家を造ろう その3 基礎はしっかり。 (その1)

長い前書き。(建て替えした我が家の事情)

立て直す前の家は、昭和36年に建てられました。昭和36年造の家は、その前に建ってた家が昭和20年の三河地震で倒壊した跡地に立て直したのです。 (貧乏で倒壊後、16年間家が建てられなかったそうな)

やっとの思いで大工さんとうちの爺さん(百姓)の共同作業で建てたらしいんだが、取り壊す時には「軒が傾いてる」「床がベコベコ」「基礎コンクリートにヒビ入ってる」。市の耐震点検受ければ判定は「ヤバいす(安全度0.3以下)」 「壊すんだったら補助金20万円あげますし、補強にも補助金出しますよ」状態。つまり「既往建物倒壊実績あり」&「不同沈下の恐れあり」の要注意地区。 (某番組で「なんということでしょう!」というくらいのレベルは裕にあったと思う。)

次に地形・地質の観点。うちのまわりは「池」や「谷」のつく字名ばかり。大昔は矢作川の氾濫原で、文字通り旧河道や池だったところ。地下水位が高く、新しい地層なので地盤は軟弱。西尾市の「揺れやすさマップ」によると、「東海・東南海・南海地震」での想定震度は7。曰く「耐震性の高い木造構造物でも、まれに傾くことがある」箇所だそうな。まあ妥当です・・・

うーん・・・正直、このレベルだと、地盤のしっかりしたところに引っ越すのがベストな手段だと思います。余計な基礎工事しなくていいし。 西尾市なら西野町~矢田にかけての碧海台地の上がおススメ。最近宅地造成してますし。まあ地盤がいいから地価は安くないです。

うちも一家で移転しようか?と家族会議をしましたが、いろんな事情から現在地で建て替えることになりました。 ちなみにうちの建築形態は、大工さん(工務店)と契約し、建築申請用の図面だけ建築士さんに書いてもらってる形。)腕のいい大工さんで上部構造は全く不安ありませんでしたが、正直地盤調査と改良は専門業者にお任せみたいな感じ。(無理ないですね)

ここは僕が地盤改良の実施方法を決めちゃいます。僕は当時土木職の公務員で、デスクワーク中心とはいえ土木構造物の監督を数年してましたし、地盤も少しは分かってる・・・はず。大学で土質工学を2回受講したし・・・学生時代、まったく興味なくて単位を落としただけだけどさ。実務で地盤が大事!ってよく分かりましたよ! 「砂上の楼閣」って言い得て妙だよね。

ここから本題です。

家を建てる時は、まず地質調査しましょう。最近は住宅を建てる際に一般的な試験である「スウェーデン式サウンディング試験」を実施する住宅業者さんも多いですが、やらない業者さんもいるようです※。この調査は住宅建築費には含まれず追加費用が発生しますが、数万円で定量的な安心が買えるなら安いもの。実施させてください。

「スウェーデン式サウンディング試験」を簡単に説明すると、地面に「重し」(最大1kN)をつけた棒を立て、「棒を25cm土にめり込ませるのにどのくらい負荷が必要か」を測定することで、土の固さを測定する手法です。負荷の測定法ですが、棒(ロッド)の先は「ねじ」が切ってあり、棒を回すとねじが地中に入っていく仕掛け(だから棒を「スクリューロッド」と言う)。棒の回転数が負荷、すなわち土の固さを示すわけです。

測定本数は住宅の中央と、四隅の5本。これは部分的に弱くてそこだけ沈下してしまう「不同沈下」に備えてです。 また1本の調査は深さ10mまで、25cm毎におこないます。つまり深さ10mまで深度方向に40個の連続した地盤強度データが得られるわけです。こんな感じ。

これうちのデータ。だいたい4mくらいまで「自沈」層です(赤色に塗られた部分ね。 「重り」の自重だけで25cm沈む状態)。5点ともほぼ同じ。うん、文句なしに地盤補強が必要です。調査が終わって対策方法が提案されるそうなので、その間勉強しましょ。

教本は平成26年発行 オーム社「住宅地盤がわかる本 安全な地盤の基礎・設計の考え方」 読者の対象は、施主~設計者となっています。が、ふつうの施主には難しいと思うな。残念ながら土って難しいのです。なんせブラックボックスの上に現象が複雑だから。それでもこの本は丁寧に書かれており、おすすめです。とりあえず下にのせる前文(の抜粋)は読みましょう。これが現実です。がっくりしないで。勉強する価値があると前向きに考えましょう(苦笑)。

