45年以上前に買ったヘリコプター、安心して乗れますか?

イランの大統領が乗ったヘリコプターが悪天候のため墜落し、大統領は死亡したそうです。 

今話題の国の指導者ですから、ひょっとして暗殺の可能性もあるのか?だけれど、さすがにこのタイミングで、そんな大それたことはしないと思うなあ。

それはともかく、イランの大統領が乗ってたヘリコプターは、米国のベル社が1960年代に開発した「ベル212」で、イランが45年以上前に購入したものだそうです。

イランメディアによると、墜落したのは米国のベル社が1960年代に開発した「ベル212」。専門家はロイター通信に対し、墜落した機体は、対米関係の悪化や経済制裁の影響で航空機やヘリの輸入が難しくなる79年のイスラム革命以前に導入されたモデルとの見方を示す。・・・イランでは機体の更新が思うように進まず、部品の輸入も難しいことから安全性に懸念が示されてきた。米メディアによると、ザリフ前外相は今回の墜落について、米国による制裁が要因になったと主張。これに対し、カービー米大統領補佐官は20日「全く根拠がない。どの国も機器の安全性を確保する責任がある」と反論した。

イランの墜落ヘリは45年以上前に導入か 制裁で機体の更新進まず

事故原因はまだわかりませんけど、イランの前外相が「米国による制裁が要因になったと主張」って意味深ですね。

制裁のため、こんな老朽化したヘリが現役で、なおか交換部品も不足気味(入手困難)で起こった事故の可能性を示唆したんじゃないかと。

だけど、それなら「そんな危険な機体に、自国の現職大統領を乗せるな!」とつっこみたい。てか、大統領とその取り巻きも不用心すぎます。 某北朝鮮の首領は、落ちる可能性のある飛行機には絶対乗らず、装甲列車で移動するそう(しかも安全のため?超低速移動)。要人なんだから、そこまでいかずとも適度の安全意識はあって良かったですよ。それに、反米の大統領がなんでアメリカのヘリに乗車してんだよ。せめてロシア製にしろよ。

僕だったら、購入して45年経つヘリコプターなんて、メンテナンスがしっかりしていたとしても乗りたくはないですね。  いろいろガタが来ているでしょうし、見た目には大丈夫に見える部材にも目に見えない金属疲労が進んでいて、安全性に不安を感じるから。

と考えてたら、ふと「そういえば日本でも原子力発電所の運転期間が、大した議論もされず40年から60年に延期されるな」と思い出しました。 何かの技術革新により運転期間が延長されるのではなく、悪い言い方をすれば(厳格な調査をして)安全率を削ることで運転期間を伸ばす、あまり感心できないやり方です・・・

 結局、何が大丈夫であれば原発は安全なのか――。
 2023年5月に「GX脱炭素電源法」が成立し、国内における原子力発電所の60年超の運転が可能な制度となった。実は原発の運転期間は原則40年、最長60年と定められており、同法でもその点は変わらない。今回はこの枠組みを維持しながら、安全審査などで停止した期間分の延長が新たに認められることになった。
 今回の制度変更が、「何らかの新技術が開発されて長期運転が可能になった」というものなら話は分かりやすい。しかし、「従来の保守点検や安全性評価の手法が60年超でも有効であると判断された」というのが実情で、一般にはやや分かりにくい面があるのは否めない。その点は、規制当局も認識しているようだ。2023年7月、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁は、「長期施設管理計画の認可制度に関する分かりやすい説明資料」と銘打った68ページの資料を公表した。
・・・そんな同資料の中で、原発の運転で進展する劣化事象として挙げられたのは、[1]低サイクル疲労、[2]原子炉容器*2の中性子照射ぜい化、[3]照射誘起型応力腐食割れ、[4]2相ステンレス鋼の熱時効の4事象。さらに、停止中でも劣化が進展するとされる事象として、[5]電気・計装設備の絶縁低下、[6]コンクリート構造物の強度低下の2事象があるとした。
 同庁によると、これら6事象は短期間で進展するものではなく、あくまでも長期間運転した際に課題となる。原発では、交換可能な設備は定期点検などを経て、適宜新品に交換されている。長期運転に向けて問題となるのは、原子炉容器をはじめとする交換が難しい設備となる。

