「盛土の施工が悪かった」それが真の問題なのかね?

熱海市伊豆山(いずさん)の土石流災害で、静岡県の難波喬司副知事は八日、土石流の総量が五・六万立方メートルで、大半が発生地点周辺に造成された盛り土だったと明らかにした。造成した神奈川県小田原市の解体業者は熱海市に三・六万立方メートルの盛り土を届け出ていたが、実際は二倍前後の土砂を搬入していた疑いがある。 県は当初、土石流の総量を十万立方メートルとしていたが、同日の会見で修正した。崩落した五・六万立方メートルのうち、砂防ダムで一部が受け止められ、四・八万立方メートルが下流部の住宅地などに流れ出て、被害が拡大する事態になった。

土石流の大半が盛り土 高さ35メートル、届け出の倍以上  中日新聞

今朝、中日新聞を読んでいて、「ちょいと視点がおかしくね?」と感じた記事です。例の熱海の土石流災害についての記事です。

土石流の誘引に、上流の大規模盛土が関与していそうなこと、そしてその盛土の施工(工事のやり方)に問題があったようです。

が、僕が注目したいのはそこではありません。ここ↓です。

土石流の総量が五・六万立方メートルで、大半が発生地点周辺に造成された盛り土だった・・・崩落した五・六万立方メートルのうち、砂防ダムで一部が受け止められ、四・八万立方メートルが下流部の住宅地などに流れ出て

つまり、下流に砂防ダムを作るような危険な渓流の上流部に、大規模な盛土が認められる・・・ということに驚いたです。

 盛土の施工不良については記事が上がっていますが、「危険な場所に盛土をすること」それ自体は違法じゃなかったみたい。 いくら丁寧にやっても、盛土は現地盤より弱いのに、それを危険渓流で大規模に行うことを規制する法律は無いんだ・・・すごく危険なことだと思うんだけど。

「海や川を見下ろせる土地は、確かに眺めはいいのですが、山を切り開いてつくられた地盤がしっかりしていない土地や傾斜地であることがほとんどです。重機で押し固めて平らな土地にしてありますが、地盤が脆い可能性が高い」

熱海・土石流災害の教訓 専門家が指摘する「リゾート地の地盤の脆さ」

砂防ダムがあったということ。砂防ダムの建設には巨額の費用がかかる一方、危険な川は数しれずあるので、行政は優先度を決めて計画的に造ってます、それが設置されてたってことは、その川(沢)は土石流の危険性が特に高かったり、万一発生した場合、被害規模が大きい、特に危険な川であったことを意味します。

砂防ダムを造る目的は、ダムの上に空き空間を造ることで、万一発生した土石流を止めたり、全部は止められなくても一部を止めることで、それより下流に流れ出る土砂の量を減らすこと*。

そんな危険な川の上流(正確には上流域)に、盛土を行うなんて、みすみす「敵に塩を送る」だけじゃありません?常識的に考えたら、それヤバいだろ・・・

もちろん盛土の理由も色々あるでしょう。林業や治山工事に使うためどうしても必要だったならまあ仕方ないですよねえ。でも今回の場合は、どうも住宅地(別荘地?)開発のための大規模盛土だったようで。・・・いや、その名目を借りた残土や廃棄物の処分が主目的だったかもしれないがね。(悪魔の囁き「ゴミは金になるんだよ〜」)

これも普通に考えると、そんな危ないとこを埋めて住むなよ〜 てか、行政はそんな危険な開発を許可するなよ〜  と思うのですが、この場合の行政たる熱海市は県の土採取等規制条例に基づき盛土の届け出を提出されただけのよう。 (「届け出提出」なので、書類に形式的不備がなければ受理するだけ。「それ危ないから不許可」と審査できません)

つまり盛土それ自体を法的に止める手段はなかったんだな。(盛土の施工方法がおかしいとか、搬入量が届け出と違っていた というのはまあ、次の話で)

