僕は48歳独身です。今は両親と同居していますが、この先結婚の予定はなく最後はおひとり様で迎える予定。 さて、そんな人が死んだら遺産はどこにいくのでしょ??(気が早い!)
*国庫帰属以外の記事は、僕の知識(実務経験のないFP2級)で書いています。だいたいこんな感じだと思いますが間違ってるかもしれないので、関心ある部分はネットで確認する、あるいは切羽詰まった状況なら専門家に聞きましょう。 住んでる市町村で無料の法律相談をやってると思いますので、まずは行政の広報誌をひっくり返して読んでみるのが吉かと。
法定相続人
まず一般的な話。基本的に遺産は民法で定められた法定相続人が相続します。法定相続人がいない場合(相続人不存在)、その遺産は国庫に帰属します。(原則)
法定相続人とは、まず配偶者。それから「子(1)」、「直系尊属(2)」、「兄弟姉妹(3)」を指します。 主なルールは次の通り。
・配偶者は常に一定の財産を相続する。・1,2,3は相続順位。上位の順位がいない場合、下位に順位が回ってくる。・子が死亡していれば孫、孫がいなければひ孫が代襲と、直系卑属がいれば際限なく第1順位相続人になる。・父母が死亡していれば祖父祖母と、直系尊属がいれば際限なく第2順位相続人になる。・兄弟姉妹が死亡していれば、その子(甥や姪)が代襲して第3順位相続人になる。ただしこの場合の代襲は1代限りで、甥や姪の子は法定相続人にはなれない。
僕の場合、配偶者や子孫はいません。僕が平均寿命まで生きるなら直系尊属も残っていないでしょう。兄弟姉妹では妹が一人いまずが、年の差はあまりないうえ病持ちなのでどっちが長生きするか正直わかりません。妹夫婦に子はいないので、甥や姪はいません。 つまりその時点で妹が生きていなければ、相続人不存在で遺産は国庫に帰属します。
国庫帰属
じゃあ、国庫に帰属する場合、どういう流れになるのでしょう。

利害関係人又は検察官が相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てます。これによって選任される相続財産清算人は、遺産の管理・処分を行います。・・相続財産清算人は、報酬付与の申立を行い、家庭裁判所が決定した報酬を受け取ります。それでもなお残余財産があった場合、相続財産清算人は国庫に帰属させる手続きを行います。
枝葉末節を省くと、利害関係人または検察官(国家公務員)が、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てることから始まります。 まあ借金でもなければ「利害関係人」はいないでしょうから、この場合の主語は「検察官」ということになるでしょう。んで遺産は清算(現金化)され、清算人の手数料を支払ったのち、国庫に帰属することに。
教科書的にはこの通りなんですが、問題は「周りに迷惑をかけない程度に迅速に動いてくれるのだろうか?」ってこと。 空き家となった住まいや管理ができなくなった土地が周りに迷惑かけたりしないでしょうか・・・
もちろん「死んだ後のことは知らね」 という立場もあるでしょうが、「立つ鳥跡を濁さず」っていう言葉もあります。そこが知りたいところなんですが、そのあたりの情報はネットには落ちてませんでした。まあ嘆いてもしょうがないので、少し考えてみましょう。
もし僕が億万長者なら迅速に動いてくれるでしょう。(清算すれば国庫にも清算人にも多大な利益をもたらすため)
ですがこちとら田舎の庶民です。たぶん少しの現金と始末に困るような不動産(家、田、畑、墓地)持ち・・・面倒な手続きをした代償としてそれなりに高額になるであろう「清算人の手数料」が出るでしょうか?それを考えると検察官が積極的に遺産を清算しようとするインセンティブはありません。儲からないから。
まず、墓地は墓のあるお寺が「永代供養慕に移ることが可能」って言ってくれたようです(父親談)。僕は「人間は死んだら無である」という真正仏教徒なので(「釈迦の墓」ってないでしょ)、自分の骨や先祖代々の墓なんて「どうでもいい」のですが、まあそういうことだそうです。いくら包む必要があるのか分かりませんが。(でも人口急減社会で菩提寺制度って持続不可能システムだよね)
次に。「家とそれが建ってる土地」は安値なら売れるでしょう。すでに家が建ってる土地は、自由に売り買いできまた家が建てられます。うちの近所でも宅地が売られ、小さな建売住宅4軒に生まれ変わりました。我が家も同じことができるかと。(都会なら「リバースモーゲージ」が使えると思います。あれは土地価値を担保にするので、交通に不便で地価の安い田舎だと成立しないと思いますけど)
リバースモーゲージは利用できるエリアや物件などに条件があります。・・・
また、リバースモーゲージの融資額は不動産評価額の5~7割程度といわれています。融資を受けている途中でも定期的に不動産評価額を見直し、評価額が下がると融資の上限額も下がります。融資上限ギリギリまで借りていた場合、不動産評価額の低下で融資額が上限を超えてしまうと、なかには存命中に超過分の一括返済を求める金融機関もあります。
金利変動もリスクです。金利が上がれば生前の返済額が増えるからです。・・・
死後の精算時に債務が残った場合、「リコース型」だと相続人が返済しなければなりません。相続人に債務が及ばない「ノンリコース型」を選びましょう。
リバースモーゲージは、金融機関によって融資の条件や金利などが千差万別です。今回の補助策も選択肢の一つとして、さまざまな方法をじっくり比較し検討してください。
