現時点での結論・・・投資はせず、一利用客として利用させていただきます。
サイゼリヤ、利用してますか?
昔、徒歩圏内にサイゼリヤがあった時分は、グラス1杯100円のワインと手ごろな価格のつまみを食べに、ちょこちょこ使わせてもらいました。昼間から1000円で楽しく呑める、いわゆる「せんべろ」ってやつですね。
でも、実家に帰ってからは徒歩圏内に店がないので、ほとんど利用しなくなりました。僕の中ではサイゼリヤって基本「居酒屋」ですんで。
が、ちょっとサイゼリヤの株でも買ってみようかな と思いたったので、調査も兼ね今日の昼食を食べに行ってきた次第。 ネタはこの記事。
1月8日、大手外食チェーンのサイゼリヤが決算発表を行いました。日本でデフレの勝ち組として輝いたサイゼリヤですが、現在の稼ぎ頭は中国市場です。実は、本番はこれからです。サイゼリヤが中国で大ブームになるのは「3年後」だからです。その理由を分析します。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
この記事では、「サイゼリヤの稼ぎ頭は中国。中国はこれから不況に突入するけれど、サイゼリヤは日本の不況時代に勝ち残った企業であるから、これから不況中国で伸びる!」と結んでいます。 うん。これ確かに正しいかも。
1月半ばの記事で、それ以来株価下がりつつけてるんで、そろそろどうかな?と。
店内は・・・混んでますね。 あと極力人手をかけずに店が回せるよういろいろ工夫してますね。
頼んだのは 最近改定された「ランチセット」(タラコとポップコーンシュリンプのドリア コールスローサラダとスープ付)と「若鳥のディアブロ風」を単品で頼みました。 ともに500円なので会計額は1000円。


ふむ。普通においしい です。 実はサイゼリヤの原価率はかなり高く、材料にも価格の割に良いものを使っています。それを自家工場で加工して、店では簡単な加工だけ(人件費を下げる工夫)でお客に提供しており、そのため味が安定し美味しくなるんですけど、原価が高い分利益は低くなるわけです。
だから、提供される値段を考えればコストパフォーマンスは最高。でもまあ、幅広い意味で「高級な冷凍食品」とも言えたりするから、もっとお金を出せばさらに美味しい料理もありますね。まあこれで必要十分水準だけど。 という評価かなあと。
で、食事しながら先ほどの記事の内容を考えつつ、投資するべきかどうか って考えていたんですが・・・
サイゼリヤの客(すなわち消費者)として考えるなら、この料理でそれぞれ500円というのは安くて大変ありがたいです。
が、投資家としてみると、この料理で500円ってのは適切な価格設定ではありません。安すぎます。
昨今は「なんでも原料高だから製品も価格を上げる」というのが消費者にも受け入れられており(なんでも値段あがってるもんね)、これらが600円なり700円なりでもすんなり受け入れられそれほど客足は減らないかと思います。むしろ回転率を考えると、ランチセットとドリンクバーで長時間席を占領されると、利益出ないしなあと。
事実、信じられないような数字なのですが、2024年の国内第2四半期の営業利益はわずか3400万円の黒字だそうで。 これはもう営利企業ではなく慈善事業NPOです。
国内事業も売上高は順調だ。他社が軒並み値上げを実施する中、サイゼリヤは低価格を維持し、集客力で優位に立っている。第2四半期累計の既存店の客数は前年同期比19.1%増、既存店売上高は同21.9%増と、業界では群を抜く。
一方、国内は値上げを実施しておらず、利益面で苦戦が続く。国内事業の営業利益はわずかに3400万円の黒字。期初に計画した営業利益の計画(20億円)からは大幅に遅れ、依然、低い利益水準から抜け出せない。
この記事は2024年4月に書かれたのだけれど、明確な値上げはいまだありません。
一方海外では
強い決算を支えたのは中国を中心としたアジア事業だ。アジア事業の売上高は372億9200万円と全体の4割に満たないものの、営業利益は55億5600万円と全体の9割以上を稼いでいる。
同上
鶏肉を頬張ってて結論が出ました。てか思い浮かんだというか。
「過去にサイゼリヤが低価格高原料費路線で日本の不況時代に勝ち残れた」のは、その当時の日本はデフレだったからだ。
だけど、これからの日本や中国を含めたアジアが直面するのは、おそらくデフレではなくスタグフレーションであろう ということ。
もしそうなら、デフレ状態で成功したビジネスモデルが、スタグフレーション状態で成功する必然性はない・・・と。
はい、ここで「デフレ」と「スタグフレーション」という用語が出てきました。これらの状態を図で表すと・・・