基礎・地盤に関しては、平成元年以降、法の整備が急速に図られてきたが、トラブルは一向に減らない。この背景には、設計者や営業担当者に、基礎や地盤は上部構造と異なり、わからないものというあきらめの気持ちがあるのではないだろうか。・・・

本来、住宅会社や設計事務所が、その土地に起こる災害による被害の可能性を居住者に伝えるべきであるが、そのような知識を有している技術者は少ないのが現状である。・・・

戸建て住宅のような四号建築物の基礎の設計は、現実的には地盤調査会社に任せることが多い。・・・しかし、基礎の設計はあくまで設計行為であり、仮に地盤調査会社が基礎の選定案を示したとしても、最終責任は住宅会社あるいは設計者にある。・・・

本来、地盤工学とは理論と経験に基づいた学問であり、戸建て住宅の場合は地形と地盤データの両方の知識が要求され、それに加えて建築の知識も要求されるので、建築の専門家であってもなかなか勉強しづらい分野である。・・・

今は、住宅を購入しようとする一般の人も、インターネットをとおして簡単に基礎・地盤に関する知識を入手できる時代である。しかし、これらの情報を十分に咀嚼できず、また、建築基準法や専門書の内容をひとりよがりに解釈してしまう施主がいることも事実である。

僕だって建築基準法や専門書の内容をひとりよがりに解釈したくはないけどさ、まさに僕が体験した実態はここに書かれた通り。

しかし、「建築の専門家であってもなかなか勉強しづらい分野である。」って・・・アンタらそれで専門家なの?って思うけどさ・・・建築マニアか、関係者以外のふつーの施主はどうすればいいんだよ!自衛のため自分で勉強ってのも、 問題だよね〜。

 

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しばらくして対策案が下請けの地盤会社から元受けの大工さんを経てやってきました。木杭を48本深さ5mまで打ちましょう とのこと。 80万円~90万円くらいの見積もり。あれ、この案を推す説明はだれがすんの? え、自分で読むんですね。 僕ムハンマドじゃないし、対策案はコーランじゃないのですが・・・

でも僕は図面が読めた!うん、杭の本数と配置、あと調査結果から杭の長さは妥当でしょう。(計算書も・・・見たっけなあ・・・)想定したより安いし。でもなんで木杭にしたのか分かりません。杭なら、現場の土とコンクリートを混ぜてコンクリート固形体を造る柱状改良工法がまあ一般的かなと思いましたけど。

木杭だから一概にダメ ってことはないです。東京駅の地盤だってヴェネチアの地盤だって木杭で地盤補強してますから工法としてはアリですし、それがうちにとってベストな方法なら、木材を利用するのは良いことだと思います。が、工業製品じゃないから品質管理が心配だな。

僕「なぜ木杭なのかな?土を掘って混ぜなくて良いから安くできますというのは分かるけど、この工法が耐震にベストなのかな?必要であれば、基礎は超大事だから予算はなんとかするつもりなんですが。そもそも案と言いつつ、木杭案しかない。これを選択した理由も書いてないから、これだけでどうやって決定するのかな。」

大工さん「うーん・・・他の工法のパンフレットも貰ってきましたが・・・」

僕「分かりました。地盤会社へ直接行って聞いてきます! 資料読むので全部ください。あと連絡先教えてください!」

こういう時、伝言ゲームは危険だし効率悪いですから直接聞いてみます。意地悪施主で申しわけないですが、こればかりは納得できないものにお金は払えない。基礎工事は上部構造と違ってやり直しできないのです。

ちょうど職場(隣接県)の近くに地盤会社の担当部署があったので、好都合でした。

続く。

 

※以下のような建設省告示が出ているので、「何らかの方法で地盤の許容応力度をはからないとアウトだろ」 と僕は思うのですが、地盤が丈夫な地域 で施工するときは慣例で?実施しない例も聞きました。多くの場合、経験則からOKとするんでしょうが、結果OKでも、定量的な結果なし、定性的な経験だけで施主に問われたらきちんと説明できるのか、他人事ながら心配です。

で、でも告示に地盤強度で基礎構造を決めよって書いてある以上、検査機関は、そこチェックするから安心じゃないんでしょうか・・・?

