「しょぼい節電ポイント」を導入した本当の目的はなんだろ・・・?

党首討論(岸田氏)では、電気代高騰に対して“ドヤ顔”で「節電ポイントを用意する」と繰り出したが、その内容には失望の声が広がっている。
 ポイント額は電力会社によって異なるが、東京電力ホールディングスは1キロワットの節電で5円、中部電力は10円相当など。月260キロワットを使うモデル世帯が目標の3%節電で還元は月数十円。

岸田首相「節電ポイント」還元月数十円…ネット民「意味ある?」参院選公示で第一声

なんつーか、ここまでしょぼい政策だと、その裏を読みたくなります。当たっているかは知らんけど。

政府は本音では「節電に努力した」という実績をつくり、「やっぱり原発稼働させるしかないで 」という世論を盛り上げ、原発の再稼働をしたいんじゃないかなと。  

そもそもね、一般国民に猛暑の時期、本気で節電させたいのだったら、「住宅の断熱化」に大規模に補助金を突っ込むべきなのです。

一般に、高断熱の住宅(断熱等性能等級4相当レベル以上)は、普通の住宅(断熱等性能等級2相当)と比べて、年間の冷暖房エネルギーを40%以上減らせると言われています。
エネルギー消費量が40%減れば、冷暖房費も40%節約できるはず。家庭内で使用される電力の1/4※を占めるのがエアコンといわれているので、この40%を削減できれば、家庭での消費電力全体の10%が削減可能となります。
※資源エネルギー庁が発表しているエネルギー白書2006による。

家づくりと住まい方のヒント 節電対策  硝子繊維協会

新築の住宅は今後省エネ対応が義務化されますが、既存家屋はお構いなし。ここに踏み込むべきでしょう。なにせ家庭の消費電力が10%削減できるのだから、これは大きい。

住宅を含むすべての新築物件に2025年度から省エネ基準適合を義務付ける建築物省エネ法などの改正法が13日の参院本会議で可決、成立した。

新築住宅に省エネ基準 25年度から義務、改正法成立

ちなみに、30年前に大手住宅メーカーで建てた旧我が家の場合、壁には薄い断熱材が入っており、窓は一重窓でアルミサッシ(外部へ熱を伝えやすい)。  5年前に地元の工務店(大工さん)が建てた新しい我が家は、分厚い吹付け断熱材が入り、窓はすべて二重窓で樹脂サッシ(外部へ熱を伝えにくい)です。  この分野、日本は技術後進国なんですけど、確実に改善されているのも確か  なんですよね。  断熱性(住心地)やエアコンの効き、エネルギー効率など、まるで違います。

最近の高断熱の住宅だと、全館エアコン一台で冷暖房できる  とうたう住宅メーカーは珍しくありませんし。 

高断熱住宅は、冷暖房に必要なエネルギーが少なくて済む家だということはご存知ですね。高断熱住宅なら、40坪程度の家であれば、市販のエアコン1台で家全体を冷暖房することも難しくはありません。

東京大学名誉教授の坂本雄三先生に、全館空調の家をつくるためのポイントをお聞きしました。

でもよく考えると、電力会社は、本質的には売り物の電力を節電されるのは困りものです。電力行政を司る経済産業省も、国民には電気をじゃんじゃん使ってもらって、さっさと原発(利権も省益もある)を再稼働させたいのが本音かと。住宅の整備は国土交通省の管轄だから、経産省としては頑張るメリットないしな。

本気で省益を打破し国益を考え、それをなんとか調整するのが政治家の役割・・・なんでしょうけど、「新しい資本主義」を唱えつつ、何が新しいのか未だ答えられない(本当にやりたいことがない)首相では調整なんて無理だよね〜。  賛否はあるけど、小泉首相は「本気で郵政改革やりたい」というのは、よくわかったよ。

 でも、今の日本で原発をこれ以上再稼働させる方向で、本当にいいんですかね?  

