商わぬなら 殺してしまえ ゾンビ会社

タイトルの元ネタは、 信長、秀吉、家康の性格である短気、工夫、忍耐をホトトギスへの対応をもって表現した俳句から、信長の歌を拝借しています。

『甲子夜話(東洋文庫)』第4巻(松浦静山著 平凡社 1978年)で巻53を確認すると、「夜話のとき或人の云けるは、人の仮托に出る者ならんが、其人の情実に能く恊へりとなん」として、次のようにこの3句の掲載がある。
「郭公を贈り参せし人あり。されども鳴かざりければ、
 なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府
 鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤
 なかぬなら鳴まで待よ郭公 大権現様」

レファレンス共同データベース

いきなりですが、商売というのは「製品やサービスを顧客に販売し、対価として売上を上げる」ことだと思います。 それを前提に考えると、顧客に何の製品もサービスも提供しない会社(ゾンビ会社)なんて必要ないですよね。

ここに13年間何も販売しないのに、売上が上がっている会社があります。しかも、その売上は僕らが(知らないうちに)払わされているとしたら・・・そんなけしからぬ会社、さっさと潰れてほしいですよね。

その会社の名前は「日本原子力発電株式会社」といいます。(長いので、以下原電と略します)今日、その原電についてニュースがありました。 

原子力規制委員会は13日の定例会合で、日本原子力発電(原電)の敦賀原発2号機(福井県)の再稼働を不合格とすることを正式に決定した。原子炉直下に活断層がある可能性を否定できず、新規制基準に適合していないと結論づけた。

敦賀原発2号機の再稼働、不合格を正式決定 規制委

原子力規制委員会は再稼働できない理由として「原子炉直下に活断層がある可能性を否定できない」からとしています。となると再稼働を目指す原電側は「原子炉直下に断層がない」あるいは「直下に断層があるが、絶対に活断層ではない」ことを証明する必要があります。

さて、建物の下に断層がある可能性の有無。これは建物をいったん壊して掘ってみれば分かるでしょう。が、建物が壊せず、下を掘るのも怖すぎる(直上に原子炉があるため)場合、証明・・・できないよねえ。

 後者の場合でも、現在の科学水準で「活断層の可能性なし」って言い切るのは悪魔の証明。証明は不可能。 よって再稼働は無理ゲーです。

が、原電側は諦めません。なぜなら・・・

あきらめられない理由に、経営の屋台骨の基本料金の存在がある。売電先の東京、東北、関西、中部、北陸の電力5社が、発電の有無にかかわらず原電に払い続けてきた。国民からの電気料金で原電を支えている構図だ。
 福島の事故当時、原電は敦賀1、2号機、東海第2(茨城県)を動かしていたが、2011年5月に2号機が停止して以来、売電はない。2023年度までの13年間に受け取った1兆4000億円を超える基本料金は、収益の約98%を占める。基本料金なしに経営は成り立たない。

東京電力と関西電力で分割吸収するしかない? 売電の見通しが立たない日本原電 経営を取り巻く構造的問題とは

記事にもありますけど、原電は3つの原子力発電所を持っています。てか、原発しか持ってない。 ひとつは「敦賀原発1号機」で現在廃炉作業中。ふたつめは上記「敦賀原発2号機」稼働は無理でしょう。 

みっつめは「東海第2原発」。上記の記事によれば「事故対策工事で不具合が見つかり、水戸地裁で運転差し止めを命じられた上、周辺自治体の理解が進まず、再稼働への道が見えない」とのこと。 まあ首都圏ですし、東海村ではいろいろあったしねえ、これも再稼働厳しいでしょう。

30キロメートル圏内には日本の原発周辺としては最多の約96万人が暮らすことから、再稼働に慎重または反対の自治体や県民も多い。

・・・東海村JCO臨界事故や福島原発事故、同種の事故につながりかねない東北地方太平洋沖地震の津波によるトラブルなどを経験し、近年地元では廃炉を求める声が高まっている。

wiki

10年以上売電してない、売電の見込みも立たない電力会社なんて不要でしょ。しかもその会社存続の費用が、東京、東北、関西、中部、北陸の電力5社電気料金から支払われている。 電力料金ですから、それ支払ってるのは受電者の僕らなんです!(敦賀1の廃炉経費は必要だから、払うのやぶさかじゃないけれど、売電の見込みのない敦賀2の維持補修費や、不毛な調査費は支払いたくないぞ)

