西尾で津波・高潮に備える

下の二枚の図を見比べて見てください。

分かりやすいよう、国道247号に着色、両地図の同地点(河口とか)に同じ印をしてます。

左の図の原本は「西尾市地震・津波ハザードマップ」です。東海・東南海・南海地震の被害予測結果に基づいて、津波の浸水想定区域をしめしています。地震で堤防が1/4〜1/2に沈下した場合を想定しているようです。

右の図は、昭和28年9月16日の台風13号による西尾市の浸水被害状況です。台風の規模は大きくなかったのですが、この日がたまたま大潮で、しかも満潮と台風による高潮が重なり、何カ所かで堤防が切れ、冠水したのです。

地震による津波の浸水被害想定と台風による高潮による実被害。ですが、図をよく見ると、両者の浸水範囲はずいぶんよく似ていることが分かります。

津波と高潮の違い

ともに海の波が沖合いの方から盛り上がって、海岸や沿岸の方へ押し寄せる現象としては同じようなものですが、その原因によって区別しています。津波は地震によって起きるものですが、高潮は主に台風や低気圧による海面の吸い上げが原因です。昔は津波と高潮の区別がはっきりしておらず、すべて津波と呼んでいた時期もありました・・・ koka net

津波と高潮、発生要因が違うだけで、波が沖合から盛り上がり押し寄せる現象 としては同じですから、あとは波の高さ(=エネルギー)による規模がいろいろあるだけです。そして陸地の地形もかなり影響します。

西尾市南部は、ほぼ海面と同レベルの低地ですから、堤防が切れると現在でも相当の被害が発生します。青色の部分は水面から2m程度の標高しかありません。詳しくは 下の標高図をご覧ください。 デジタル標高地形図

西尾標高図

じゃあどうしたらいいんだろう?

リンクを張った西尾市のハザードマップを見て、自分はどうするべきかよく考えましょう。基本は襲来する前に高台へ避難すること。できなければ、二階へ。

司法で示された、ハザードマップに頼る防災の限界 

東日本大震災で津波の直撃を受け、多数の児童が亡くなった大川小津波事故訴訟の二審(高等裁判所の判断)が示されました。 まだ最終審ではありませんが、まあひっくり返ることはないだろうなぁ。

「ハザードマップ至上主義」と完全に決別し、各種の防災対策に根底から見直しを迫った形 と、これから現場で厳しい運用が迫られることになります。

以下、抜粋記事です。

<大川小津波訴訟>「ハザードマップ至上主義」と完全に決別 防災対策に根底から見直し迫る

学校の事前防災の是非が争われた大川小津波事故訴訟の控訴審判決は、津波被害予測地図(ハザードマップ)を科学的知見として予見可能性を判断してきた従来の津波訴訟の「ハザードマップ至上主義」と完全に決別した。マップへの依存を否定した司法判断は、学校現場に限らず各種の防災対策に根底から見直しを迫った形だ。

大川小が津波浸水予想区域外に立地する点を捉えて「津波予見は不可能」としてきた市・宮城県側の主張を、判決は「マップの信頼性を独自の立場で検証することが要請されていた」と一蹴した。「校長らは平均的な知識を上回る防災知見を得て適切な危機管理マニュアルを整備すべきだった」と言及

判決が教育行政に課した責務は極めて重いが、学校現場の多忙化を考えると酷な側面もある。判決を現場教員の負担軽減も含め、命を守る組織の在り方を問い直す里程標としてほしい。

震災前に出されていた津波のハザードマップでは、大川小の校舎は津波浸水予想区域から外れ、避難所に指定されていたんですよね。 でも津波が来ちゃった。

<大川小・争点を語る>(上)危険の予見 ハザードマップ頼み/多忙化で防災後回し   (こちらの記事も抜粋です。)

大川小は北上川河口から約3.7キロ上流にあった。海抜約1メートル。河川堤防(高さ約5メートル)まで西に約200メートル。震災前、周辺の最大予想津波は5.1メートルで、校舎はハザードマップの津波浸水予想区域から外れ、避難所に指定されていた。

「地震の規模や範囲の予測は困難で、不確実性が高い。浸水予想は防災計画を作る目安にすぎないのが常識だが実務上、ハザードマップの想定に依存せざるを得ない状況は理解できる」という。