本気で節電に取り組んで、その上での不足分の稼働に反対はしません。けど、その努力もしないで、なし崩し的に「原発再稼働」を選択するのは、かなわんな。  

その理由

①フクシマダイイチの事故から10年以上立つのに、未だに誰も責任を取っていない。

いささか暴論です。

原子力発電は、本質的に危険なもので、仮に事故を起こせば大きな影響が出るものです。それをなんとか制御し安全に動かしていくためには、それを動かす組織に対し「性善説」ではなく、「性悪説」で臨む必要があると思うんです。いわば「公益に対し潜在的に重大なリスク要因を有する組織に対する安全対策」として。

ここでいう性善説というのは、  「公営企業である当社は安全を第一にします」  みたいな、企業の自主性や企業倫理に頼る手法を指します。オーソドックスな手法ですね。

全社をあげて安全性向上の取組みを充実していくため、「原子力発電の安全性向上への決意」を、最上位の社内規程である社達として定め、当社社員および協力会社の方々への周知・浸透活動に取り組んでいます。

関西電力

性悪説というのは 「もし大事故を起こしたら、(実態がどうであれ、人身御供として)首脳陣は責任を取らされる」という、まるで江戸時代のような懲罰システムを指します。

☆ちなみに、似たような概念?として、英米法には民事訴訟において、懲罰的損害賠償という制度があります。(日本にはこの制度はありません)

加害者に制裁(実際の補償額だけでなく、追加して巨額の賠償を命じる)を加えることで、将来の同様の行為を抑止することを目的とする制度です。 悪用されると、「コーヒーでやけどしたのは、熱すぎるコーヒーを提供したマクドナルドが悪い。だからマクドナルドは被害者に高額の賠償金を払え」と裁決されたマクドナルド・コーヒー事件のような、ひどい判決に繋がりかねない面もあるのですが。

 ま、似たようなと言っても、こちらは民事訴訟(いくら払うか)であり、刑事訴訟ー責任を取る(罰せられる)とは違うのだけれど、趣旨としては似てるといっていい・・・のかな・・・

懲罰的損害賠償(ちょうばつてきそんがいばいしょう、英語: punitive damages, exemplary damages)とは、主に不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、「加害者の行為が強い非難に値する」と認められる場合に、裁判所または陪審の裁量により、加害者に制裁を加えて、将来の同様の行為を抑止する目的で、実際の損害の補填としての賠償に加えて、上乗せして支払うことを命じられる賠償のことをいう。英米法系諸国を中心に認められている制度

wiki

非人道的ですが、このようなシステムが確立すれば、首脳陣は安全に対する万全の備えを日頃から取ることや、予算をケチってはいけない」というような考え方をするようになるでしょう。  今回の事故に対しても、「可能と考えられる安全策は、事前にすべて打たれていた」とはとても言えないし、それができていれば、事態の縮小化は可能だったと思われます。

個人と違い、組織、特に大規模な組織になればなるほど、経済性や継続性、ことなかれ主義を重視し、ときに非常識な、あるいは非人道的な振る舞いを行うことがある  というのは、組織に勤めた経験のある方なら、身に覚えがあるんじゃないでしょうか。組織論理を優先する結果、 個人の倫理観はいとも簡単に破られる・・・ものです。  それを人身御供システムでおさえよう!という・・・

なにせほっとくと、検査に出すマニュアル以外に裏マニュアルを作り、更にそれも逸脱した手作業をした挙げ句、臨界事故を起こす  なんて先例もある業界ですから。

それはさておき、日本の組織の欠点の一つに、「幹部が責任を取らない」ことは、先の大戦の日本軍の事例(失敗の本質)から、昨今のあれこれの事例(赤木ファイルとか)を見れば、その弊害は明らかでしょう。

てか、あれだけの事故で多くの人が傷つき、広域避難を余儀なくされたのに、誰も責任取らずにことが済みそうって、ありえなくない?

