日本の食料自給率37%、それやばいの?(2)自給率上げたかったら、減反やめればいいんじゃね?

前回の記事で取り上げていた、農水省の資料↓ですが・・・

英国の自給率向上の要因の一つに、小麦の生産が大幅に拡大したことが挙げられています。 考えてみると、主食となる小麦のカロリーベースは高いですから、その生産を増やすことは「カロリーベースの食料自給率向上ゲーム」での必勝法かもしれません。

野菜はカロリー低いですし、肉類はカロリー高いけど、飼料が海外産だと割り引かれる謎ルールが適用されるからです。 

英国の場合、1965年に4,171千トンだった小麦の生産量が、2011年には15,257千トンになり、カロリーベースの食料自給率は45%から72%に向上しました。小麦生産量は実に4倍になり、英国は小麦の輸入国から、輸出をする国に変貌したのです。

【第2回イギリス】EU離脱 共通農業政策に影響も
農林中金総合研究所 農政:世界の農業は今 英国編
【第2回イギリス】EU離脱 共通農業政策に影響も
同上

さて、英国の小麦にあたるわれらが日本の米はどうだったかを見ると・・・

図Ⅰー23 水稲の作付面積・収穫量の推移
白書・審議会データベース

作付け面積も、生産(収穫)量も見事な右肩下がりです。これは、人為的に水田の作付け面積を減らし、収穫量を減らす「減反政策」を実施していたから。

コメの生産を抑制するための生産調整政策。生産過剰となったコメの生産量を調整し、コメの代わりに麦や大豆などへ転作させる。国が地方自治体を通じて農業者に生産目標量を配分し、転作支援の補助金を支給することによって調整を行う。農業者にコメの作付面積の削減を指示するものであることから、一般に「減反政策」と呼ばれる。試験的・緊急的な実施を経て、1971年度に本格導入され、半世紀にわたり日本の水田農業の構造的な対策として実施されたが、国による生産目標量の配分は2018年に廃止された。
コメの生産調整は、1960年代末にコメの生産が過剰となり古米の在庫増加が問題視される中で、国が生産目標量を定めて休耕・転作を奨励する対策として始まり、数年ごとに見直されて継続してきた。・・・18年産から国による目標量の配分はなくなったが、自治体や農協などが中心となり生産量の目安を示して急な増産を避けている。

コトバンク

「コメの生産が過剰となり古米の在庫増加が問題視される中で」とありますが、これはコメの国家備蓄ともいえますから、「食料自給率」が大事なら、在庫増加は歓迎すべき事態でしょうに。

 それを減らすんだから、日本の農政は食料自給率より減反が大事という判断を下し、その決定が現在まで続いているに過ぎない(食料自給率の低下はやむを得ない)という、単純な問題だと思うのですが。 短期的には混乱するでしょうけど、長期的に自給率を上げたいなら、減反政策やめたらいいんじゃね?  

当の農水省はコメの消費量を拡大させれば(コメの生産増やせる) みたいなキャンペーンしてますがね、長年の消費量動向を見れば、そんなことでどうにかできる問題じゃないことは明らかなのです。オメデタイですなあ。ま、「対策をやったふり」にはなりますか。

農水省
shrabee

それより、日本の米を海外に輸出できるよう様々な手を考えるべきでしょうね。もちろん、輸出には手厚い補助金がついているとは思いますが、まだまだ課題も多いようですから。

「今まで一度も取引がなかった複数の国から引き合いが来ているんですよ」。日本米輸出に取り組む生産者組織が立ち上げた会社の担当役員がやや興奮気味に語る。
 コロナ禍やウクライナ紛争による世界的な穀物相場高騰に加え、米カリフォルニア州の旱魃による生産量減少、さらには急激に進む円安もあって日本米輸出に追い風が吹いている。ただし、日本のコメ産業には制度上、第三者には理解しがたい足かせがはめられており、輸出業者の自由な商活動に支障を来す問題が横たわっている。

世界に広がる需要 それでも米の輸出が増えないワケ

減反やめたら食料自給率も上がるんじゃね?というのは、個人で唱えてるだけの意見ではありません。割と合理的な意見だと思います。

米の生産は60年代後半に年1400万トンを超えていた。半減したのは減反政策が原因だ。減反は米の生産を抑えて価格を維持する政策で、70年から本格的に始まった。18年度で廃止したと公表されたが、それは当時の安倍政権のごまかしだ。廃止したのは生産数量目標だけで、生産を減らせば補助金を出すという減反政策の本丸は依然残り、逆に強化されてきた。減反廃止なら作付面積は増え、米価は下がるはずだ。


減反は亡国の政策だ。戦前にも植民地産米が増えて、旧農林省が減反を提案したことがある。反対したのは旧陸軍省だった。「主食である米を減産するとは何ごとか」との理由だ。食料安全保障の本質とはそういうことだ。農林水産省は「自給率の引き上げが重要」などと言うが、実際に行ってきたのはまったく逆の政策だった。まずは減反を完全に廃止し、米の生産を増やすべきだ。そうすれば米の価格は下落し、輸出が行えるようになる。今までは生産制限のため、面積当たりの収量(単収)を増やす品種改良は禁じられてきたが、減反廃止による作付面積と単収の増加で年1500万トン程度の生産は可能になる。うち700万トンを国内で消費し、残る800万トンは輸出すればいい。有事で輸入が止まったら輸出していた米を食べればよい。輸出は倉庫代もかからない備畜の役割を果たす。

減反は亡国の政策   キャノングローバル戦略研究所

そもそも、豊芦原瑞穂国で「コメ農家に自由にコメを作らせない」っておかしいと思うんだよ。畜産や野菜、果物生産は自由なのに。 コメだって立派な商品なんだから、需要と供給の狭間で揉まれ、供給者はそれを眺めつつ作るかどうか選択する というのがプロの仕事というものだと思うのです。

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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