津波に対する当時の危険認識は「浸水予想区域から外れている以上、事前想定は避難行動より避難所対応を優先した可能性がある。避難所に指定されていれば、教員は社会的責任を考えて学校を離れられないという感覚が働く」と指摘。

確かに防災の専門家や「シミュレーション」を実施したことがある人から見ると、ハザードマップの予想結果はある条件で計算した場合の事例に過ぎず、津波浸水予想区域から外れていても計算条件が異なれば(あるいは想定外の場合に)津波が来る可能性は十分ある ことは自明なのです。

でもね、ある条件の計算結果とはいえ、その旨注意書きがされているとはいえ(この手の刊行物には必ず記載されています)、「浸水しません」を図として出してしまうと、結果「うちは津波でも大丈夫!良かった~」と安心して忘却してしまうのが一般的だと思うんですよね。「まてよ、これは一例に過ぎないから・・・」なんて考えない。

仮にそういう知識があっても、検討する時間もない現場の一線では、記事にもありますように「実務上、ハザードマップの想定に依存せざるを得ない」と言うのが、常識的な反応だと思います。

でも判決は、それでは責任者として不十分と言っています。じゃあどうすりゃいいんだ? 判決は対応は示されません。あとはみんなで考えてね〜。

そういう意味で、この判決は防災対策に根底から見直し迫る ものであることは間違いありません。

じゃあ、どうすればいいんだ?

分かんない・・・これは条件がいろいろありすぎて、一つの答えがばちっと出ないという意味で、「分からない」問題なのです。

だから究極的には、住民の安全を守る行政や児童を預かる教育機関が責任を負える問題じゃないと思うんですよね。もちろん、それらの機関は何らかの想定を行い、対策をするのが当然なんだけど、その想定が本当に妥当なのかは、識者を含めだれも「分からない」。

同様の状況は株式投資にも似てます。将来、どこの会社の株を買えば儲かるのかは、(インサイダー取引がないとすれば)識者を含めだれも「分からない」。いろんな情報機関が情報を提供しますが、それが正しいのかは分からない。こんな「分からない」投資問題に対して僕は、最終的には様々な情報を元に、会社の株が儲かりそう!と自分が判断し納得した上で投資しないと、損をしたときにおさまりが付きません。自分が納得したうえであれば、損をしてもあきらめもつきます。これって「分からない」災害でも同じことが言えるんじゃないでしょうか。

そういう意味では、まず「ハザードマップ」なんて出さないほうがいいと思うんです。「検討の参考にしてほしい」 と考えてつけた一つの計算結果が、参考でなく、ある意味決定版として独り歩きしてしまうのが実態なんで。

でも情報がなければ、判断も納得もできませんね。そこで「津波でどこが浸水するか」は「津波の高さと地形」に依存するから、「ハザードマップ」の代わりに、「標高地形図」と過去の実際の津波または高潮の浸水実績図(事例は多いほうがいいけど)をセットで配布し、あとはそれぞれ自分の頭で考えるしかないんじゃないでしょうか。 もちろん学校や講座で見方や考え方を伝える必要はありますけど。

まあ投資の場合は「自分は投資しない」という選択肢もあるんですけど、災害の場合は「自分は災害を受けない」という選択肢は選べませんので、そこが辛いとこです。

それから、海岸部の都市の歴史を調べてきて、有効な情報なんじゃないかだと思ったものがもう一つ。

それは「ある時代にはどこに海岸線があったのか?」を知っておくこと。現実には、そういう情報をまとめたような地図は発行されていないのですが。

ただ「ある条件の下で計算した津波の浸水予測」より、雄弁に何かを語ると思うのです。

日本の場合、縄文時代に「縄文海進」と呼ばれ海水位は今より5mくらい高く、そこから徐々に海水位は下がり現代に至っています。

陸地化した時代が新しければ、新しいほど、そこは軟弱地盤で標高も低いのです。だから地震や津波、高潮に本質的に弱い場所。いくら堅牢な堤防があっても、それが津波の莫大なエネルギーで破られたら・・・

そこに住む以上、災害に対する覚悟や備えは必要です。まあ海岸線から遠いと、今度は土砂災害の危険性が増すけど。