「異次元の少子化対策」と言うけれど

 岸田文雄首相は23日、衆参両院で施政方針演説を行い、急激な少子化に危機感を訴え「次元の異なる対策」を実現すると決意を表明した。

異次元の少子化対策で論戦へ 野党、教団問題も追及

「異次元」とか言いつつも、正直者の政治家が本音を語り、所信表明演説前から馬脚を現しておりますww。 いや、政治家たるもの、国民をその気にさせるまでは、本音を隠してうそをつこうよ・・・。てか、こんな時だけ正直でどうすんです・・・

1月5日、自民党税制調査会の幹部を務める甘利明前幹事長は、BSテレ東の『日経ニュースプラス9』に出演。少子化対策の財源として、将来的な消費税率の引き上げも検討対象になるとの認識を示した。

岸田首相「異次元の少子化対策」受け甘利前幹事長が「消費増税を検討」ネットに集まる庶民の悲鳴「減税がいちばんの少子化対策」

甘利(明・自民党前幹事長)さんが『少子化対策で増税』とか言ってましたけど、若い人たちがお金がないから子ども作れないよって言ってるのに、増税したら余計苦しくなる。そういう意味でやっぱ間違ったことをやり続けるっていうところ。ただ高齢者の人とか年金もらってる人たちは自民党、公明党支持してるので変わんないだろうなと思って見てます」と淡々と苦言を呈した。

ひろゆき氏 日本の将来にとことん悲観的「増税通っちゃいそう」「少子化解決しない」

テレビ朝日の報道によると、麻生氏は少子化について「一番、大きな理由は出産する時の女性の年齢が高齢化しているからです」と断言。女性の初婚年齢が「今は30歳で普通」と述べた上で、子どもを複数出産するには「体力的な問題があるのかもしれない」と指摘したという。

麻生太郎氏また舌禍..女性ばかりに「期待」する自民党政治家たち 少子化問題 今何が求められているか

ああ、麻生さんってこれまで失言王だと思ってきたけど、ひろゆき氏の発言を見て、そうじゃなくて、これまでも一貫して「高齢者の人とか年金もらってる人たちを傷つけない発言をする」という観点で見るべきなんだ と思いました。 ご自身も高齢者だから、本音でそう思ってる正直な面もあるんでしょうが。

えっと、僕が突っ込みたいのは実はそこじゃないのです。僕が言いたいのは

国が政策として、今考えるべきことは異次元の少子化対策ではなく、異次元の人口減少対策じゃないですか?ということ。

もちろん、「産みたいけど産めない」ということに対する対策は、それはそれとしてやるべきなのだけど、真に問題とすべきは、出生率いかんにかかわらず、日本の避けられない未来である「急激な人口減少」に、国はどう対応していくか ということ。

 それに対する政策(真の意味での「持続可能な日本を考える」)を一切行わないから、国民の側は漠然と将来不安を抱え、子供もあんまり産みたくない っていう気持ちも高まってしまうんじゃないでしょうか?

以下は国交省(旧国土庁)が平成22年に出した「国土の長期的展望に向けた検討の方向性について」という資料からの出典になります。

まずは日本の人口推移の推計です。今が矢印のところです。ちなみに推計に使った出生率は「中位」で、わりと楽観的な数値を使っています。 なんじゃこの急な下り坂。

日本の人口は、2050年までに3,300万人(約26%)減少します。2050年て、あと25年くらいしかない、近い未来です。

まあ、実際の出生率は推計よりどんどん低くなっているから、人口減少はこれより大きくなるんだけど。

2015 年に約100 万人であったわが国の出生数(日本人)は、わずか6 年で81 万人程度(2021 年見通し)にまで減少した。
2015 年までは▲1%程度の緩やかな減少であったが、この時期は出産期の女性数のすう勢的な減少や婚姻率の低下などの要因が指摘されていた。2016 年以降の急減は、それらに加えて出生率の低下が寄与し、年率▲3.5%の急減となった。
2020 年以降は、新型コロナによる雇用に対する懸念や出会いの場の喪失など、出生意欲をさらに押し下げかねない状況が続いており、出生数はさらに下振れすることも懸念される。