当初施工した小田原市の不動産管理会社(清算)は09年に盛り土の高さを15メートルとする計画を市に届け出ていた。
 静岡県土採取等規制条例で定められた高さの基準は「原則15メートル」で、県は不適正な盛り土の工法が被害を拡大させたとみている。
 難波喬司副知事が県庁で記者会見し、11年2月までの関係書類などを調べた内容を明らかにした。
 不動産管理会社が県条例に基づき09年12月に市に提出した届け出によると、施工面積は0・9696ヘクタール、盛り土量は3万6641立方メートル、高さは15メートル。棚田状に3段にする計画だった。
 一方、県が20年1月の地形データと国土交通省が取得した10年1月の地形データを比較したところ、盛り土の高さは50メートル、量は約5万4千立方メートルと推定され、段数は12段程度。今回の土石流で大半の約5万立方メートルが崩落したとみられる。

盛り土高さ、届け出3倍超 業者、産廃混入で指導も 熱海土石流

もちろん施工方法とか、搬入量が届け出と違って業者ケシカランはそのとおり。

でもそれ以前に、そもそも危険箇所の開発行為、それ自体を行政が止められる仕組みにしないと、せっかく砂防ダムを造っても意味ないじゃん・・・静岡県や熱海市は法律に従って処理しただけで罪はないですが・・・これって 関係法体系の不備じゃないかなあ?

てか、全く同じ構造の問題が、川で洪水被害が出るたびに語られますね。東日本大震災の津波のときにも言われてたような・・・危険なところに住むな、危険なエリアでの新規の開発を止めろと。

「無造作に宅地開発を進めると、災害のたびに、復旧工事が必要になる。災害が頻発する時代には、自治体の財政を圧迫する“コストばかりかかる地区”となりかねません。東京も、今後は人口が減少し、税収の減少も予測されますから、開発のあり方を考え直す必要があると思います」

多摩川沿い なぜ“浸水エリア”に新築が… 徹底分析しました

全く賢者様のおっしゃるとおり。というか昔から言われてたことだよね。でも「会議は踊る、されど進まず」・・・こちらが立法されるなら、話は同じだと思うんだけどなあ。

衆院内閣委員会は28日、安全保障上重要な施設周辺の土地取引を調査・規制する法案を自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した。与党は近く衆院本会議で可決し、参院に送付する方針だ。今国会での成立を目指す。

土地取引規制法案、衆院委で可決 基地周辺など対象

「河川近傍の浸水エリアや土砂災害危険渓流該当箇所の土地取引や開発行為を調査・規制することは、国民の安全保障上、極めて重要なことである」と愚考いたします!

*砂防ダムを作る目的というのは、大きく2つあり、一つはダムの空き容量を使って発生した土石流を停止させたり、一部を貯めることで下流へ流れ出る土砂量を調整したりすることです。もう一つは、ダム上流側に土砂を堆積させ、川の勾配を緩やかにすることで川の侵食力を小さくすること(勾配がキツけりゃより多く、より早く流れ下ってくる)です。

2番目の目的は、あまり知られてなくて、「一杯になった砂防ダムなんて役に立たん」とよく言われるのですが、教科書的にはこちらが砂防ダムの主目的とされています。(と書きつつ、局所的な河床勾配の変化にどれほどの効果があるのか、僕自身詳しく知りたいですけど・・・)

情報追加。

静岡県熱海市伊豆山(いずさん)の土石流災害は、発生現場付近で崩落した盛り土の造成の経緯が注目されている。県は今後、県と熱海市の行政責任も含めて検証する。

・・・県は盛り土を増やす際、行政への届け出の手続きが適正だったのかを調査する。

熱海土石流、行政責任検証へ 盛り土届け出の手続きなど

県が調査できるのは「届け出手続きが適切だったか」だけ というのはよく分かるんだけど、ツラツラ書いてきたように、それは根本問題じゃないような気がするんだけど・・・。そのあたりは土木技術者である副知事もわかった上でしょうし、内心忸怩たる思いもあるのかなあ。県の責任範囲を越えるけれど、もう一段大きな問題提起を国に提言できるといいなって思う。

山梨県は9日、静岡県熱海市で起きた大規模土石流を受け、県内の盛り土の造成地点などの緊急点検を始めた。下流域に土砂災害警戒区域などがある県内66カ所について、7月末までに点検を終わらせる。

