百倍になった。
自宅やオフィスの電気代が卸売料金に連動する契約になっている場合がある。
大寒波に襲われて、電力が途絶えた生活にも耐えたテキサス州の住民は、新たな困難に直面している。1週間で5000ドル(約53万円)の電気代だ。
そんなリスクは、日本の岸田くんに取ってもらいましょう!って、悪い方向に行かなきゃいいけど。