そこで本稿では、6事象のうち[2]原子炉容器における中性子照射ぜい化に着目し、長期運転に向けてどのような監視体制や対策検討がなされているのかについて、原子力規制庁や電力中央研究所(電中研)などへの取材を基にみていく。

がよければ安全?原発運転60年超の課題、中性子照射ぜい化とは

丁寧に書かれた記事なので、興味ある方は見てみてください。

原子炉中心付近は放射線レベルが高いので部品の交換ができず、点検もがっつりはできません。絶えず放射線の影響を浴びる部材を抱え、どう安全性を判断し、運転期間を伸ばしす認可を下すのか、どんな議論がされてるんでしょう。

この記事に出ていた原子力規制庁の付属資料「長期施設管理計画の認可制度に関するQ&A」も読んでみました。(QAなので、本文より知りたい疑問が知りやすい)。

読むと大変立派な作文で、形式上は可能な限りの安全性を求め、それを満たされたものが長期的な運転が認められるような形になっています。(興味を引いた部分を要約引用します。役所文書なのでやたら長く分かりづらいので)

Q1 原子炉の運転期間に 60 年の上限がなくなっても、安全は確保できるのですか。
A劣化を予測・評価すべき項目が不足なく選ばれ、妥当な予測
手法を用いて劣化が進んでも規制基準に適合した状態を維持できると確認されていれば、一定期間の運転をするために求められる最低限の安全性が確認されたものと考えています。
Q4予測・評価の対象としていなかった想定外の形態での劣化により、事故につながることはないのですか。
Aあらゆる事象を想定できる訳ではありませんが、典型的な6事象と、原子炉の使用状況に応じて懸念すべき劣化事象に対して予測・評価を行うことにより、想定外の劣化事象による問題を減らす努力を絶えず行っています。
Q6 事業者は常に、劣化が進んでも規制基準に適合した状態を維持できると主張するでしょう。原子力規制委員会はそれを追認するだけになるのではないですか。
A規制基準に適合することを立証するのは事業者の責任であり、その説明が不十分であったり、適切な根拠がなかったりする場合には、原子力規制委員会は認可せず、運転の継続は認められません。
Q8 従来からあった、40 年から 60 年への運転延長の認可や、高経年化技術評価とは、法律上の仕組みとしてはどう違うのですか。
A運転延長認可との比較で言えば、40 年時点での 20 年後を見通した1回のみから、30 年時点から 10 年ごとへと、確認の頻度が高くなっています。
Q13 40 年目に限って行う「特別点検」とはどのようなものですか。
A40 年目に限り「特別点検」という特別に詳細な点検を行います。
将来の劣化の予測・評価との関係で言えば、数値的な予測・評価に直接に用いるのではなく、予測・評価を行う前提条件を再確認し、それを変更することが必要であれば考慮するという形で用いることになります。
特別点検の具体的な項目としては、原子炉容器の欠陥の有無を調べる非破壊検査や、コンクリートを細長く棒状にくり抜いて強度を調べるコアサンプリングなどがあります。

原子力規制庁「長期施設管理計画の認可制度に関するQ&A」

「厳格な調査」については40年目に行う「特別点検」が大事みたいなので、その実態を覗いてみると(川内原発・2022年鹿児島県の初分科会の報道記事)・・・・・・こりゃ素人が読んでも全然ダメな「うんこ説明」ですわ。

”原子炉容器の母材や溶接部の状況について九電は「表面の深さ5ミリ程度の欠陥が検出可能な超音波探傷試験で確認した結果、有意な欠陥は認められなかった」と説明。これに対しては委員から「『5ミリ程度』の持つ意味が分からない。それ以下の欠陥はいいのかとなる」、「『欠陥は認められない』という結論を聞きたいのではなく、具体的な評価を分かりやすく説明すべきだ」といった指摘があった。”