好景気で物価が上昇するのが「インフレ」、不景気で物価が下落してるのが「デフレ」、不景気だけど物価は上昇するのが「スタグフレーション」です。
「スタグフレーション」は最悪状態だけど、日本は実質賃金下がってるし、物価は上昇してるし、そのうち増税だし、もうこの状態に入ってますね。
繰り返しになりますが、原価率が高いが低価格で提供していたサイゼリヤが勢力を拡大したのはデフレ下の日本でした。今では考えられませんが、マクドナルドでハンバーガーが一個80円とかいう時代だったですよね。どれだけ原料が安かったんだ と。
でも、これからはおそらく原価は高止まりし下がりません。人件費やエネルギーコストの上昇、円安定着で下がる見込みはないから。 今一個170円のハンバーガーの価格が今後80円まで下がるなんて考えられません。
中国もおそらく同様だと思われます。
中国経済の先行きに対する懸念が高まる中、中国経済が「日本化」するのではないかとの声が喧伝(けんでん)されている。確かに、高齢化や不動産市況の悪化、累積債務など、目下の中国が直面している問題の多くがバブル崩壊前後の日本に似通っている。しかし、政治制度が違い、経済構造と発展段階も大きく異なる中国経済が「日本化」する可能性はほとんどない。それよりも、懸念すべくは中国経済の「ソ連化」だ。中国は軍拡で米国と激しい覇権競争を進める半面、深刻なスタグフレーション(景気の停滞とインフレの併存)で経済が大きく衰退したブレジネフ時代のソ連と同じ轍(てつ)を踏む可能性があるからだ。
という中国や日本のおかれた経済状態を図示すると・・・たぶんこういう感じになるはず。

この通りの図式だとすると、別のビジネスモデルを構築しないとサイゼリヤが利益を上げ続けることは難しそう。
一番簡単なのは価格を上げ、それに見合うだけ味も引き上げることですが、今の出来が良いだけに、消費者が分かるほど味を向上させるのは難しいのではないかと。
となると、今のジリ貧状態がしばらくは続くことでしょう。 でもま、それは投資家にとっては望ましくなくても、消費者はそこそこ幸せな状態ということ。
では、投資は別のところで頑張って利益を上げ、その利益でサイゼリヤでグラスワインとつまみを楽しむ という方向性で行きたいと思いました(これを捕らぬ狸の皮算用という)。
追加情報 2月25日
中国に進出したその狙いとは?
【「鳥貴族」を運営・エターナルホスピタリティグループ 大倉忠司社長】「今は中国も景気が悪くなっていて、デフレと言われているので、鳥貴族はまさしく日本では『デフレの勝ち組』。我々が進出することが貢献できるのではないかなと」
「鳥貴族よ、お前もか」(笑)。やはり勝ち組外食産業がこの論理で打って出るわけだけど、吉と出るか凶と出るか、非常に興味深いです。 当然スタグフレーションの可能性だって検討されたうえでしょうし。
投資を見送った零細凍死家としては、振り返って「ほれ、やっぱりブドウは酸っぱかっただろ」 と言えると良い と思ったりもするけれど、日本人としては日の丸振って「加油!(しっかり稼いで来いよ!)」というべきでしょうな・・・
「酸っぱい葡萄」(すっぱいぶどう)は、イソップ寓話(ペリー・インデックス15)の一つで、その邦題(日本語題名)の一つ。・・・狐が己が取れなかった後に、狙っていた葡萄を酸っぱくて美味しくないモノに決まっていると自己正当化した物語が転じて、酸っぱい葡萄(sour grapes)は自己の能力の低さを正当化や擁護するために、対象を貶めたり、価値の無いものだと主張する負け惜しみを意味するようになった。

元河川技術者、現在は里山保全の仕事をしているおっさんです。西尾市在住の本好き歴史オタク。
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