残念ながら。建築士が設計した一般的な二階建て以下の木造住宅では、強度計算書類を検査機関に提出する義務はありません。さらに耐震強度に地盤の強弱は反映されません。床面積や屋根荷重などに対して、筋交いの入った壁や耐震壁が基準以上あれば、耐震性があると判断されるからです。   (中日新聞「家が倒れる時 熊本地震に学ぶ」より抜粋要約)

・・・ザル法じゃなかろうか?

建設省告示第1347号(平成12年5月23日)
建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件
第1  建築基準法施行令第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、 次の各号のいずれかに該当する場合を除き、地盤の長期に生ずる力に対する 許容応力度20kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、 20kN/m2以上30kN/m2未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、 30kN/m2以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。 

なお、法体系について検索したところ、 NPO住宅地盤品質協会 さんに良くまとまっていましたので、参考にどーぞ。

 

 

家を造ろう その2  だれと建てる?

自分で家を建てる という選択肢を除くと、だいたい次のような選択肢があります。

大手メーカーと建てる   

メリット

  1. 「名の通った大手メーカーだから」という安心
  2. あんまり手間を掛けずに家が建てられる
  3. 営業マンの礼儀作法がきっちりしてる
  4. 早い(デメリットにもなり得る?)

デメリット

  1. 高い
  2. 意外に自由度が少ない
  3. 施工するのは大手じゃなく下請けだよ

メリット1.僕は「大手で名前が通ってるから安心」 とは全く思ってないですが、そう思う人は多いみたいです。会社が設計部、工務部、営業部等分業制になっており、それぞれ専門家がやりますから、更新の激しい建築基準等もちゃんとアップデートされ守られているだろう とは思いますが。 実施工は下請けです・・

メリット2.最大のメリットだと思います。任せておけば、必要な時期に営業さんが来てくれ、いくつかの選択肢で方向を示せば、最低限の手間で家が建っちゃいます。

メリット3.住宅展示場を見に行けば、丁寧なおもてなしをしてもらえます。「お客様は神様です」教育がしっかりされていますので、嫌な思いをすることはないでしょう。 「チヤホヤ」されるのはそれなりに気分のいいことですし、「金払う俺に業者がペコペコするのが当然」という人もいますしね・・・

メリット4.工事に着工すると、完成まですごく早いです。多くの部材は工場で造ってくるようです。

一方で、とあるメーカーは「厳しい工期設定され、絶対厳守」 といううわさも聞きました。日当制だと発注元はここシビアになりますわなあ。きちんと設定してあればよいのですが、きちんとしてないと・・・ それに基本的に施工を急がせて品質に良いことは何一つないですからね。施主はそのあたりわからないですし、下請けに口出しもできないです。

デメリット1. メリット3.の裏返しです。あなたの住宅契約費用には、間接的に住宅展示場の建設費・維持費、広告費、社員の教育費等が載ってます。

デメリット2.完全な自由設計なら別ですが、たいていは基本設計(パターン)をもとに施主の希望を受け少し修正して建築することが多いです。メーカーだけに、「標準部材」を大量生産してるので、その範囲でできる設計が望ましいから。(コスト縮減につながり、悪い面ばかりじゃない)

デメリット3.実際の工事は、メーカーと契約した下請の工務店が行います。 下請けがあたりならいいんですが、施主に選択権はありません。もし外れてると、メーカーと下請けとどっちが責任取るんだよ・・・と内ゲバ状態になっちゃう危険性あり。

 地域の工務店と建てる

メリット

  1. 安いよ
  2. 地域を良く知ってる。ある意味安心かも
  3. 伝言ゲームが少ない
  4. 間取りの自由度は高い

デメリット

  1. どうやって見つける?
  2. 普通、「お客様は神様」というふりはしてくれないよ
  3. あんまり提案能力や知識はないかも(相談相手・・・)
  4. 倒産しちゃったら?
  5. 工期は長いよ

メリット1.展示用の家は持ってないし、営業は社長がやってたり、そもそもいない(大工さんだけ)ということも。間接費用が小さいので。払った分だけあなたの家にダイレクト還元されます。

メリット2.日本は狭いとはいえ、それでも微地形や気候が違い、それぞれの地域によって住宅も特徴があります。地元であればその地域の住宅建築に精通してます。また、その地域で仕事を受けていますので、もし手を抜いて悪い口コミが広がると仕事できなくなります(特に田舎は口コミ社会ですし)。僕なんかは「大手だから安心」思考より、こちらの方が安心できるメカニズムだと思います。

