「あれから15年。わずか15年で我々はここまで復興を遂げることができたのです。それは私たち人類の優秀性もさることながら、皆さんのお父さんお母さんの血と汗と涙と努力の賜物といえるで有りましょう。」
とは人類の半数が一瞬にして失われたセカンドインパクトからの復興を振り返る中学校の老教師の名セリフです。 (新世紀エヴァンゲリオンの設定)
リアルワールドでは阪神大震災から30年が経過しました。倍の時間が経過し、復興は成し遂げられた でしょうか?そして来るべきサードインパクト(南海トラフ地震)への備えはできているでしょうか?
悪いことは言わん。特務機関NERVを頼れ(笑)

なんてね、別にどんなアプリでもいいんだけど。
来るべきサードインパクトに備え、いくつか関連したネタを。
つい先日(1月16日)、NHKニュースで『南海トラフ地震 の30年以内発生確率が「80%程度」に引き上げられた』と報道してました。
政府の地震調査委員会は日本周辺の海底や全国の活断層で想定される地震の発生確率について、毎年、1月1日の時点で計算し、公表しています。
このうち、南海トラフで想定されるマグニチュード8から9の巨大地震は、今後30年以内に発生する確率がこれまでの「70%から80%」を「80%程度」に引き上げました。今月13日や、去年8月に日向灘で起きた地震は今回の確率には影響しておらず、想定している巨大地震が起きないかぎり、時間の経過とともに確率が上がるとしています。
30年以内に発生する確率については、南海トラフとして確率の算出を始めた2013年は「60%から70%」でその後、2014年に「70%程度」、2018年に「70%から80%」に引き上げられていました。
いよいよ近いのかな~と思って記事を読んでると・・・ありゃ?
僕は地震の発生確率をどう算出するかなんて全く知らないのですが、 引用した最後2つのパラグラフの記述を見て、この発生確率の数値引き上げは、科学的に算出したものではなく、「文学じゃないか?」って感じました。
そもそも「地震の発生確率」なんていう不確かな、そしてぶれの大きい「予測値」を算出するのに、10年程度の短期間でその確率が20%程度高まるなんてありえるでしょうか? むしろなんか変な癖が出てないか、モデルを疑うべきではないかと。(*これについては、文末に追加情報を乗せましたので、あわせてご覧ください。)
ですがまあ、天下のNHKで報道されているのだし、それなりの確度を持ってるのかなと思ってたのですが・・・
今日(1月17日)の東京新聞の記事
30年以内の発生確率(長期評価)が「80%程度」とされる南海トラフ地震について、政府の地震調査委員会が、根拠としているデータや研究結果の見直しを始めたことが分かった。議論は非公開で進んでおり、複数の委員への取材によると、確率の値や表記の仕方などに変更が加えられる可能性が高い。
東京新聞は地震調査委の下部組織で、地震学者らが確率の検討を取りまとめる長期評価部会の委員全16人に取材を申し込んだ。
およそ半数の委員が議論していることを認めた。複数の委員が新しいデータや知見を重視し、「確率算出の手法を見直そうという話になっている。手法が変われば、確率の値が変わる可能性は高い」と話した。
事務局の文部科学省の担当者は「見直しを検討することを含めて検討しており、具体的な内容は話せない」と答えた。
この話が事実なら、なぜ見直しをしてから数値を公表しないのか、対策の基礎となる大事な数値なのに、その数値だけが独り歩きしちゃいます。てか、むしろその高すぎる数値の独り歩きをこい願う存在があるんじゃないか って邪推しちゃいますよ。でもそれ、「オオカミ少年」の副作用を伴うから・・・
次のネタ。
元ネタが出てこなんだけど、阪神大震災を経験した人が能登半島地震での震災対応を見て、「阪神の時から変わっていない、いやむしろ劣化している」 と答えてたこと。
阪神・淡路大震災から1月で30年です。
NHKがアンケート調査を行ったところ、震災を経験した人の半数余りが去年1月に起きた能登半島地震で震災の教訓が生かされていないと答えました。
理由はいろいろあると思うんだけど、僕は当時と比べ現在は、「行政の対応力がめちゃくちゃ下がっている」ことも原因にあるんだと思います。
