Mehr erläutern!

タイトルは「もっと説明を!」にしようと思ってたんだけど、ゲーテ最後の言葉「もっと光を!」 (Mehr Licht !)を思い出して、ドイツ語風にしてみました(笑)。あ、でも「説明」の語尾変化がこれでいいか自信ないす。

ともかく、このニュースを見た瞬間、この対応はまずい。そう思ったんです。何がまずかったのか考えてて、対応策として「もっと説明すべき!」となったので。

菅首相「断じて受け入れず」 慰安婦訴訟、却下を要求

菅義偉首相は8日、韓国のソウル中央地裁が元慰安婦訴訟で日本政府に賠償を命じた判決について「このような判決は断じて受け入れることはできない」と反論した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 首相は、国際法上の「主権免除」の原則に触れ、「主権国家は他国の裁判権には服さない」と主張。その上で「この訴訟は却下されるべきだ」と求めた。
 慰安婦問題に関しては「1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みだ」と改めて強調。「韓国政府として国際法上、違反を是正する措置を取ることを強く求めたい」と述べた。
 今後の対応について、首相は「まず、この訴訟が却下されるところから始まる」と指摘。韓国側の対応を見極める考えを示した。

JIJI.com

まるで近衛声明(笑)。まあ国内受けはいいだろうけど。

まず、この発言は誰に当てたものでしょうか? 

正直言って、ここで首相がどのような発言をしたとしても、この判決について、当事国の国民たる日本人、韓国人の意見なり見解を、1mmも動かすことはできません。

日本も韓国も、それぞれの見方でこの問題に関し、それなりに経緯と歴史を知った上でこの裁判に至っているわけですから。残念ながら、二つの見方は未来永劫平行線をたどり、交点を持つことはないでしょう。 まあそれぞれ粛々と進んでいけばいいかと。てか、それしか道はないよねえ・・・

てなことで、首相の発言が誰かに届き、意味があるとすれば、その相手はこの2国以外の第三者になります。特に、人権問題を重視する欧米方面でしょう。

言っちゃあ悪いけど、彼らは、この問題に関する両国間の経緯と歴史なんて知りません。(きちんと知ってる人もいるだろうけど少数派)その視点に写るこの裁判のフレームは・・・

原告側:「日本は先の戦争で、従軍慰安婦という卑劣な人権侵害を起こした。この非人道的な犯罪行為は主権免除の例外とすべき」

被告側:「国際法上、日本政府は韓国国内裁判の被告になることはできません。国際法上の原則(常識)です」

日本は「制度」の段階で、門前払いを喰らわせているわけです。裁判闘争としてはアリなのでしょうが、先の人権問題を重視する第三者が聞いたらどのような印象を受けるでしょうか?

「原告の言うように、本当に非人道的な犯罪行為があったなら、人権救済のため超法規的に制度とか原則云々を超え裁いたり、賠償するのがあるべき筋ではないか」

という印象を受けると思います。これ日本にとっては不利ですよね。なお、この印象については、実際に罪があるのか、そしてその罪に日本政府(軍)が関わっているかは関係ありません

この法廷闘争の上に、首相が上記の記事のように発言するのは、まあ当たり前なんですけど、よく知らない第三者に対して、制度論で答えるのは印象論としてよろしくないでしょう。「上から目線」だし、「門前払い」って最悪じゃないかと。ここは下から目線で丁寧に答えることが、彼らに向けたPR戦略として取るべき姿勢ではないでしょうか。

例えば、モト首相ならこう言うかな。・・・事実誤認があったらゴメンね。

「先の大戦で、日本は近隣諸国を侵略し、多大な迷惑をかけました。もちろん戦後、日本国政府は謝罪と賠償を行っています。韓国について言えば、1965年の日韓請求権協定において、個別の補償は韓国政府が行うことを前提に謝罪と賠償を行い、日本国政府の法的責任は果たしております。このことは、両国の協定書に「完全かつ最終的に解決済み」と明記されていることからも明白であります。

 しかし近年、「いわゆる従軍慰安婦」の問題が浮上してまいりました。日本政府はすでに法的責任を果たしており、また「従軍」という用語の使用に関し疑義を持っておりますが、彼女らの凄惨な半生を顧み、人道的な立場からアジア女性基金を設立し見舞金を支給、時の首相の謝罪の書簡を届けてまいりました。さらに近年においても、日本政府は韓国政府が設立する元慰安婦を支援するための財団に10億円拠出するなど、あらゆる手を尽くしてまいりました。しかしこの財団が韓国政府により一方的に解散され、対応に苦慮しているところです。

日本国政府は、これらの問題の真の解決というものが、いかに困難であるかを認識しております。一方でなお問題解決に向け「このような問題に遭遇した際、当該国政府はどのような対応を取ることができるか」という観点から様々な事例の収集をしております。その中で、特にベトナムの「ライダイハン問題」について注視していることを申し添えます。以上です。」