最近、NHKのニュースで気になった話題。
クリーンエネルギーとして自動車などへの活用が期待される水素を、二酸化炭素を出さない風力発電の電気を使って水から取り出す究極のエネルギーづくりの実験が神奈川県で始まりました。
この実験は、神奈川県やトヨタ自動車などが実施し、横浜市にある風力発電所に整備された水素の製造施設が12日初めて公開されました。
施設では風力発電の電気を使って水を分解して水素を作り出すことから、製造中には二酸化炭素が排出されません。施設で作られた水素は神奈川県内の工場などに運ばれ、フォークリフト12台分の燃料として使われます。フォークリフトは、燃料の水素と空気中の酸素を反応させて電気を作って走るため、排出されるのは水だけです。
実験だし目くじら立てるところじゃないのかもしれないけど、これってエネルギー効率考えると、「終わってる」と思いますな。
- 風力発電を使って電気を造る
- 造った電気で水を電気分解して、水素を生み出す。
- 生み出した水素を蓄え、工場に運ぶ。
- フォークリフトに燃料として入れる。
- フォークリフト内で水素を燃焼し、電気を起こす。
- 電気でフォークリフトを動かす。
風力を電気エネルギーに変換し、それをストレートに使えばいいじゃん。
- 風力発電を使って電気を造る
- 造った電気を工場に送電し、フォークリフトに充電する。
- フォークリフトを電池で動かす。
無駄にエネルギー変換する必要はないす。
変換したエネルギーを水素に置き換え、水素を運搬し、フォークリフトに水素を燃焼させ電気にする設備を追加し・・・それぞれの変換効率が0.8だったとしても、回数を重ねると変換効率が0.8×0.8×0.8=0.5以下に落ちるんじゃ?その上に水素を保管する設備や給油装置がいる・・・。
そんなこと、トヨタの技術者だって百も承知のはず。先のニュースでは以下のように続きます。
自動車メーカーは、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する燃料電池を搭載した自動車の開発を進めているほか、ガス会社などはエネファームと呼ばれる家庭用の発電システムの普及に取り組んでいます。ただ水素エネルギーは、製造や貯蔵などのコストが高いため、普及は思うように進んでいません。このため家庭や工場などでの発電や自動車の燃料などとして使いみちが増えればコストが安くなっていくと見られています。
このため政府は、水素エネルギーを本格的に活用する「水素社会」に向けて、具体的な計画を進めています。福島県内には太陽光などの再生可能エネルギーから水素を製造する世界最大規模の工場を整備し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで活用することを目指しています。
トヨタは水素自動車につなげたい。政府は水素社会につなげたい。
水素社会は大規模なインフラ整備が必要だから、設備投資がデカイほうがメーカーとしても、製造業を守りたい日本国としてもよろしいことはわかる。技術者としても楽しい(マッドサイエンティスト的)。
将来、安価な電気自動車が中国から輸入され「自宅で充電できます」、一方、お高い国産の水素自動車「水素ステーションで燃料補給ください」 どっちが普及すると思う?
あ、これはかの有名な「ビデオ戦争」と同じ構図じゃないですか。
さよならベータ!日本の黒物家電を変えたVHSとの「ビデオ戦争」の顛末
『VHS』と『ベータ』。この両者を比較すると『ベータ』の方が製品として優れた性能を発揮していた。でも、“専門的技術”の売り込みを意識するあまり、一般層への浸透の機会を見失ってしまい、シェアを伸ばせなかった。
生産者目線だけでなく、消費者の立場にも立って、水素社会にするか、電気社会でよいのか、考えてほしいと思います。当時はライバルも国内メーカーでしたけど、今はそうじゃないんだし。
さらにこれからの時代、良い技術とは「変換効率が良い技術(無駄を省くこと)」。それってトヨタさんの十八番だと思うんだけどな。