「糟糠の妻」とは、貧しいころから苦労を共にしてきた妻 という意味です。
ここで使われている糟糠とは、米かすと米ぬか。米ぬかと水と塩で野菜を漬けたのが糠漬け。粕漬や糠漬で食事をとっているのは貧しいことの象徴だったんでしょうか?今なら自家製野菜の糠漬の食事って、贅沢ですよね。あなたが漬物嫌いなら別ですが・・・
今年は6月頃から糠床を準備し野菜の捨て漬を行い、糠床を育成させてきました。乳酸菌を繁殖させるわけです!はじめてのお使い ならぬはじめての漬物作り。
僕をその気にさせた犯人は、暮らしの手帳「汁飯香のある暮らし」土井善晴氏。
働いて疲れて帰ってきて、臭いのする糠味噌天地返しとか、持続不可能だもん。仕事を辞めたらやるべし とは思っていました。
7月に入ってからは食事のたびに自家製糠漬けを喰ってます。糠床完成は夏場で2か月かかるようですけど。すでにキュウリやナス、トマトが捨てるほどありまして、消費しないと。
手前味噌ですが、味はなかなかのもんです。少なくとも、普通に喰える。
しかし暑いさなか。朝晩少なくとも2回は手で混ぜてやらないと、発酵が腐敗に変わってしまうようで、いや~な臭いがします。好気性の菌と嫌気性の菌がともに繁殖しすぎないよう、天地返ししてあげる必要があるんですね。
で、かき混ぜるわけですが、手に独特の匂いが移りまして、これが臭い。あしはこの臭いが嫌なんで、混ぜてからしっかり洗浄液で洗うんですが、「消えないや、発酵した糠の匂い」。かといって食べるほうはやめられません。誰か交代してくれないかな。混ぜるの嫌だなあ。
ああ、これが「糟糠の妻」の真の意味か。女房は朝晩糠床をかき混ぜてたでしょうから、古女房は移り香がして臭かったんじゃないか?慣れれば気にならないのかもしれないけど。
ちなみに和英辞典(研究社 新和英中辞典)で「糠味噌臭い」を検索すると、”housewifely”だって。座布団一枚持ってきな!
特に男性は、糠漬けは好きでも臭いは嫌いかもしれない。僕の記憶の中に、糠漬けを喰いたいけど臭いを嫌った男がなんとか という川柳があったように記憶していましたが、あ、コレ。
さい箸で 糠味噌を出す 妻の留守 (俳風柳多留)
糠漬けを食べたいけれど、味噌に手を突っ込むのが嫌だ。しかし肝心の女房が留守なので、しかたなく箸で糠味噌をかき回す。 糠漬けが庶民の生活に密着していた光景がありありと浮かぶ一句である。 永山久夫「江戸めしのすすめ」
良くわかるぞ。ほんとにそうだよね。
現代を生きる我々の場合、冷蔵庫に入れておけば週一で混ぜてあげればいいようで、混ぜるたびに臭いがつく回数は減らせるようです。。しかし庫内で他の食品に移り香するのも嫌ですし。代わりに混ぜてくれる女房もいませんので(もっとも現代では、女房が無条件で混ぜてくれるとは限りませんね。むしろむしろ旦那が趣味でやって、奥さんから「臭いから片付けて買ってこい」と言われそうですな。)ですから、自らの糟糠の手でせっせと天地替に励むことにします。 働かざる者、喰うべからず。 いや違うな。これだと無職の僕は食事できないじゃないか。