税制改正論議に思うこと。

いま自民党の税制調査会という部署で、増大する防衛費を賄うため増税しようとか、資産所得倍増計画実現のためNISAの非課税枠や非課税期間を拡充しよう といった議論が盛んに行われていますね。

防衛費増額の財源を賄うための増税策をめぐり、自民党の税制調査会は13日に続き会合を開き、幹部が法人税、たばこ税、「復興特別所得税」の3つの税目を組み合わせるとした増税案のたたき台を示しました。

自民 税調幹部 防衛費増額財源 法人税など3税組み合わせ案提示

自民党の税制調査会は13日午前に開いた幹部会合で少額投資非課税制度(NISA)の年間投資枠を360万円に広げるといった税制改正の内容を了承した。

NISA年間投資枠360万円に拡大了承 自民税調幹部会合

僕は零才凍死家の一人として、NISAの拡充を歓迎します。また、国民の一人として、防衛支出の拡大と、そのための増税はやむを得ない と結論としては考えています。

でも、増税される側として、増税する側(財務省やその応援政治家たち)に襟を正して聞いてもらいたいこともあります。 「結論はともかく、お前らの姿勢に納得がいかねえよ!」

1.人から金をむしり取るなら、それなりの誠意を見せろや。

 鈴木俊一財務相は9日の閣議後の記者会見で、防衛費の財源について岸田文雄首相が増税の検討を与党に指示したことについて、「財源の確保に向けて、税制でお願いしなければならないと考えている。国民のみなさんにしっかりご理解いただけるように丁寧に説明していく必要がある」と述べた。

鈴木財務相、防衛増税「お願いしなければならない」 国債には否定的

さらに人から金をむしり取る(増税)なら、まず相手から借りたものをきちんと返してから新たなお願いをするべきかと。それが人の道ってもんです。あ、政治家は人じゃないんだっけ? だから同じ口でこんなことが言えるんだな。

鈴木俊一財務大臣は11月11日、財務省が自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)7500億円のうち、5952億円を借りたまま完済していない件に触れた。その上で、「1回でお返しするのは無理な状況」として、完済するめどは立たないと釈明した。
 このお金は、すべて「自動車・バイクを所有するユーザー = 国民」の積立金だ。財務省が返還しないために、2023年度からなんと自賠責保険が値上げされるのだ。
・・・(このお金を所管する)国土交通省に返還を約束するも、2022年度は54億円だった。つまりこの額なら100年たっても完済できないことになる。

消えた6000億円! 自賠責保険の積立金を「借りパク」した、財務省の誠意なき態度と役人天国ニッポン

正直、こんな奴(財務省)に大事な金を税金として預けたくないですよ。しかも返せない言い訳が振るってます。「返したいけど、金がないから一括返却は無理。払ってないわけじゃなく、誠意はあるんだから許せ♡」と。正確にはこちら↓

「一般会計から自動車安全特別会計への繰り戻しは、今の財政事情を考えると1回でお返しするのは無理な状況。これは申し訳ないと思っているが、そういう中で着実に確実に繰り戻し、誠意をもってお返ししていくことが大切だと思っている」

自賠責の運用益6000億円を借入「申し訳ないと思う」鈴木財務相 来年度から「賦課金」さらに国民負担へ

借り手が財務省以外なら、 貸し手が「謝罪とか言葉はいらないので、誠意を形でください」と恐喝するところですね。ですが貸し手(この特別会計を所管する国交省)は次のように応じたそう。

来年度の返済額について、国交省は予算額を明示しない「事項要求」として財務省と話し合っています。

同上

「返す形さえ取ってくれれば許します。いくら返すかは、別途密室で応相談(事項要求とはそういうこと)で結構」だってさ。そんな破格の条件なら、僕もお金貸して欲しい。てかその金、自動車ユーザーからの預かり物で、国交省のものではないですが・・・。そのつけが自賠責値上げにつながるんだから、やってらんないよね。 

ちなみに、僕ら(国民)が国税を滞納すると、最終的には10%近い延滞金(利息)が付き、財産の差し押さえが行われますし、「返す気はあるので100年返済、無利子でお願いします」といっても許してもらえませんよ。ですが国が主体なら、どんな犯罪行為も許されるようです。

2.東日本大震災の復興って終わったのかよ?

