船頭多くして船山に上る

読み方:せんどうおおくしてふねやまにのぼる

意味:指示を下す側の人間が多すぎて方針や行動がまとまらず、物事があらぬ方向へ進むこと。組織とその指揮系統がまるでまとまりを欠くさま。

weblio辞書

まさにこの言葉の良い使用例!このニュースを見てそう思いました。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は2日、東京都内で理事会を開き、橋本聖子会長が意欲を示していた女性理事の比率40%を実現するため・・・
日本オリンピック委員会(JOC)専務理事の福井烈常務理事が辞任を申し出たため、組織委の理事は現在33人でうち女性は7人。新たに理事を加えるため、理事数上限を35人としている定款の規定を45人に改めることを評議員会に諮る。新理事候補が全員承認されれば、理事45人のうち女性は19人で比率は約42%になる。

理事候補に高橋尚子さんら12人 女性比率向上へ東京五輪組織委

組織委員会って、いままでも理事が34人もいたんですね。 そんなたくさんの理事がいる会議で、自由闊達に議論が行われ何かが決まるはずもないよねえ。

こういう場合、理事はほぼお飾りで、会長(実権を持つ人)が事前に結論を決め有力理事に根回しし、その他大勢はそれを拍手で承認する形でないと、物事は決まりません。←日本の体育会系組織でよく観察される、「形式上みんなで議論して決めた(実態は上意下達・翼賛システム)」の典型事例ですな。

森前会長は「女は話が長い」と言ったのですが、たぶん本心では「男社会の(体育会系翼賛システム)運用をわきまえない、女子供は黙っておれ!」と言いたかっただけで、まあああいう発言でしたけど、本人としては女性だけを蔑視するつもりはなかったのでしょう。上意に反対すれば、男性は「子供や若造」として叱咤されたでしょう。てか、アンタの話が一番長いんだがね。

なんだそんな話、田舎の会合では「あたりまえ」に見られることじゃん。 この時、下々としては会長の長話を笑顔で受け止め、寒い親父ギャグに爆笑することで、上位に一つ一つ登っていくことも可能。・・・問題の本質はそういう組織構造なんでしょうけど。

閑話休題。んで、理事の上限を35人から45人に増やすだと〜。 オリンピックを月で開催するつもりでしょうか?

あと解せんのが「女性理事の比率40%を実現」することで、「ジェンダー平等」だとぬかすところ。僕の知識では、日本の人口に対する男女比は1:1だから、女性理事が少なくとも50%はいないと、ジェンダー平等にはならないと思うんだけど。事の経緯を踏まえれば、女性比率60%だっていいと思うぞ。

まあ、僕の知らない複雑な仕組み(例えば女性理事はその一票が1.2くらいでカウントされる)があるんでしょう。

でもさあ、せっかく選ばれたんだから、橋本会長にはこの記事を参考に「理事を9人に削減して、そのうち5人を女性とする。船頭を減らさないと議論できないし(非公開でないと議論できない奴はクビ)、このままだと月開催に向かってしまうから!」と思い切った処置をしてもらいたかったね。

(まあ僕はオリンピック中止派なので、月開催オリンピックでもいいけどね。ただ崩壊組織論として興味ある)

トヨタ自動車は6月30日、7月1日付けで執行役員を23人から9人に削減すると発表した。
機能を超え、社長と会社全体を見据えて経営を進めるメンバーを「執行役員」と再定義する。執行役員同士が密に連携しながら実行部隊と連動や人材育成に取り組む。
 同社では今年4月に「副社長」と「執行役員」を執行役員に一本化したばかり。

トヨタ、執行役員を最高幹部の9人に削減

まあ、このくらいの人数なら、スピード感を持ちつつ議論して何かを決めることも可能なのかな?

ちなみに、飛行機を造れば承認が下りず、ロケットを造れば運搬中に転がし、造船部門は伝統の長崎造船所を手放す、「絶不調、お前のガバナンスめちゃヤバいんちゃう?三菱重工業さん」の事例だと・・・

社長1、常務執行役員12、上席シニアフェロー2、執行役員17(三菱重工・役員一覧) ってことは、執行役員以上が32名ですな。(その下にシニアフェローってのが20名もいるぞ)これで会議をすれば、上意下達・翼賛システム以外の運用方法はありますまい。

  • 組織員会:理事35名ー委員会職員3800名(2020/4/1
  • トヨタ:執行役員9名ー従業員7万4515人(2019/3/31
  • 三菱重工:執行役員以上32名ー従業員14,534人(2019/3/31

あなたなら、どの組織で働きたいですか?あるいはどの組織の株式を購入したいですか?

と、三菱重工は、さらにnotorious bigな天下り顧問を受け入れるようです。なかなか「懐が深い」。でも、「懐が寒い」ってことはないの?