問題は「田畑」ですね。現在、一般的な田舎の田は固定資産税や用水費は所有者もちで専業農家(オペレーター)に貸し出され稲や麦、大豆が耕作されるとともに草刈などの維持をお任せしています。 貸し出し費用が安価に設定され、オペレーターが大規模経営することで、何とか田舎の水田風景が維持されています。 (うちも少し赤字のようです。生産者や水田所有者に言わせれば、現状でも米価は安すぎです。)オペレーターも土地を買って生産活動をしてたら経営破綻します。つまり誰も田を買う人はいません。
あ、補足ですが、田舎の水田の多くは「市街化調整区域」に指定されており、家は建てられませんし、売買はそこで農業を継続する意志のある農家に対してでなければ認められません。「交通の便が悪くても、安いからそこに自宅を建てたい」とか、「農業じゃないけど使うから広い土地が欲しい」 というニーズはあるでしょうが、その人たちには売れないという・・個人の土地なんだけど、自由に売れないとは*。
*代わりに市街化調整区域は、自由に家を建てられ売買もできる「市街化区域」より固定資産税が安く抑えられています。が、安い固定資産税よりオペレーターへの貸し出し費が安い現状では・・・ 日本は一度制度ができると、状況が変わっても政府(税金を取る側)が不利にならない限り絶対制度を改善しないんですよね。これも変化に合わせて変わっていけない停滞日本の一因かと。
まあ農家が自宅を建てることは認められているので、「僕の家族が自宅を建て、やむを得ない事情でそれを第三者に転売した」という裏技で宅地化売却することは理論上考えられます。が、 なかなか難しいよう(法の趣旨に背いているのと、それで儲かるならみんなやってるはず。でもやられてないのは経済的合理性がないんでしょ)
次に畑です。畑はオペレーターも借りてくれないので、どうやって雑草対策(近隣の田畑へ迷惑がかからないように)しようか というのは高齢化しつつある「田舎の畑持ち」の深刻な悩みの種です。現状一番いいのは、「定年退職して大規模な家庭農園やりたいけど農家じゃない人」にただで借りて耕作してもらうこと。ついでに雑草対策とか維持管理をやってもらうのです。まあきちんとした人でないといろいろもめ事がでるんで、そのあたりのマッチングが難しいところ。 (不在地主でそんなことに悩むくらいなら、自分でそれ管理するべという理由も、地元に戻ってきた一因になってます。別に農業嫌いじゃないし)
閑話休題。さてそんな土地を含め、ほとんど現金のない相続財産の場合、相続財産清算人はどうやって清算(と利益出し)をするんでしょう?
参考事例として、相続した土地が管理できない場合、それを国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」というのが最近できたので、その引取条件を見てみましょう。もちろん「無料なら喜んで引き取ってあげる♡」という制度ではありません。
(ちなみに法定相続人は、「現金と優良不動産は相続するけど、不良不動産や借金は相続しません」といういいとこどり選択はできません。全部の遺産を相続するか全部放棄するかを選べるのみ。)
・更地であること・土地の境界がはっきりしてること・土地の管理に過分の費用が掛からないこと などの条件を国が審査し(審査手数料が必要)、審査に合格したら「10年分の土地管理費」を払うことで、引取ってもらえるという制度です。詳しくは政府広報をどうぞ
ここまで手を入れないと国はタダでも土地を引き取らない(不良資産)のだから、そこから考えるに「遺産は清算され国庫に帰属する」という制度は、「そうあるべき」な制度ではあるのだけれど、実際運用は「簡単には実施されない」とみておくのが無難なところではないでしょうか。 制度が決まっていても、忙しい(ただでさえ人手不足の)公務員や(営利事業である)清算人にはほとんどメリットがないシステムだからです。
じゃあ・・・
国庫帰属を避ける方法
国庫帰属を避ける方法は三つ。一つは遺言を残して誰かに遺産を送ると定めること。二つ目は養子とかで「相続人」を設定すること。最後は、僕と特別な縁故がある人が、「特別縁故者」として財産分与の申し立てを行い、家庭裁判者に認められること。
特別縁故者の事例としては、その人と同居してたり(例:内縁の妻)、仕事でなく介護していた人(例:長男の嫁)みたいなかんじです。詳しくは専門家に聞いてね。
僕が大金持ちなら、喜んで対象になってくれる人もいるかもしれませんが、田舎の一般庶民だとなかなかそんな奇特な人はいないでしょうねえ。 うーん。
だったらどうすんだ?結論は出ないけれど
こういうの、一括して死後清算(火葬の手続きとかも含め)してくれるNPOみたいなのがあれば頼りたいところですね。イメージとしては、信託銀行の「遺言信託」みたいな。でも、営利組織使うほど遺産(と高いであろう手数料支払い金)は持ってないから。
ま、ニーズはこれからどんどん出てくるだろうから、その発展を祈りたいところ・・・と言った感じかなあ。なんにせよ、ある程度現金を貯めておかねば・・・ここでもCash is King ですね。
*蛇足ですが 試験を受けるかどうかは別にして「FP技能検定2級」程度の資格試験参考書が一冊手元にあると、金融資産や不動産、相続や税金などの困りごとの時、ざっと調べができて便利です。試験範囲が広く浅くなので、最初に見る一冊として最適かと。それで調べるポイントが分かれば、そのあとネット検索するのもやりやすいですし。

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。