僕が勤務していた某防災官庁での経験ですが、 僕らの採用時期から10年余り(まさに氷河期世代)職員の採用がすごく減らされました。ほぼゼロという年もあったと思います。いま、その世代が課長など、災害対策の現場の指揮官クラスになっているのだけど、数が足りません。 採用絞ったから当たり前なのだけど。
そもそも、職員定数が減ってますがな。 そのうえで正規職員を減らし、非正規職員を増やしたので、地方自治体では避難所の運営を非正規職員にもお願いしないと回らないところも。 非正規職員に市職員として臨機応変の対応を取らせること、できますか? 本来定型業務を行うために雇われたのに。
非正規でありながらも災害対応の重責を負うことに戸惑いの声が上がる。ある自治体の任用職員の女性は豪雨災害で避難所運営などを手伝うよう指示された。約1カ月間、休日返上で避難所の受け付けや被災施設の片付けに奔走。同じ非正規の同僚も深夜まで働いていた。「新型コロナウイルスにも注意を払い神経をすり減らした」という。
本来の仕事は庁内事務などで、職務を示す「労働条件通知書」に災害対応は記されていない。命の危険にさらされる懸念もある。東日本大震災で被災した岩手県内では非正規職員42人が避難誘導など公務中に亡くなったと認められた。東北の被災地では、ヘルメットなどの用具で非正規用が確保されず、安全配慮が不十分だったとの指摘もある。
地方自治総合研究所の上林陽治研究員の話 公務員の報酬は正規は身分に対し、非正規はあくまで限られた職務に対して支払われ、公務員としての性質や役割が根本的に異なる。災害要員にするなら正職員化や待遇改善は必須だ。・・・
会計年度任用職員は地方公務員法が適用されるため、「正規と同じで何でも担わせる」という誤った考えが広まらないか懸念する。
それらの動きに反比例するように「対応マニュアル」の冊数とページ数は激増し充実しました。そりゃいろいろやらなきゃいけないことは分かるよ。でもこの人数でどうやっても回せないじゃん。そもそも幹部がみんな単身赴任じゃん(正月に災害起こったらどうすんの?)
一時期、金融業界で「ストレステスト」という言葉がはやりましたね。
金融業界におけるストレステストとは、株価の暴落や金利の高騰等、金融市場に不測の事態が発生した場合を想定して、ポジション損失の度合いや損失回避策をあらかじめシミュレーションしておくリスク管理手法を指します。特に、銀行等の金融業界では、金融システム危機に耐えて業務を継続できるかどうかを調べる手法とされています。「健全性検査」とも称されます。
これを行政でもやるべきだと思うんですよね。 「災害対応能力について、阪神大震災時点(30年前)と現在と比較して数値化」してみたらいいと思います。 たぶん、その数値の低さに愕然とするんじゃないかと。 で、それ公表したらいいと思うんですよ。
「自助 共助 公助」って言葉があるけど、この数値がでると国民も、ああ「自助 共助」するしかねえわと諦める(笑)。 いや、でもそれが現実なんで。 最終的に被害者数を減らすには、みんなが見たくない現実を見る必要があるんじゃないのかなあ、と。
追記。
一体どれぐらい鬼気迫ることなのか。そのリスクや対策について、東京大地震研究所の加藤愛太郎教授(地震学)に話を聞いた。
・・・
そのような南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率が今回、「80%程度」に引き上げられた意味とは―。
「いきなり70%から80%になったわけではないです。もともと昨年が『74~81%』だったのを四捨五入して70%と表現していた。プレートは年々沈んでいるわけですから、時間が経てば発生確率はあがります。そこで今年は『75~82%』に上がったので四捨五入して『80%』と表現したのでしょう」〈南海トラフ巨大地震〉発生確率が「70%」から「80%」に引き上げられたことが意味するものとは? 東大の地震専門家が警鐘
このように内実を説明されれば「なるほど」とも思うけれど、普通の人が報道を見たら、「いきなり70%から80%になった」と認識してしまうだろうね。 ちょっとあまりに乱暴すぎないか という印象は消えないなあ・・・

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。