山梨県、盛り土の緊急点検開始 66カ所を7月末までに  産経新聞

山梨県に限らないと思いますが、「下流域に土砂災害警戒区域がある盛土造成地点」は、やっぱり開発規制されることなく存在するんですねえ。

塩坂氏は、盛り土付近の造成で尾根が削られたことにより、逢初川の集水域よりさらに北部にある、鳴沢川の集水域約20万平方メートルに降った雨も、盛り土側に流れ込んだと分析している。造成地側から盛り土側に水が流れた跡も確認したという。


 さらに、崩落した盛り土周辺と同様の地質構造の沢は熱海市内に複数あるが、それでも今回の雨で盛り土周辺が崩れた要因として、「河川争奪」を挙げた。河川の流域の一部分を別の河川が奪う地理的現象で、造成によって水の流れが変化し、逢初川よりも北部の鳴沢川に流れ込むはずの雨水が、谷を埋めた盛り土に流入。雨水が逢初川側に流れ込んだと主張した。

 塩坂氏は「造成で尾根を平らにした。人為的な河川争奪だ。意図的にやったのか、知らずにやったのかは分からない。盛り土の土の隙間(すきま)に水がたまり、地下水も入り込んで浮力が働いて滑り落ちた」と説明した。

熱海土石流 造成が誘発した人為的な「河川争奪」地質学者が指摘 毎日新聞

尾根を削っちゃったので、本来の集水域だけでなく、隣の集水域(本来別の川に流れ出すはずの水)もこっちの集水域に流れ込んじゃった。このことも、土石流の原因の一つに挙げられると。なるほどねえ。

ま、山間部の土地造成は、谷を埋め尾根を削り「できるだけ広い平らな土地を造ること」が目的だろうから、「意図的にやったのか、知らずにやったのか分からん」って、いかにも学者のコメントって感じはするけれど。 

ともかく、この「河川争奪」の事象は、同様の場所での土地造成では、たいてい生じる可能性がある ってことは、抑えておいたほうが良いことかもしれませんな。

中国経済って、日本の「バブル崩壊前夜」の状態なの?

寝そべるという意味の「躺平」がいま中国で最新の流行語になっている。だらっと寝そべって、何も求めない。マンションも車も買わず、結婚もせず、消費もしない。
・・・検査技師の王(24)は、4ヵ月の就職活動に疲れ果てた。・・・
「社会に負けたから、ただもっと気楽な生活を送りたいだけだ。寝そべりは死を意味するのではない。仕事はする、ただ過度に頑張りすぎないだけだ」

中国の若者に広がる「寝そべり族」  向上心がなく消費もしない寝そべっているだけの人生

ふーん、日本でよく聞くような話なんですけど、中国でもこんな行動が最新の流行になっているんだねえ。

でも中国に関しては、少し前に「996」という、モーレツ称賛 みたいな言葉が流行ってましたよね。

中国でいま「996問題」が論議を呼んでいる。「996」とは「朝9時から夜9時まで、週に6日間働く」の意味で、つまり1日12時間労働、休みは週1日、日曜日だけという勤務状況を指す。この表現自体は2016年に生まれたものだが、今年3月、若いプログラマーたちがこの問題を告発する自主サイトを立ち上げ、一気に注目が集まった。

 中国の「996 問題」とは?労働問題から見える遠ざかるチャイナドリーム

日本の「バブル崩壊」前後にそっくりな事象だって思いました。

 まず「996」。日本のバブル期の働き方を象徴するような三共製薬のCMソング「24時間戦えますか」(89〜91年頃)にそっくり。 

一方、「寝そべり族」については、当時ベストセラーになった中野孝次氏の「清貧の思想」(92年)と対応するんじゃないかと。日本の場合、清貧が流行ったのはバブル崩壊後でしたけど、中国で「寝そべりが若者に広がっている」 ってのが味噌。若者は「炭鉱のカナリア」としての先行指標じゃないでしょうか。

本書は、バブル経済崩壊直後の1992年に出版され、たちまちベストセラーになりました。バブルの夢から覚めた日本人は、金銭欲と物欲を追い求める価値観を見失い、虚脱状態に陥っていました。そこに「精神的な豊かさ」という新たな価値観を示され、心引かれたのでしょう。