てか、電力会社はまともに説明しようとする気ないね。「その説明が不十分であったり、適切な根拠がなかったりする場合には、原子力規制委員会は認可せず、運転の継続は認められません。」を厳格に適用してほしいもの。

川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の原則40年を超える運転延長に関して独自に検証する県の専門委員会の分科会は2日、1号機の原子炉容器の特別点検の結果について九州電力から初めて説明を受けた。特別点検は運転期間を延長するために必要な手続き。原子炉容器の状況について九電は「有意な欠陥は認められなかった」とした。


原子炉容器はプラント運転を続けることなどで金属の粘り強さが低下するといわれる。昨年10月から今年4月にかけて実施した1号機の特別点検では、原子炉容器の表面や内側、配管などで金属疲労や腐食割れなどが起きていないか、超音波を使った試験や目視などで確認。取得したデータを分析した。


 点検結果のうち、原子炉容器の母材や溶接部の状況について九電は「表面の深さ5ミリ程度の欠陥が検出可能な超音波探傷試験で確認した結果、有意な欠陥は認められなかった」と説明。他の対象部位を含め全4項目で「有意な欠陥は認められなかった」とした。
 しかし、これに対しては委員から「『5ミリ程度』の持つ意味が分からない。それ以下の欠陥はいいのかとなる」、「『欠陥は認められない』という結論を聞きたいのではなく、具体的な評価を分かりやすく説明すべきだ」といった指摘があった。
・・・終了後、座長の釜江克宏・京大複合原子力科学研究所特任教授は「初めての特別点検結果に関する委員の関心は高く厳しい意見も多かった。今後、本格的に審議することになるが、九電は透明性をもった説明をしてもらいたい」と話した。

川内原発特別点検 県の分科会に九電説明「有意な欠陥なし」
2022年8月3日

こんな説明じゃ安全率落とせません(運転延長無理)ね。それから2年近く経ちますが、まともな議論されているのかな。・・・議論がしっかりと行われたうえで、延長が認可されるなら良いのですが、日本では愚にもつかない説明会を開けば「科学的、技術的な検証がしっかり進められている」と認可ありきで進む事例もなきにしもあらず・・・日本でも、老朽化したヘリ(原発)の墜落 は勘弁 ですよ。

17日は塩田知事にとっては2期目を目指して立候補を表明した知事選前の、最後の会見となりました。
これまでに立候補を表明しているのは塩田さんと元県議の米丸麻希子さん、市民グループ共同代表の樋之口里花さんの3人です。
・・・樋之口さんが川内原発の20年の運転延長停止を訴えていることについて、次のように反論し、延長を容認する考えをあらためて示しました。
(塩田康一知事)「科学的、技術的な検証を県としてもしっかりと行い、国のほうの審査もいただいて認可を受けている。一連の手続きを経て行ってきていることを説明したい」

南日本放送「天皇皇后両陛下ご出席 2029年全国植樹祭招致を表明 川内原発「延長容認」改めて強調」

環境省流「火に油を注ぐ」会議運営法

「火に油を注ぐ」 ただでさえ危ないものに勢いをつけ、事態を悪化させることのたとえ。 また、激しい憎悪や恋情をあおることのたとえ。

コトバンク

模範的なお手本です(笑)。

環境省職員が水俣病被害者側の発言中にマイクの音を切った問題で、伊藤信太郎環境相は熊本県水俣市を再訪し、被害者らに直接謝罪する事態に追い込まれた。

 1日の患者や被害者らとの懇談後、伊藤氏は記者会見で職員がマイクを切ったことを「認識していない」などと発言した。

・・・懇談の場で司会をしていた同省特殊疾病対策室の木内室長によると、懇談の場では参加団体に3分ずつの持ち時間があり、3分を過ぎた場合にマイクを切るという運用方針を事前に決めていた。当初は会場で周知する予定だったというが、木内室長は「(メモを)読み飛ばしてしまった」と話す。昨年度も同じ運用方針だったが、実際にマイクを切ることはなかった。