7月15日追記。  フクシマダイイチ事故を巡る株主代表訴訟の一審判決で、民事訴訟とはいえ、経営陣の責任を問う判決が下されました。  原発推進が国策である以上、上級審で覆される可能性が高いとは思うけれど、「全国の電力会社経営陣にも国策といえども安全を軽視すれば巨額の賠償責任を負いかねないという現実を突き付け、危機意識を喚起する」という観点から言えば、画期的な判決ですね。

東京電力福島第一原発事故を巡る株主代表訴訟で、東京地裁は旧経営陣に約十三兆円の支払いを命じた=写真、東京都内で。予測された津波への対策を放置し、十分な安全対策を取ることなく原発稼働を続けたことへの叱責(しっせき)だ。 原発事故は取り返しのつかない甚大な被害をもたらす。そうした当然の前提を踏まえ、原発事業を担う経営陣の重い責任を際立たせる判決だったといえる。

旧経営陣の不作為の代償は個人では背負いきれないほど重い。同時に、全国の電力会社経営陣にも国策といえども安全を軽視すれば巨額の賠償責任を負いかねないという現実を突き付け、危機意識を喚起することになるだろう。

東京新聞  社説

知らなかったけれど、日本には、「懲罰的損害賠償」という制度がないので、一般的な損害賠償訴訟では、巨額の賠償請求をする場合、請求額に応じた印紙代(手数料)を裁判所に納付しないといけないそうです。だから、おいそれと巨額の賠償額を提示することは難しくなります。

けれど、株主訴訟の場合は、勝訴しても賠償金は原告(訴えた株主)ではなく会社に払われることから印紙代は低く抑えられ(1万3000円)、故に賠償請求額も青天井にできるそうです。  会社経営陣が会社に損害をかけた  という縛りはあるのですが、これ実質的に懲罰的損害賠償判決ですね。  いろんな戦い方があるものだ・・・

また、別の電力業界関係者からは「こうした形で企業のトップが責任を問われることになれば、電力業界に限らず、企業は何もできなくなってしまうのではないか」と懸念する声が出た。

電力業界に衝撃 13兆円賠償命令で―東電株主訴訟

はい、これで萎縮する程度の自信のなさ(原発の安全確保に対する)しかないのなら、原発なぞ廃止してください。あなた達は昔、無根拠に「絶対安全」って言ってんですね?

②日本の原発の設計は、本当に安全を第一に考えた造りになっているのかね?

 株主代表訴訟 取締役らの不法行為や不作為によって会社に損害が生じた場合、株主が責任を追及する制度。会社法で定められ、監査役に賠償請求訴訟を起こすよう請求し、60日以内に提訴されない場合に株主が訴えを起こすことができる。訴えが認められると賠償金は株主ではなく、会社に支払われることから、請求額にかかわらず、訴訟費用の印紙代は一律1万3000円とされている。

時事ドットコム

「原子力規制委員会の審査で安全が確認された原子力発電所は再稼働する」のが政府の方針ですけど、そもそも、設計は大丈夫なんだろうか・・・

例えば、フクシマダイイチ原発では、非常用の発電機が地下に置かれ、津波のためその発電機が止まってしまったので、あの大惨事が起こったわけです。

で、なぜそんなところに発電機が設置されていたのか?ある人の答えは「先進国の米国で行われていることだから間違いないだろう」という意識が働き、思考停止していたのではなかったか」と推測しているそうな。  (政府事故調委員長だった畑村 洋太郎氏)

「失敗学」を提唱した設計学の大家が「思考停止だった」と断じる日本の原発設計って・・・

事故前まで関係者は、「日本の原発は安全だ」と言い切ってたわけですけど、実は大事な緊急対応部の配置はブラックボックスでした。他にはないのかね、本当に大丈夫なのかね?

私は当時の政府から事故調査委員会(いわゆる政府事故調)の委員長を依頼されて、約1年3ヵ月の間、この事故の調査を行いました。

押し寄せた津波による浸水によって非常用の発電機が使えなくなり、「原子炉を冷やす」という重要な機能が失われました。これが致命傷となって、史上最悪の重大事故が引き起こされてしまったのです。
非常用の発電機が津波による深刻な被害を受けたのは、敷地内で最も低い、地下に設置されていたからでした。

ではなぜ、非常用の発電機を津波の影響を受けやすい地下などに設置していたのでしょうか? 津波の高さこそ想定外だったとはいえ、あらかじめ津波による被害を想定していた場所です。備えとしては念のため想定外の高さの津波がやってきても被害を受けない場所に設置しておくべきと考えるほうが自然です。むしろそうしていなかったことが不思議でした。