自民党の税制調査会は13日に続き会合を開き、幹部が法人税、たばこ税、「復興特別所得税」の3つの税目を組み合わせるとした増税案のたたき台を示しました。・・・この中で、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」については税率を引き下げたうえで、引き下げ分を新たな付加税として課すとしています。
「復興特別所得税」については、2037年までとなっている課税期間を延長することで、復興財源の総額を確実に確保するとしています。

自民 税調幹部 防衛費増額財源 法人税など3税組み合わせ案提示

東日本大震災からの復興って、この国の最優先課題じゃなかったの?復興のためなら、増税もやむなし と多くの国民は思っていただろうけど、それを防衛費に流用するだと?

そもそも、復興って終わったんですか? いまどういう状況なんですか? その説明なしに流用しちゃっていいんですか? 

復興いまだ半ばなら、当然税額を下げ、下げた分を防衛費に回すなんて話すべきじゃないでしょう。復興庁の担当大臣は、文句言うくらい 仕事をしろよ! てか、言ってました。

 防衛費増額の財源として復興特別所得税の一部を転用する案が政府・与党内で検討されていることについて、秋葉復興大臣は「復興予算の総額が削られることは断じてない」と改めて強調しました。

秋葉復興大臣「復興予算が削られることはない」 防衛費増額のための“増税” 議論で

 いや、文句じゃなかった・・・復興予算は削られないが、復興税の一部は転用されるかも・・・意味わからんな。ま、この人は、自身の「政治とカネ」疑惑から話題が変わってほっとして、中身がどうだかまで頭回ってないかも ですけど。

3.復興税を別用途に流用するくらいなら、ガソリン価格高騰対策としてのトリガー条項、発動するんだよね?

今回の税制論議でまったく触れられていないのだけれど、 ガソリン価格高騰に伴う補助金やら減税の話が聞こえてこないだけれど、どうなってんの? 

政府はガソリンや灯油など燃料価格の高騰を抑えるために石油元売り会社に支給する補助金の期限を12月末から来春まで延長する検討に入った。原油の国際価格はなお高値圏で、円安の影響でガソリン価格が高止まりしているためで、10月末にまとめる経済対策に盛り込む。

現行の仕組みのまま単純に延長するか、金額などを縮小して補助を続けるかは原油価格や為替動向をみながら与党と調整して決める。

ガソリン補助、23年春まで延長 経済対策で政府検討 2022年10月1日 

→令和5年9月末までは実施されるそうな。 資源エネルギー庁

あ、でも補助金入れてもガソリン160円近いし、将来下がる見込みもないですから。併用してガソリン減税してくれると助かりますね。

そもそも、補助金を元売り会社に出しても、それが末端の消費者にストレートに還元されてるかは不明確ですし。そういう意味では、以前話題になった「トリガー条項」を発動すべきでしょう。

 この条項が発動されると、ガソリンの全国平均価格が160円を超えた場合、ガソリン1Lあたり25円減税になるんです。 

トリガー条項とは、2010年度の税制改正で導入された制度で、レギュラーガソリンの全国平均価格が3か月連続で160円/Lを超えた場合に、暫定税率分の25.1円/Lの課税を停止するというものです。
そもそも、ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)は、28.7円/Lが本来の税率(本則税率)ですが、道路整備の財源不足に対応することを目的に、1974年より、25.1円/Lが暫定税率として上乗せされています。
 したがって、トリガー条項を発動すれば、レギュラーガソリン価格がおおよそ25円/L引き下がることが期待されます。

なぜガソリン価格が「25円」も安くなる!? 期待高まる「トリガー条項」が発動されない背景は? 緩和措置との違いとは

 この条項が発動できない理由は「東日本大震災からの復興が道半ば」だからです。ってことは、復興税を流用できるくらい復興が進んだ現在 なら、発動しますよね。発動するのが正規で、今は「適用を停止」してる暫定状態なんだから。

一方、現状では「トリガー条項」が発動される見込みはありません。これは、トリガー条項の根拠となっている租税特別措置法第89条は、2011年に成立した「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」の第44条によって、「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する」とされているためです。

同上

「減税しない」からはじまる物価高対策狂想曲

「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」というアニメがありましたが、それのパロディタイトルです。パロディというより、悲劇というべきだろうけれど。