先の記事は、打開策として原電の元幹部は「今の状況を考えれば、東電と関電で原電を分割吸収することが合理的だ」と提言し締められていますが。それ無理でしょ。

電力会社には、分割吸収なんていうビックウェーブを起こして、寝た子を起こす必要性がまったくありません。そんなことしたら、東電と関電は株主から訴訟(価値のない金食い虫を引き取った)を起こされるリスクがあります。今なら五社の電力会社の契約者(僕ら)から広く薄く、ほとんど知られることなく費用徴収できてるので(電気料金に乗せてるので、電力会社自体は痛くもかゆくもない)、静かに現状維持がベストです。

そういう環境を冷静によんだか、原電の幹部も涼しいもの。

原電は東海第二原発も再稼働が見通せず、所有する全2基の運転停止長期化が避けられない。村松衛社長ら役員2人は、役員報酬の50%を2か月分自主返上する。

上記記事

零細企業なら社長が無限責任を負い首を吊る事態なのに、この会社の場合は社長も給与の半分を二か月自主返納でOKって、ほぼ無罪です。こんな奴らの会社に、僕らは問答無用で金を払わされているなんて本当に腹立ちます。アンタらこのイベントを真剣開催しなよ。

城下町として知られる島根県松江市で、切腹後にのたうち回る演技力を競う「切腹コンテスト」の開催を予定し参加者を募ったところ、このイベントに対しSNS上で賛否が多く寄せられる事態に…。大きな反響を受け、主催者はコンテストを中止すると明らかにしました。

「切腹コンテスト」SNSで賛否 市役所テラスで、プラスチック刀で切腹後のたうち回る演技力を競う…ネットの反響受け「中止」に

電力会社も、当事者の原電の幹部も何も感じていませんが、僕らだけは損をしています。そりゃ、原電の現場社員も苦しい思いをしてるとは思いますが。まあ、ねえ。

理想的には第三者が(この場合、国しかない)がゼロ円で会社を買い取り、さっさと3原発を廃炉にし、会社を清算し(解散させ)、何もない状態に戻すのがトータルとして一番損の少ない処理法だと思うのですが・・・

林芳正官房長官は13日の記者会見で、・・・「科学的・専門的な判断は、結果いかんによらず尊重すべきだと考えている」と述べた。原電側が再申請を目指していることに関しては「規制委の指摘を踏まえて適切に対応してもらいたい」と語った。

敦賀不適合「判断を尊重」 林官房長官

原発推進してる国はまるで他人事。そりゃ、こちらも寝た子を起こしたくはない(国民に「原発って、発電コスト高いのね」なんて気づかせちゃダメ)。

経済産業省は12日、2030年時点の電源別の発電コストについて新たな試算結果を公表した。1キロワット時当たりの費用は、太陽光(事業用)が8円台前半~11円台後半で最も安くなり、これまで最安とされた原子力を下回った。太陽光は普及が進んでパネルなどの価格低下が予想される一方、原子力は安全対策費用などでコストが増加すると見込んだ。

太陽光が原発抑え発電コスト最安に 経産省2030年試算
2021/7/13 西日本新聞

この試算は2021年に行われたものなのだけれど、さてこの試算で上記のような「東日本大震災以降、発電していない原発の維持管理費」をちゃんと計上しているのか、知りたいものですねぇ?たぶん、発電ゼロだから、除外して計上してないと思うぞ。それを加えるとどうなるかというと・・・

国の産業政策としては、当たるかどうかも見込めない国産先端半導体に大金をつぎ込むより、確実に儲かる(=ずるずる出血の続く状況を放置より、一気に清算して損失額を確定させる)ことにお金をつぎ込んでほしいと思います。  いでよ、信長!

投稿者:

モト

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。

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