結論から言うと、米国から技術を日本に持ち込む際、知識が中途半端に伝わったことによる悲劇でした。私は政府事故調の活動を通じて、福島第一原発だけでなく日本中の原発が非常用の発電機を地下に置いていたことを知りました。その理由は政府事故調の期間ではわからなかったのですが、その後、さらに調べている中で、米国から原発の技術が持ち込まれたときに、本質的な議論もなしに、形だけの知識が伝わったものであることをある人から教わりました。

米国ではなぜ、地下に非常用発電機を設置していたのか。それは、米国ではいちばんの脅威が、「津波」ではなく「竜巻」だったからです。

福島第一原発では、もともとの海岸段丘を掘削して立地のレベルを下げ、その地下に非常用電源を設置しています。平地の確保、海水を冷却水として利用しやすくするためといった理由はあるのでしょうが、津波が予測される日本の海岸に設置される原発にとって、いちばん必要なことは何か、という観点からは、ナンセンスとしか言いようがありません。

事故調では、なぜそのようなことをしたのか調べましたが、当時の経緯について触れた資料はまったく残されていませんでした。資料が残されていない以上、当時技術を導入した人たちが、どこまで考えていたかは詳細にはわかりません。しかし、「先進国の米国で行われていることだから間違いないだろう」という意識が働き、思考停止していたのではなかったかと推測しています。

“日本型エリート思考”の限界を3.11の原発事故に見た

③原発再稼働させても、増える高レベル廃棄物の処分方法はないぜ

日本では、1960年代から商業用に原子力発電を行ってきましたが、それに伴って、高レベル放射性廃棄物が発生しています。高レベル放射性廃棄物には、放射能レベルが十分に減衰するまでに非常に長い時間を要する放射性物質が含まるため、せいぜい100年しか生きない人間が、何世代にもわたって安全に管理し続けることができるとは限りません。そこで、人間による管理に委ねずに済むように処分すべきであるとした上で、その方法としては、地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離する方法が最適であると、国際的に考えられています。これを「地層処分」と呼び、日本では地下300m以深の地層に処分することになっています。

資源エネルギー庁

「日本では地下300m以深の地層に処分することになっています。」といいつつ、その場所は決まっていないんだよね(てか将来的にも決まらないだろ)。

例えば、原発が動き続ければ、毎年発生する使用済核燃料。これは再処理工場で分別され、高レベル廃棄物が発生します。けど、その行き先もないから、使用済燃料棒のまま各地の原子炉建屋内の貯蔵プールで冷やされてます。そのプールはほぼいっぱいだし、フクシマ4号機は、これの冷却ができなくなったから、水素爆発が起きたんだよね(点検中で使用中燃料棒は入っていませんでした)。参考「使用済燃料棒は毎年1000トン、もう保管場所がない」

今ある廃棄物をどう処理するかは必ず考えなきゃいけないけど、 今後発生する分は、できるだけ発生量を抑えるべきでしょう。

そういう意味でも、本気で節電に取り組んで、その上で無理なら、少しづつ原発に頼る  という形にしていくべきだと思うんだけれど。  

という意味では、この人の発言は賛同できた・・・というか、唯一思考停止せず、まともにモノを考えていた候補だったような・・・

「省エネと再生可能エネルギーを増やし、足らざるところは原子力で補うが、原発の耐用年数の間に再エネを増やしていかなければいけない」

「原子力産業はあまり先が見通せない。再エネは日本発の新しい技術が出れば、世界中に日本から出していく」「日本の経済の新しい芽にしていく」と強調した。

さらに、使用済み核燃料の最終処分を「原発の最大の問題」とし、「どこかで最終処分、地層処分する場所を探さなければいけない。現実的な処分方法をどうするのかをテーブルにのせて議論をした方がいい。国の責任である程度、やらなければいけない」と踏み込んだ。

河野氏「核のゴミ最終処分、国の責任で」。原発から再エネへ転換を強調【自民党総裁選】

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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