①ガソリン価格高騰対策として、石油元売り会社に1Lあたり36.6円の補助金(現在)

すでにかなりの補助金が投入され、ガソリン価格は高騰しないよう抑えられているのですが・・・減税という手段で我々消費者に直接投入されていないから、僕ら消費者は、あんまり有り難みを感じられないですよね。

景気って「気」の面も多分にありますから、消費者が実感できない価格高騰対策って、カネを使う割に効果低いと思うんだけど。

 そもそも、ガソリン価格高騰時には1Lあたり25.1円を減税することができる「トリガー条項」という条文はできていたのです(実施には法手続きが必要)

最初からこのトリガー条項を使って減税してたら、消費者は拍手喝采。先の選挙で与党政治家は楽に選挙に勝てたと思うのに、政治家はなぜ減税ではなく補助金という手段を選択したのか、不思議でしょうがないです。

ま、政治家ではなく政府(役所)の立場であれば、トリガー条項を使った減税をやりたくないのはよくわかります。トリガー条項発動で減税する1Lあたり25.1円分の税金は、明確な課税理由がないまま課税され続けている(本来納める必要のない)大変けしからんものなのです。役所としては、一度減税すると理由がないから再度徴税できないリスクを恐れているのでしょう。

ガソリンには1リットル当たり24.3円の揮発油税(国税)と4.4円の地方揮発油税が「本則税率」として定められているが、租税特別措置として、さらに25.1円(国税24.3円、地方0.8円)が上乗せされていた。2008年には租税特別措置が廃止されたが、合計金額の53.8円が「当分の間」の暫定税率に据え置かれた。

もともと、ガソリン価格が高騰した時には特別税率の25.1円分を廃止する「トリガー(引き金)条項」が付いていたが、東日本大震災の復興予算を名目にトリガー条項が凍結されている。多くの識者から、これを解除すべきだ、という声が上がったわけだ。

過去の経緯から暫定税率の上乗せ分はいずれ廃止されるのが本来だったはずで、いったんトリガー条項でその分を減税すると二度と元に戻せなくなる、と考えているのだろう。

また、所管の経産省からすれば、補助金を元売会社に出せば、元売りに恩を売る形になり、役所としての権限強化につながる。減税してもその分価格が下がるだけなので、元売りから感謝されることはない。霞が関全体からすれば、予算規模は大きければ大きいほど、予算執行を通じた権限が増す。政治家にとっても話は同じで、補助金で業界に恩を売れば、選挙でも支持を得られる可能性が高まる。まさに、政官業の「鉄のトライアングル」の結束の結果だと言っていい。

絶対に「減税」はやりたくない…岸田首相が「ガソリン補助金」にこだわり続ける”危険すぎる理由”

政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」というところが、意味のわからん対策を立てて喜んでいます。

 政府は15日、「物価・賃金・生活総合対策本部」(本部長・岸田文雄首相)の第2回会合を首相官邸で開いた。ロシアのウクライナ侵攻などに伴う物価高騰に対応するため、農産品の生産コスト上昇を抑える肥料の購入支援金創設や、電気料金の負担軽減を図る節電プログラムの実施などを決定。こうした対策の経費を賄うため、政府は月内に予備費の執行を決める方針だ。

肥料、電気代の負担軽減へ 岸田首相「物価高騰、最大限警戒」―対策会合・政府

②物価高騰に対応するため、農産品の生産コスト上昇を抑える肥料の購入支援金創設

意味不明なんですけど・・・  消費者向けの物価高騰対策なら、農産品ではなく、最終製品である食料品を対象にすべきでしょう。そして、政府主導で食料品の価格を抑えたいなら食料品にかかる消費税を減税するのが普通の考えでは?

食料品には、海外で生産されたもの(輸入品)だって多くあります。それは無視して、国産のみ、それも農産原価の一構成要素に過ぎない、肥料購入の支援・・・最終品である食品価格の物価高騰対策としてどのくらいの効果が見込めるのか、だれか計算してよ?