メリット3. 「伝言ゲーム」って何人かの口を経ると、当初の指示が誤って伝わる現象です。仕事でもそういう経験はありますよね。それが住宅建設など、口頭連絡を三次元空間に拡張するところでは・・・。

施主「こうしたい」→営業さん→工務部(監督)→下請大工さん できて施主「うが~」

頻繁にあり得る話だと思います。僕は施工もいちいち口出しするつもりだったので(ウルサイ客)、社長=営業=筆頭大工の最小単元の会社にお願いしました。現場その場で話ができるのは、伝言ゲームを最小にでき、良かったです。(隣の家に住んでたってのも大きいけど)

メリット4.まあたいていは在来工法の家でしょう。在来の家にも定石がありますが、自由度は比較的高いと思います。あ、でも木造専門の工務店で軽量鉄骨造とかは無理筋だよ・・・

デメリット1.最大の関門。うちは新聞取ってて、週末は住宅関係のチラシの数がすごいんですが、その中から自分と感性が近い住宅を造っている会社の家を見に行って、それで決めました。 うーん、新聞取ってないとどうするのかなあ、ネットの口コミかなぁ・・・。まあいずれにせよ見に行くのが一番良いです。

デメリット2.大工さんとか職人さんは、ぶっきらぼうな人が多いです。無口な人も多いですし。「お客はパートナー」とは思っていても「お客様は神様です」とは思ってないだろうし。うちは自分が「モトさん!」父は「大将!」って呼ばれてましたが、そう言われるとあんまり気分の良くない人もいるんじゃないかなあ・・・。僕はそういうの全く気にならないのですが、より丁寧な接客が好きな方は、メーカーのほうがいいと思います。

デメリット3. 感性が近い家を建てるところを選べばあんまり問題はないと思うけど、設計力とか提案力はあんまり強くないす。 迷ったら相談もできるけど、メーカーの分業制と違い、大工さん一人の知識(しかも大工知識もカバーしなきゃいけない)ので限りがあるますよ。まあ迷ったらその都度施主が勉強すりゃあ、維持も含めてトータルでそれが一番なんだけど、時間は取られるよね。

特に杭とか構造補強は大工さんの弱いところ(建築士だって微妙かも)。僕は土木が専門だったので住宅の基礎に関する専門書を買ってきて勉強したけど、ここはセカンドオピニオンが欲しかった。

デメリット4.うーん、零細企業だと心配ですよねえ。今の住宅は10年間の瑕疵担保保険が義務ですし・・・ それでも社長が若くて、他に何件受注しているかを確認しました。

デメリット5.在来工法の家は、現地での施工部分も多いです。さらによその家も受注してると人手が足りず、施工は長くかかりましたよ・・・まあ間違いなく丁寧に施工してありましたが。

 

建築家+工務店で建てる

僕は自分が建築家を演じてるつもりだったので考慮しませんでしたが、セカンドオピニオンが欲しい専門家の知恵を借りたい って思ったら、これは良い手かも と思いました。普通は平面で書かれた設計図を見て、それが空間としてどうなるか なんて想像できないですしね。まあ当然設計費が別途かかるわけですけど。

ちなみにメーカーや工務店ではお抱えもしくは提携している設計士が、役所に提出する(建築確認)最小限の図面を書いてくれます。 僕の家だと10枚くらい。 きちんと建築家を頼むと、これが60〜90枚くらいになるそうです。

つまり施工者と別に建築家を頼むと、設計の段階で細部まで詰めておくわけ。工務店の場合だと「その段階になったら決める」ことも多いです(メーカーは中間のどこか)。だから後者だと、最初に決めた請負額が、最終的に増額することが多いんですよ。・・・いい家にしたいから、どうせ2000万円出すなら、10万増額ばかしでよい部材が入れば、それ使いたいですよね・・・以下繰り返し・・・

建築家をどう探すのか は経験がないので分かりません。それでも「感性の合う建築家」を見つけることが大事ではないかと。「ビフォーアフター」や「完成ドリームハウス」を定期的にみてますと「住みそうな家だな」とか「住みにくそうな家だな」って好みがやっぱりありますもん。 特にビフォーアフターは何度か登場する匠もいたので、「自分が頼むならこの匠(建築家)に頼みたい」って出てきますね。そういう感じで探せばいいんじゃないかと。

更に詳しく、だれと家を建てるか等、「ゼロからの施主学」を勉強したい場合は、渡辺武信「住まいのつくり方」―建築家といかに出会い、いかに建てるか  中公新書 が参考になると思います。この本も絶版になってしまったのか・・・