 三菱重工業が、安倍晋三前首相の政務担当秘書官で首相補佐官も兼ねた今井尚哉氏(62)を顧問とする人事を決めたことが2日、分かった。・・・三菱重工は「個別の嘱託契約については公表していない」と説明している。

JIJI.com

ああそうか。最近の事例を見るに、防衛利権を得るため、防衛省の首脳級官僚に接待かけるのに必要な経費なんだね(笑)。

梅を巡るはなし

うちの辺りでは、そろそろ梅の花が見頃です。もうお花見をする時期か・・・

え、お花見って「桜」じゃないの?

まあ、今では「桜」が花見の代名詞ですけど、大昔は梅を見るものだったのですね。

花見といえば、皆さんは何の花を見に行きますか?恐らくほとんどの人が「桜!」と答えるのではないでしょうか。しかし、花見といえば梅が当たり前!なんて時代もあったようですよ。


実は、奈良時代の花鑑賞といえば梅の花が一般的でした。


その証拠に、奈良時代に作成された万葉集を見ると、桜よりも梅を詠んだ歌のほうが多いんです。梅は約120首あるのに対し、桜は約40首。梅が随分人気だったことがわかります。花見に桜が愛でられるようになったのは、平安時代。平安時代に作られた古今和歌集では、梅を詠んだ歌が約30首に対し、桜を詠んだ歌が約60首。奈良時代とは違い、桜と梅の人気が逆転しています。


この背景には、遣唐使の廃止が関わっています。
遣唐使が派遣されていた時は、中国文化の影響を強く受けていました。梅の花もその一つです。しかし、遣唐使が廃止されたことにより、日本独自の文化が発展し始めます。そのため、日本に古くから自生していた桜に注目が集まったのです。

ウエザーニュース

梅より桜が好まれるようになったのは、遣唐使が廃止され、日本独自の文化が発展し始めてから。日本に自生していた桜が、いわゆる「国風文化」の一環として、好まれるようになってきたようですね。

ま、最近の花見でよく見る桜である「ソメイヨシノ」は、江戸時代後期に、オオシマサクラとエドヒガンを改良した「吉野桜」であり、「染井村」(現在の東京都豊島区)で作られたから、吉野の山桜と区別するため「ソメイヨシノ」と呼ばれるようになった といわえるくらいですから、「ソメイヨシノが一斉に咲くのを愛でる」という風習それ自体、わりと新しいものなんですけどね。

にしても、元は中国の影響で梅を珍重していたけど、いつしか日本在来種である桜を重視するようになったって話、ちょっと面白いですね。それで思い出したけど「左近の桜、右近の橘」って言葉をご存知ですか?

平安宮内裏の紫宸殿(南殿ともいう)前庭に植えられている桜とタチバナ。左近・右近は左近衛府・右近衛府の略称。左近は紫宸殿の東方に,右近は西方に陣をしくが,ちょうどその陣頭の辺に植えられているのでこの名がある。平安時代末期にできた《古事談》に,南殿の桜はもと梅であって,794年(延暦13)の平安遷都のとき植えられたが,960年(天徳4)の内裏焼亡の際に焼失し,内裏新造のとき,梅に代えて重明親王の家の桜を植えたものであり,タチバナは平安遷都以前,そこに住んでいた橘大夫という人の家に生えていたものである,という話が見える。

コトバンク 世界大百科事典第2版

内裏紫宸殿(京都御所の正殿)の南庭には、東に桜、西に橘が植えられているんですね。有名なところでは、平家物語に出てきたと思うけれど。→マチガイ。「平治物語」です。

(源)義平は(平)重盛に組みかかろうと内裏の左近の桜右近の橘の間を7、8度も追い回した。重盛は混乱した兵を収拾して一旦退き、新手の500騎を得て再び門内に押し出した(この左近の桜・右近の橘の場面は『平治物語』の一つのハイライトであるが、乱当時の内裏は実際にはこのような造りをしておらず、鎌倉時代中期以降の内裏のつくりがそのまま持ち込まれている。よって橘桜の場面も『平治物語』の虚構であるとも見方も提示されている)。

源義平

ともかく、「東に桜、西に橘が植えられているが、元は桜ではなく梅だった」ってところ。桜は日本に自生していましたが、梅は奈良時代に中国から伝来したばかり。一方、相対する「橘」って在来も在来。「日本に自生する唯一の野生ミカン」という日本固有種なんですね。(庭木図鑑 植木ペディア

今の感覚で御所の庭に並べるなら、日本在来種である「橘」と「桜」を当然チョイスするかと思うのですが、当時は最新の舶来品だった「梅」をチョイスしたんです。このころの朝廷はいまよりずっとハイカラ好き?で、僕らは平安期以降の感覚をずっと引きずってきて現代に至るって言う(笑)。 ま、好き好きですから、別にいいんですが。

あと、遣唐使の廃止(停止)を提言し、国風文化隆盛のきっかけをつくった「菅原道真」本人は、梅を読んだ歌で有名 なのも面白いです。

「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花、主(あるじ)なしとて春な忘れそ」

この歌の解説は、こちらのページをどーぞ。梅の花を見ると、いつも思い出します。