若い世代の出生意欲の低下が深刻にー新型コロナが出生意欲のさらなる低下を助長  日本総研

え。コロナ下って満足に外出できないし、「家籠り」の時間が増えたんだから、むしろ出生率は高くなるんじゃね?と思っていたのですが、日本はそうでもないようで。

2021年の合計特殊出生率は1.30となって、前年の1.33よりもさらに0.03減少しました。2021年の出生率は、初めて新型コロナの流行の影響を受けた年の妊娠出産であったため、2020年に比較し下がるのは当然のように思われます。世界でもコロナが猛威を振るっていたので、世界の各国で同様の傾向がみられると思っていたのですが、実際調べてみるとそうではありませんでした。

日本、韓国は2020年に比較し、2021年の合計特殊出生率は低下しましたが、フィンランド、英国、米国、スウェーデン、フランスなどの国では、同様にコロナの影響を受けたにも関わらず上昇していました。
 これの原因を解析した北爪匡ら(出生率反転、波乗れぬ日本 先進国の8割上昇、日経新聞社、「チャートは語る」https://www.nikkei.com/article/)によると、これらの差は各国のジェンダーギャップ指数に相関する説明しています。


推測ですが、コロナ禍でテレワークがすすみ、男性が家にいる時間が増えたのだと思います。欧米各国では、すでに家庭での家事育児の仕事の男女の分担が平等となっている家庭が多いので、男性が家にいる時間が増えることで家事育児要員が一人増える状況になることになると思いますが、日本では、まだまだ家事育児の男女平等が進んでおらず、男性が家にいることでかえって女性の家事負担が増えたのかもしれません。

コロナ禍で出生率が減ったのは日本だけ!?日本の出生率を上げるためにすべきこと

 うーん、少子化対策より、ジェンダーギャップ(男女不平等)指数改善に重点置いた方が、出生率の改善に効くんじゃないですかぁ? 

横道にそれました。これだけ人が減ると先の資料では、2050年までにこんな状況が生じるそうです。(一部です)

ああ、このままじゃ、いろんな意味で持続不可能ですね、日本。 

対策として考えられるのは、大規模な若い移民の導入・・・日本では無理でしょうね。となると、人口激減に合わせた「住居地域の選択と集中」など(国土交通省の資料だけに、それが理想解じゃないかと思います)、いろんな意味でコンパクトな国家に変わる必要があると思います。 

ただね、これは日本だけではないのですが、かつて歴史上、これだけ急激に人口が減少した国家というのはありません。だから国の政策って基本「人口右肩上がり」に連動してます。 確実に将来人口が減少するとしても、既往計画を踏襲しないと、いろいろ面倒が起こります。それを避けるため(寝た子を起こさないよう)、夢幻であっても、右肩上がり唯一の解である出生率上昇にすがりたい。いろいろ矛盾は出てるけど。 

というのが、国の政策を担う政治家や官僚,、そして実は国民のの本心じゃないかと思うのです。

人口動向は人の生物としての本能的な営みが大きく関係するのは自明だが、それを金銭要因でどこまで誘導できるかについて、実証分析もないのに、こうした提言がなされる。逆にいえば、基本的なメカニズムが分からないので、人口問題は政治課題となるのだろう。人口問題は国民に人気があり、政治家には人口問題に関心を持つ人が多い。

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年金問題だって、「人口右肩上がり」なら問題生じないしね(笑)。左肩下がりの計画って作成困難だし、作ればあちこちからボコられるし、正直辛いだけで楽しくないだろ。

だから政治家が、そんな辛気臭い問題を扱わず、 まだしも前向きな「出生率向上を図ります」に(安易に)飛びつく気持ちもわかる。ゆえに、日本は変われないでしょう。

でも、いま取り組まないと、余計悲惨な将来日本が待っているのは間違いないところで。そういう意味では、引用したひろゆきさんのコメントの続き「変われない日本ダメダメ」に激しく同意。

今年の日本経済の見通しを聞かれ「少子化のために増税するぞ、っていう間違ったことでもなんかそのまま通っちゃいそうとか、経済的にも間違ったことをずっとやり続ける日本っていうのは変わらないので、そういう意味では今後も今までと一緒。経済は下がり続けて、少子化も解決しないままなんじゃないかなと思ってます」と後ろ向きな言葉を並べた。

ひろゆき氏 日本の将来にとことん悲観的「増税通っちゃいそう」「少子化解決しない」

日本は僕にとって暮らしやすいところなんだけど、もし自分に海外へ移民できるだけの能力があれば、するべきなんだろうな とか考えたりもします。能力ないから夢想ですけど。

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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