もちろん農家が困っているというのは分かるけれど、困っている生産者は農家だけではないし、それは農業政策としてやるべきもの。物価高騰に対応するメニューとして適切なの?説明してよ岸田えもん。

③物価高騰に対応するため、電気料金の負担軽減を図る節電プログラムの実施などを決定。

電気料金の負担軽減を図ってくれる  という前段の文章はありがたいんですけど、それが後段の「節電に協力してくれたらポイントさしあげます」と繋がらないんだよね。

一消費者として「物価高騰対策として節電します」というのはわかります。でもそれはミクロな話で、政府というマクロ対策を行うところが言うことじゃありません(セコすぎ)。マクロ的に言えば、電気料金の負担軽減って、高騰する電気料金をなんとか食い止めることでしょ。

具体的には、↓こうした動きに対し、オラオラ言うことでしょう。  前総理大臣は、通信業界にオラオラ言ってなんとかしたんだから、現総理大臣は電力・ガス業界にオラオラ言ってなんとかすべきでしょう。(ほとんどヤクザだけど)。無理なら自腹切って、電気料金にかかる消費税を無税にするとか、電気基本料金を国が建て替えるとか(貧乏西尾市でも、コロナ対応として市営水道の基本料金を数ヶ月無料にしたぞ)

電気・ガス料金に設けられている「上限額」。東京ガスは7月分から上限額に達し、超過分を自社で負担していたが、一般家庭向けガス料金の上限価格を10月分から段階的に引き上げると発表した。
電気・ガス料金の上限制度について資源エネルギー庁の解説には〈原燃料の価格が大幅に上昇した際の需要家への大きな影響を和らげるため、自動的に調整される料金の幅に一定の上限が設けられています〉とある。
「需要家」には一般家庭も含まれる。原燃料価格の高騰を理由に上限額をいじるのは“制度の精神”に真っ向から反していないか。

電気・ガス料金「上限額」引き上げ…資源エネ庁が記載“制度の精神”に反する非情ぶり

中部電力ミライズは26日、家庭向け電気料金メニューの一部で、燃料価格の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整制度」の上限を撤廃すると発表しました。
これは、火力発電所の燃料が高騰していることを受けたもので、今年12月分の電気料金の算出から適用されます。

燃料の高騰を受け“上限撤廃”へ 電気料金の算出めぐる調整部分 中部電力ミライズ

大手都市ガスや大手電力会社は、公益企業として価格変動の上限枠が設けてあったわけだけど、こうもあっさりそれを撤廃できるなんて・・・  

④自賠責保険は値上げ

税金ではないけれど、地方在住者は車に乗らざるを得ず、ほぼ税金みたいなものです。

それはさておき、役所ってのは、ほんとヤクザ顔負けの組織です。自分は借金を返さず、それを国民に負担させて平気なんですから。こんなヤクザ組織じゃ、減税なんていうまともな政策実現はとても無理でしょう。

被害者救済のために積み立てられている自賠責7500億円のうち、6000億円がいまだに財務省から返還されていない。それも20年も前からである。一般会計の補填(ほてん)であり、まったくの目的外利用であることは明白だ。

こともあろうに政府は来年度、2023年度からの自賠責の値上げを決めた。6月9日に衆院本会議で賛成多数により可決、政府および財務省はいまだ6000億円を自賠責の積立金から借りたままにもかかわらず「交通事故の被害者支援を充実させるため」
として、最大1台あたり150円の値上げを決めた。

つまるところ、日本国は6000億円を「すぐに返す必要はない。足りないのでユーザーからさらに徴収すればいい」そう考えていると受け取ってもらって構わない、という意思表示なのだろう。

「自賠責保険」値上げでドライバー大激怒! 積み立て6000億円踏み倒し、財務省はもはや脱法組織か

(当時、大手報道機関は「交通事故の被害者支援を充実させるため自賠責値上げ」としか報道してなかった。第4の権力ってなんでしたっけ?)

必要なときにはきちんと減税ができる、「まともな」海外政府が羨ましいです。

コロナ禍の始まった’20年にはイギリスやドイツで、日本の消費税に当たる「付加価値税」の税率を引き下げました。国民の生活を見て、税金もそのつど必要な見直しを行っているのです。
ところが日本政府は、税率などを変えるのは“ご法度”とばかり、税金には一切手をつけません。

インフレ対策にサイボウズは15万円支給…政府は直ちに税率改善を

これだけの悪手を打っても政権交代できる野党がいない  ってのが我が国の不幸だと思うけれど、なんでそうなっちゃうんだろうねえ?  

「自民党政治は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる野党政治を除けば」 ジャーチル