「太秦」と書いて「うずまさ」と読む。 知らないと絶対読めませんよね、これ。ここは、昔の氏族「秦氏」の本拠地です。 秦氏は中国からの渡来系の氏族で、都が奈良から京都(平安京)に移った際も、渡来人の持つ技術力や財力を頼りにしたとかで、歴史を紐解くときに気になるワードの一つです。 気になる人は、秦氏(wiki)をどーぞ。楽しめますよ。
この界隈を旅するなら、京福電鉄、通称「嵐電」の嵐電一日フリー切符を使うのが便利です。1回乗車に220円かかるところ、1日乗り放題で500円ですから。しかもいろいろ特典がついて、一番良いのは京福嵐山駅の足湯の利用料50円割引(200円→150円タオル付)になること。歩いて疲れた足を労わってあげましょう。
さて、この界隈の一番の見どころと言えば、広隆寺 ですね。 広隆寺と言えば国宝「弥勒菩薩半跏思惟像」で有名ですね。秦氏の氏寺で、実は京都最古の寺院です。 少し郊外に離れているので、実は僕も初めて行ったのですが、この寺の魅力は以下の通りです。
①「弥勒菩薩」はもちろんのこと、収蔵している仏像が素晴らしい。
有料(700円)ですが、一見の価値あります。弥勒菩薩以外に十二神将像とか重要文化財クラスの仏像がずらりと並んでいて、ほの暗い収蔵庫の中で自然と厳かな気持ちになります。古くからの仏像ですと、手に持っている様々な道具(錫杖とか、剣とか)はたいてい欠落しているものですが、ここはすべて残っています。どれだけ大事に保管されてたんだか。あと、ここで焼き物の仏像を拝観しました。解説には何気なく「三彩」と書いてあり、「唐時代」と書かれていました。ということは、これが陶磁器で有名な「唐三彩」なんですかね?初めて見ました。
②空いてる!
このクラスの寺として珍しく「世界遺産」に含まれていません。僕が行ったとき、外国人観光客は一人もいませんでした、日本人が数人と修学旅行の中学生たち。嵐山は人で溢れているというのに。まあ市内から離れ、通常の観光コースからはまず外れますから、日本人でも来るのは「弥勒菩薩を見たい」という目的がある人だけでしょう。おかげさまで、ゆっくり拝観できました。
③庭もきれいだよ。
有料のエリアになりますが、庭もきれいに手入れされています。僕は大徳寺の高桐院の庭の青もみじとコケ、背景に竹林を配した庭が大好きだったのですが(石組の枯山水庭はあんまり好きじゃない)、残念ながら、結構コケが荒れちゃってまして・・・。
あ、広隆寺を見たら、裏手にある「大酒(おおさけ)神社」を見ておきましょう。神社自体は大したものはありませんが、見るべきは神社の由緒書(笑)。この神社の祭神は、なんと秦の始皇帝(と子孫の弓月君と秦酒公)
秦の始皇帝の十四世の子孫「功満王」が、ここに神社を建てたそうです。そのときは災難を避けるという意味で「大辟(おおさけ)神社」だったそうで。子供の「弓月君」は、朝鮮半島から一万九千人!を引き連れて日本に帰化し、朝廷に宝物をたくさん献上しました。孫の「酒公」は蚕を飼い、山のような(うずたかく)絹織物を朝廷に献上したので、時の天皇は狂喜し、酒公に埋益(うずます)という姓を与えたそうな。これが地名に効いてくるわけですね。 中国系は祖先を祭るわけで、祭神は秦の始皇帝なのです。中国広しといえど、始皇帝を祭るところはないんじゃないかねぇ? ひっそり異国で神としてまつられています。こういうとこ、神道はおおらかでいいですな。
さらに、すこし歩きますが、蚕に関係した「木嶋坐天照御魂神社」略称「木島神社」あるいは「蚕の社」 も見ておくとよいかもしれません。歴史は不明ですが、秦氏と関係しているようです。
境内には、涸れていますが「元糺の池(もとただすのいけ)」があり、そこに鳥居が立っています。「糺」といえば下加茂神社の「糺の森」が有名ですが、ここの社叢は「元糺の森」というそうで、何やら下加茂神社とのつながりが・・・疑われますねぇ。
そういえば加茂神社の神官は加茂氏(鴨長明は子孫)ですが、「秦氏と関係が深い」そうですから、何かありそうですね。
ま、この池は涸れてて残念ですが、中に三本支柱の鳥居があるのでそれを見ておきましょう。「京都三鳥居」の1つだそうです。それから、参道にある「招福亭 支店」の茶そばと親子丼のセットはおいしいのでぜひ食べていきましょう。京都風のトロトロの卵と、甘い出汁がたまらんですわ。あの世での幸せも大事ですが、現世の幸せを700円で味わいました。
食べログだと開店時間が不明ですが、僕は月曜日の11時に入ってやってましたので、参考まで。
静かな散策が終わったら、嵐電に乗って嵐山でにぎやかな観光を楽しみましょう。ただ、一見さんの多い観光地ですから、お値打ちな食事処は期待できないかもしれません。フリー切符を使って足湯に浸かるくらいにしたほうがいいかもなぁ。