謝罪まで1週間…後手に回った環境省 消音に省内からも疑問の声

まず大臣はアホですね。 でもこの人一応選挙に勝って国会議員になったんですよね。 

2009年、第45回衆議院議員総選挙に自民党から立候補。公明党の推薦も受けたが民主党の石山敬貴に敗れ、重複立候補していた比例東北ブロックでも復活出来ずに落選した。・・・2012年、第46回衆議院議員総選挙に自民党から立候補し、前回敗れた石山を大差で破って4選。国政に復帰。

wiki

落選の憂き目にもあってるんだし、地元のメンドクサイ有権者をうまくさばき、一票入れてもらう、関心を持ってもらう技術とその重要性は持っているはず。けど、環境大臣として(役所的には)メンドクサイ関係者に、環境行政に一票入れてもらう、関心を持ってもらう重要性は認識してなかったんですかね。 まあ、してなかったから今の事態を招いたんでしょうが。

次に、会議を司会していた(実務トップの)室長もドアホ。

本省勤務の国家公務員では俸給7級・8級に該当し、これらは高級官僚と呼ばれる範疇である。

wiki

大臣が出席する会議だから、そつなくこなすことの重要性は認識していたでしょう。毎年実施していた会議だから懇談会でしゃべる相手がどんな人でどんな話をするかは情報があったはず。にも関わらず「3分過ぎたらマイクを切る」と鬼ルールを定め、それを血も涙もなく実施してしまったたら、相手がどう思うか、どう反応するか、そしてどう報道されるか 当然想定できたはず。想定していなかった時点で、高級官僚としての評価は零点。

てか、

当初は会場で周知する予定だったというが、木内室長は「(メモを)読み飛ばしてしまった」と話す。

会議運用も役人として「ありえんだろ。零点」というお粗末なレベル・・・(本当ならね)

被害者と役所の関係においては立場も異なり、お互いどうしても寄り添えない部分、譲れない部分があり、理想的な形で懇談し問題解決にもっていく ということは非常に難しいこと(おそらく望めないこと)だと思います。

それでも会議を開催する役所側は(本音はどうであれ)その方向に向け努力していくという姿勢(とそのアピール) は当然必要なこと。

にもかかわらず、こんなルール定めて実行しちゃうって、「理想に向け努力していますという姿勢」がまったく感じられないですね。だから対話相手として信頼すらされません。

今回の会議は、広い意味でのリスクコミュニケーションにあたると思うのですが、信頼性を得るような努力はかっちり示さないと、環境省としても、会議やる意味ないと思うんだけど。

「リスクコミュニケーションとは、化学物質による環境リスクに関する正確な情報を行政、事業者、国民、NGO 等のすべての者が共有しつつ、相互に意思疎通を図ることである。リスクコミュニケーションの成功は、利害関係者間の理解と信頼のレベルが向上したか否かで判断されるとされている。」

リスクマネジメントをより適切に実施する上で、利害関係者間でリスクに関する情報、体験、知識などを交換しあいながら相
互理解を図らなければならない。ここで「リスクコミュニケーション」が必要となってくるのである。
 リスクコミュニケーションとは、化学物質による環境リスクに関する正確な情報を行政、事業者、国民、NGO 等のすべての者が共有しつつ、相互に意思疎通を図ることである。一般には、米国国家調査諮問機関(National Research Council;以下、NRC)による 1989年の報告書における定義が用いられている。
「個人、集団、組織間でのリスクに関する情報および意見の相互交換プロセスである。(リスクに関する情報および意見には)リスクの特性に関するメッセージおよびリスクマネジメントのための法規制に対する反応やリスクメッセージに対する反応などリスクに関連する他のメッセージも含む」同報告書では、リスクコミュニケーションの成功は、利害関係者間の理解と信頼のレベルが向上したか否かで判断されるとされている。

環境省 平成12年度リスクコミュニケーション事例等調査報告書