お金やモノが増えると「心」が貧しくなる理由
今も色あせない『清貧の思想』

日本はバブル崩壊以降、あんまり物質的にも精神的にも、豊かな方向には向いてこなかったんじゃないかと思いますけど・・・それはともかく。

日本でのバブル景気とその崩壊を生じた一つの流れとしてこんなふうに考えてみると、この2つの事象以外にも、同じ事象をたどっているな と思われるものがあったりして・・・

対米輸出で稼ぎまくった日本→業を煮やしたアメリカから、円高ドル安を求められた(通貨操作・日本の対米輸出に不利)→日本は輸出不振→行き場を失った金融資産の増加と円高不況対策としての内需拡大政策→日本株や不動産(内需の象徴)への資金の流入(投機的・バブル)→バブルを危惧した日銀、政府による金融引き締め→投機ブーム強制終了(バブル崩壊)

まあ社会事象ってのはそんな単純な話ではなんだろうけど、一つの物語として。調べたかったら、このあたりを読んで勉強してみてください「1980年代の日本はなぜバブル景気になったのですか?そしてなぜバブルは崩壊したのですか?(その4)」

んで、日本と中国の事象を並べてみると・・・

対米輸出で稼ぎまくった日本 : 「世界の工場」と呼ばれた中国

業を煮やしたアメリカからの円高ドル安誘導と貿易不振 : トランプ政権下での対中輸入関税の大幅引き上げ(通貨操作と同様の効果)、一部中国系企業の輸入を禁止

金融緩和と内需拡大政策(日本) :金融緩和と内需拡大政策「双循環」(中国)

双循環とは、国内循環を主体とし、国内と国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展戦略のことである。

・・・現在のような、保護主義が台頭し、世界経済が低迷し、グローバル市場が萎縮した外部環境の下では、中国は国内の巨大な市場という優位性を十分に生かさなければならない。

中国の新たな発展戦略となる「双循環」
― 「国内循環」と「国際循環」の相互促進を目指して ―

不動産市場の一部でバブル懸念が生じるなど、習近平指導部は金融緩和の副作用への警戒を強めている。・・・昨年12月の中央経済工作会議では「住宅は住むためのものであり投機対象ではないという位置付けを堅持する」との方針を示している。

中国、10カ月連続で政策金利据え置き 金融緩和の副作用警戒

 「世界の工場」だった国が、「国内と国際の2つを重視」ってことは、貿易がいまいちうまく行ってないから、内需を重視していきます! ってことですよね〜。

 貿易不振だけじゃなく「コロナ対策」もあり、中国も大々的に金融緩和しているし、「住宅は住むためのものであり投機対象ではないという位置付けを堅持」ってことは、不動産投機も盛んで・・・というか、中央の認識は「不動産バブル、崩壊の危険ありやばし」 ってことじゃないかと。

ま、中国の不動産バブル崩壊の危機 という話は、ネットを見ればかなり昔から色々出ているんだけど、なかなか崩壊しない話ではあります。つい最近もニュースサイトで記事が出ていますが。

7月1日で中国共産党創建100年の記念日(大規模イベント)を終えたから、中国政府としては、経済の下支え意識に、少し手を抜くことも考えられるかもしれませんねぇ。

中国経済にとって多くの専門家が一番懸念している問題のひとつは不動産バブルだろう。

中国銀行保険業監督管理委員会の郭樹清主席は不動産バブルを金融リスクの最大の「灰色のサイ」(存在するのがわかっていながら放置されているリスク)と形容した。

不動産価格を引き下げるために当局は厳しい融資規制など数々の政令を出しているが、なかなか不動産価格を緩やかに下げていくことは困難な状況だ。

習近平が“自爆”へ…いよいよ中国「不動産バブル」が崩壊寸前で、追い詰められた「習近平」の末路

でも、日本のバブル崩壊後にブームになった思想と、よく似た思想が中国の若者の間でブームになってきた ってのは、いよいよ崩壊が近いんじゃね? とも思った次第です。

もちろん中国政府は、日本の失敗を先行事例として十分研究しているだろうし、「独裁政府」だから日本とは比べ物にならない強権発動も可能です。けど、経済の動きを政府が上手くコントロールできる ってのは、無理筋じゃないすかねえ?  特に今の政権中枢は、市場経済ってより、統制経済がお好きなようですし。